水たまり
私の名前は水田まり。
水溜まりが出来やすい梅雨の時期に生まれた。
名前は気に入っていない。気に入る訳がない。
水田まりと名付けた父を一生恨むかもしれない。
『水田』という名字と『まり』という名前は絶対に一緒にしてはいけない。
混ぜたら危険である。
この名前のせいで雨の日が嫌いになった。
それは子供の頃、雨の日の帰り道にからかわれたからだ。
「水田まりちゃんはこの汚い水溜まりから生まれたんだよね」
そう友達に言われた。
私があんな泥のまじった水の中から生まれるわけがないのに。
私の性格は思ったことを何でも言うタイプである。
豪雨のように激しく罵声を浴びせることが多々ある。
子供の頃、からかった友達にも罵声を浴びせたのは言うまでもない。
ある日、ファミレスで友達と話をしていた。
そうしたら言わなくていい過去のことを掘り返した。
踏み込まれたくない領域に踏み込まれてしまった。
私はテーブルに置いてあった水を思い切り友達にかけた。
「水田まりに踏み込むとびしょびしょになるよ」
そう言って私はその場から立ち去った。
友達は動きが止まったまま呆然としていた。
私にはひとつ悩み事がある。
名前のことではない。
それは顔が怖いことである。
怒っていないのに「怒ってるでしょ」と聞かれたこともあった。
私もたまに笑うことがあるが笑っている顔も怖いらしい。
顔のせいで私はかなり損してきた。
もっと可愛い顔に生まれたかった。
だが、この顔が嫌いなわけではない。
もちろん好きなわけもない。
何でも言う性格と怒ってるように見えてしまう顔のせいで人はみんな近寄って来なかった。
ある日、姪と公園で遊んでいた。
すると姪の友達の子供が私のところに来た。
その子供は怒っているような顔の私をじっと見つめていた。
そして少し経ってこう私に言った。
「おばさんブランコ押して」
おばさんは余計だが、とても嬉しかった。
子供は私が放つ近づくなオーラをものともしなかった。
その後もなぜか私の周りには子供が集まった。
子供というものはよくわからない。
みんなは私を避ける。
でも、子供だけは私を避けたりしない。
まさに水溜まりである。




