1/15
一、想起
よろしくお願いします。
ある、麗らかな春の日のこと。
綺麗なドレスに身を包んだ私は、自分の母親である、シルヴァナ=グンデーレと向かい合って、談笑をしていた。
「――ユリシア、10歳の誕生日、おめでとう。これは、母からのプレゼントです」
そう言ってお母様が差し出したのは、黒い首輪につながれた一人の少年。美しく整えられた、艶やかな黒髪の隙間から覗く鋭い藍色の瞳は、今は暗い諦めの色を宿している。
その少年を見た瞬間、私はこの世界がゲームの世界であったことを思い出した。
***
お読みいただきありがとうございました。