お金を盗んだのは誰だ
「あれっ、千円札が一枚無くなってる」
高三の坂本は大きい声で言った。
卓球の大会終わりのことである。
自分の財布からも抜き取られているかもしれないとみんなが財布を確認し始めた。
「あっ、俺も取られてる」
高三の井原が財布の中を見て言った。
「僕も千円足りない」
高三の長野も取られたみたいだ。
「俺も盗まれてる」
高二の岡田も千円を取られたらしい。
「俺は盗まれてなかった。よかった」
高二の三宅はホッとしていた。
高三の森田は盗まれていたが黙っていた。
すると坂本が探偵を気取り始めた。
「犯人はだいたいわかった。犯人はこの中にいる」
坂本は言ってみたかったセリフが言えて満足そうだ。
「何でこの中にいるってわかるんだよ」
「荷物置き場に怪しまれることなく入ることが出来るのは同じ学校の人しかありえないからな」
周りのみんなはその言葉に納得した。
「さっきから黙っている森田が怪しいんじゃないか」
井原がそう言い始めた。
「僕も盗まれたよ」
森田が反論する。
「じゃあ何でさっき盗まれたって言わなかったんだよ」
「みんなが千円を盗まれている中、持ち金の二百円のうち百円を盗まれていたんだけど額が小さすぎて言いづらくてさ」
「疑ってゴメンね」
井原は森田に謝った。
「そういえば坂本先輩、犯人がだいたいわかったって言ってましたよね」
三宅が思い出してそう言った。
「俺に財布の中を見させて欲しい。そうすれば犯人が分かるからさ」
みんなは坂本に任せることにした。
まず森田の財布から見始めた。
「百円しか入ってないから違うね」
坂本の捜査は続く。
その後、井原、長野、三宅と捜査していったが犯人ではないと坂本は言う。
そして最後の一人になった。
岡田の財布を開き、中の札を一枚ずつ見て寺田は言った。
「岡田、お前が犯人だ」
辺りはシーンと静まり返った。
そして岡田は不思議そうにしている。
「何で俺なんですか」
「千円札の製造番号だよ」
「製造番号?」
「そう、俺が盗まれた千円札の製造番号が七のゾロ目なんだよ。ゾロ目は滅多にない、だからわかったという訳なんだ」
「ごめんなさい」
岡田はそう言うとお金をみんなに返した。
森田にも無事に百円が返された。




