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もしかしたら

小学2年生の僕は担任の結城先生を好きになってしまった。


結城先生は30代前半とは思えないほど子供っぽい顔でとても素敵だ。


僕のことを下の名前で呼んでくるので、もしかしたら結城先生も僕が好きなのかもしれない。


クラスには僕の他に鈴木が5人いるがそれが理由で下の名前で呼んでいるということは絶対にないだろう。


大好きだがシャイなので『結城先生大好き』と直接言うことは出来ない。


だから結城先生から告白されるのを待つことにする。


でも結城先生に関するある噂が児童の間で流れている。


それは結城先生は人間ではなくて幽霊であるという噂だ。


いつも長いスカートをはいていて足が見えないためこのような噂が広まったのだ。


しかも足音を一切たてず滑るように歩くので幽霊にしか見えない。


僕の周りで結城先生の足を見た人は誰一人いないのだ。


それに『結城玲』という名前からして怪しい。


なぜ怪しいかというと『ゆうきれい』の『き』を抜くと『ゆうれい』になるからだ。


これは偶然だと信じたいが真実はどうなのだろうか。


もしも結城先生が幽霊だったら告白されても付き合えない。





ある日、頼まれると断れないタイプの僕は友達からあることを頼まれた。


それは結城先生の幽霊疑惑を解き明かすこと。


何をするか色々悩んだが、まずは足をこの目で確認することから始めようと思う。


そのためにはスカートめくりをするしかない。


クラスメートの女の子のスカートもめくれないような僕に結城先生のスカートがめくれるか不安だった。


でも正体を暴くためだと思ったら自然と手が動いて上手くめくることが出来た。


これが『この世で最もエロくないのスカートめくり』だろう。


「何してるのよ!」と結城先生に怒られたが僕は足があることを確認することが出来た。


嫌われたかもしれないが足が見られたのでよしとする。


でも足があって歩く幽霊もいるかもしれないので、まだ疑惑は晴れない。


もう結城先生に幽霊かどうかを直接聞くしかないと思って放課後に聞いてみた。


「先生は幽霊なの?」


するとニコリと笑ってゆっくりとこう答えた。


「私は幽霊よ」


それを聞いた瞬間、怖くなって逃げてきてしまった。


でもよく考えると冗談だということもあることに気が付いた。


その後も色々考えたが真実を知る方法は考え付かなかった。


結局、結城先生の疑惑を解き明かすことが出来ずに終わった。


幽霊疑惑を解き明かす作戦の前と後で変わったことといえば結城先生が僕のことを嫌いになったことだけだ。





10年後。


今は高校の現代文の授業中なのだが文章の中に『ゆうれい』という言葉が出てきた。


でも『幽霊』ではなくて、気品があって美しいという意味の『優麗』だ。


今までゆうれいといったら『幽霊』しか知らなかったので『優麗』とは初対面だった。


『優麗』という言葉を知ったことで僕はあることに気付いてしまった。


それは僕が小学2年生の頃に担任だった結城先生が言った『私は幽霊よ』という言葉の真相。


もしかしたら『私は幽霊よ』と言ったのではなくて『私は優麗よ』と言ったのかもしれないと思ったわけだ。


でも自分で自分のことを『上品で美しい』と言うだろうか。


普通は言わない。


自分で自分のことを『上品で美しい』と言う人は月の数ほどしかいないだろう。


でも、あの結城先生なら言っていてもおかしくないと思う。


そんなことを考えているとチャイムが鳴って現代文の授業が終わった。


長いスカートをはいていて足が見えない現代文の冷田先生は滑るように教室を去っていった。

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