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閑古鳥が鳴いている

私が経営するラーメン店はいつも閑古鳥が鳴いている。


なぜなのかは全くわからない。


ラーメンの味には自信がある。


それにお店の場所も悪くはない。


そして店員の態度もいい方だ。


なぜだろう。


メニューが醤油ラーメンしかないからだろうか。


たった一つしかメニューが無くてもおいしければ人気が出るはずだ。


なのに人気がないということは醤油ラーメンがマズいのか。


いや、そんなことはない。醤油ラーメンはとてもおいしいはずだ。


おいしいので醤油ラーメンは改善しようがない。


醤油以外の味を研究するところから始めよう。


でもどうやっていいかがわからない。


そうだ、人気があるラーメン店に潜入して味を盗むことにしよう。





僕は不人気ラーメン店から人気ラーメン店に送り込まれたスパイである。


スパイ歴は早5年。


任されるのは調理ではなく雑用ばかり。


僕はみんなに『皿洗いの神様』と呼ばれている。


短時間で確実に皿の汚れを落とす事が出来るからだ。


この技は誰にもマネ出来ない。


今日も雑用かと思っていると店主がこう言った。


「今日から調理をやってもらうぞ」


僕はようやくラーメンを作ることが出来る。


とても嬉しかった。


「君にはサンラータン麺の作り方を教える」


そう言うと店主はサンラータン麺を作りながら教えてくれた。


不人気ラーメン屋の店主には味を盗んでくるように言われていた。


でも、よりによって大人気にはなりにくそうなサンラータン麺とは予想外だった。


「出来たから食べてみろよ」


僕はサンラータン麺の麺をすすった。


すると5年かかってようやく調理を任されて浮かれている僕の不意をつく言葉を店主が言った。


「スパイだろう?」


その言葉を聞いて僕の頭は真っ白になった。


あんなに気を付けていたのに。


5年の努力が水の泡になってしまった。


僕は何を言うか悩んで店主にこう言った。


「スパイではないです」


すると店主は不思議そうな顔をしていた。


「日本語おかしくないか。『すっぱいではないです』ではなくて『すっぱくないです』だろう」


どうやらスパイかどうかを聞いているのではなくてすっぱいかどうかを聞いていたのだ。


僕はほっとしてまたサンラータン麺の麺をすすった。

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