恋愛免許証
恋愛免許を持ってないと恋愛ができなくなってしまった。
なので僕は教習所に通っている。
「今日から路上教習です」
女性の教官が隣でニコリと笑う。
路上教習は仮免許練習中と書かれた真っ赤なベストを着なくてはならない。
ダサい……。
なぜこんな格好しなくてはならないのかと疑問を抱きつつもベストを着た。
そして教官と一緒に路上を歩き始めた。
教官とはいえ手を繋ぐのは緊張するものである。
僕は一言も喋らずに歩いていた。
すると教官に怒られた。
「黙々と歩く馬鹿がいますか?」
「すみません」
「何か話しかけてきてください」
「趣味の盆栽の話をしてもいいですか」
「興味ありません。もっと誰もが興味をもつ話題にしてください」
僕は緊張で頭が真っ白になってしまっていた。
ずっと黙っていると自動車の多い道路に差し掛かってきた。
喋りかけようとした時、僕はまた怒られてしまった。
「女性に車道側を歩かせてどうするんですか」
「すみません」
「車道側は男性が歩くものです」
その後も僕は何回も怒られたのだった。
なんだかんだあったが無事に免許を取ることが出来た。
AT限定もあるが僕はAT限定では無い。
ちなみにAT限定とはアラウンドサーティー限定のことである。
それは30歳前後の人としか恋愛できない免許なのだ。
友達の紹介で僕にもようやく彼女ができた。
その彼女は現役のバレーボール選手である。
バレーボール選手なので背がでかい。
僕は背が低いので二人並んでいるとバランスが悪い。
「ちょっといいですか」
警察官が僕に話しかけてきた。どうやら検問みたいだ。
「免許証見せてもらえますか」
そう言われたので僕と彼女は恋愛免許証を警察官に渡した。
「彼女さん身長は?」
「182cmです」
何で身長なんか聞いてくるのかと疑問に思ったが口に出さなかった。
すると耳を疑うような言葉が聞こえてきた。
「あなたを無免許恋愛で逮捕する」
その警察官の言葉に僕は反論した。
「何でですか?ここに免許証ありますけど」
すると警察官があきれた顔でこう言ってきた。
「180cm以上の人と付き合うには大型免許が必要なんですよ」
うっかりしていた。僕は捕まってしまった。