せんせいとせいと
ぼくはやきゅう部の二ねんせい。
ひとりの女性に一目ぼれしてしまった。
同じクラスのせいとではない。
ありふれているが担任のせんせいに。
まだあって六日しか経ってない。
でもすきなものはすきなのだ。
あのばつぐんなスタイル。
さいこうとしか言いようがない。
せんせいとせいとは恋愛してもいい。
そう思う、だからぼくは決めている。
せんせいに告白することを。
今はセミが鳴くきせつだ。
二ねん一くみの担任であるじゅんこはいつもじぶんで弁当をつくってくる。
それをひる休みに同僚のあやかと話をしながらたべている。
「じゅんこってモテるでしょ」
「そんなことないよ。あやかの方がモテるわよ」
せんせいのほめあいが始まった。
「だってじゅんこ可愛いもん」
「いやいやあやかには負けるよ」
二人の話はとまらない。
すると、あやかが定番のしつもんをしてきた。
「じゅんこって彼氏いるの?」
「いるよ」
あやかはとてもおどろいた様子だった。
「このがっこうにいる人なの?」
あやかが聞いてきた。
「そうよ」
「えっ、うそ」
あやかの驚きがとまらない。
「だれだと思う?」
「けんとうもつかないよ」
すこし間をあけてじゅんこはこう言った。
「実はわたし、せいとと付き合ってるの」
「……」
あやかは驚きすぎてことばが出なかった。
しばらく沈黙が続いたがじゅんこは口をひらいた。
「彼は、やきゅう部でがんばってるのよ。だから好きになったの」
「そうか……」
このあと二人の会話がなくなったのは言うまでもない。
付き合ってから一年後の七月、板橋純子は結婚することになった。
だが同僚の橘綾香は素直に喜べなかった。
何故なら綾香もその男性のことが好きだったからだ。
綾香はその男性のことをずっと片想いしていたのだ。
純子からその男性と付き合っていると聞いた時、綾香は驚いた。
何であんな女とその男性が付き合っているんだろうと綾香は思ったりした。
ずっとその男性を奪ってやると綾香は思っていたが奪えなかった。
ちなみにその男性というのは同僚で野球部顧問の増田聖人である。
ぼくは告白してふられた。恋はおわった。