代行サービス
求人広告を見ていたら、こんな求人があった。
『未経験者大歓迎。代行のお仕事』
代行というのは車の運転を代わりにすることだろう。
でも僕は免許を持ってないからダメだ。
そう思っていたがこんなことが書いてあった。
『免許・資格必要なし』
どうやら運転の代行ではないらしい。
僕にも出来る仕事みたいだ。
『月給30万円から40万円』
月に40万円とは十分な額だ。
これは応募するしかない。
でも何かの代行をするだけで40万円も貰えるなんて怪しすぎる。
何か裏がありそうだ。だけど興味はある。
僕は電話をして働くことになった。
「安倍代行の社長の安倍と申します。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
朝6時半、必死に眠気をこらえた僕。
「それでは仕事を始めます」
安倍さんは張り切っている。
僕は何の代行なのかが気になって聞いてみることにした。
「何の代行なんですか?」
「それは行ってからのお楽しみだよ」
ますますどんな仕事なのか気になってきた。
悪い仕事じゃなければいいのだが。
家事代行とかかなと思ったりしていると安倍さんが言った。
「最初はこのお宅ですよ」
立派な門構えの家が目の前にはあった。
“ピンポーン”
安倍さんがチャイムを押した。
するとみた感じ70代の男性が出てきた。
「代行に参りました」安倍さんが頭を下げた。
「いつもありがとうね」老人が頭を下げた。
「では日めくりカレンダーをめくります。松本さん出番ですよ」
僕は想像と全く違ったので固まってしまった。
「ほら早くめくってくださいよ」
“びりり”
代行とは日めくりカレンダー代行のことだったのだ。
「何で頼もうと思ったんですか?」僕は聞いた。
「わしが日めくりカレンダーをめくらなかった場合、紙が無駄になってしまうわけですよ。
日めくりカレンダーを作っている会社の人に申し訳ないのですよ。
そしてめくれなかったらどうしようと思うと眠れなくなってしまってね。
そういう時にこの日めくりカレンダー代行の広告をみてこれしかないと思ったんですよ。
それからもう代行なしではいられなくなってしまったわけです」
僕はこれからも人のためにカレンダーをめくり続ける。




