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ゴキブリのゴキ男

僕はゴキブリのゴキ男。年齢は0歳。



ずっと名前が無かったけど最近、自分でゴキ男と名付けた。



我ながら、いい名前だと思っている。



父は僕が生まれる少し前に、ごきぶりホイホイに捕まった。



母は僕を産んですぐにゴキブリ用の殺虫剤でやられた。



ゴキブリというのは楽ではない。



何もしないのに害虫呼ばわりされる。



人間たちは僕たちゴキブリの何が嫌いなのだろうか。



黒光る羽?長い触角?不潔だから?目障りだから?



まあ、どれだとしても僕たちを殺す理由にはならない。



今日も色々な罠をくぐり抜けてきて僕は生きている。



でも、とうとう僕にも死ぬときがきたのだ。



僕が死ぬのを覚悟した出来事は三日前のことである。



いつものように生活していたら、とても美味しそうな団子を見つけた。



その美味しそうな団子はたくさんあった。



だから、その情報を近所のゴキ次郎おじさんにも教えた。



教えられたゴキ次郎おじさんはとても喜んでくれた。



嬉しそうに団子を食べたゴキ次郎おじさんは美味しかったと言った。



しかし、家に帰ってしばらく経った時、ゴキ次郎おじさんは急に苦しみだした。



何事かと辺りは騒然となった。



結局、ゴキ次郎おじさんはその後死んでしまった。



その団子というのは、世にも恐ろしいホウ酸団子だったのだ。



僕はすぐには食べずにその団子を大事にとっていた。



団子を口にする前にゴキ次郎おじさんの事件が起こったので僕は無事だった。



結果、僕がゴキ次郎おじさんを殺した形になってしまった。



だから僕は死ぬしかないのだ。



僕には妻と小さい子供がいる。



でもきっと妻は僕の気持ちをわかってくれるだろう。



僕は死ぬ方法を考えた。



ホウ酸団子はすぐには効かないので選択肢にはないし、わざと人間たちの前に現れて殺虫剤で殺してもらうのがいいな。



そう僕は考えたのだ。



ゴキ次郎おじさんは天国で僕を恨んでいるだろうか。



絶対恨んでるに決まってる。



でも、ゴキ次郎おじさんは一切怒らないゴキブリだった。



いつも笑っている太陽みたいなゴキブリだった。



その笑っているゴキ次郎おじさんが頭に浮かんで涙が出てきた。



僕はその涙を拭きながらゆっくりと人間の前へと歩いていった。



「おじさん待っててね……」

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