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「潤美、悩みでもあるの?最近なんだか目に見えて変だというか・・元から変な子だとは思っていたけれども・・」
「あはは・・そうかな??そうみえる~??」
元から変な子ってなんだよっと思いながら、孔雀の言葉に内心ドキッとしてしまった。
同時に、脳裏に就職の二文字が頭を過ぎる。
僕は、短期大学2年生の秋である今、就職活動に勤しんでいるものの100社中150社面接で落ちそうな勢いで落ちている。
それに、僕はこれといって才能も無い。
そしたら。
このまま内定が取れないのかもしれない。
そうだとしたら。
志望動機が死亡動機に変わるかもしれない。
・・とは死んでも言えない。
「・・就職活動が大変なのね」
うぅ、どうやら脳裏だけではなく、うっかり表にも出ていたようだ。
慌てて口を両手の平で塞いだ。
「あら?私はなんとも思わないわよ」
きっと、僕のこと哀れに思うだろうなと思っていたので、孔雀の言葉に少し安心する。
「──はぁ、四年制でも大変なのに、短大生は地獄絵図だよこりゃ」
──僕の家は代々続く、農家だった。
山の奥の方に、
それなりに広い敷地に、
古い木造建ての家と畑がある。
夏になると、太陽の光をたくさん浴びた、赤い宝石のようなトマトがたくさん実る。
ほんのちょっと虫食いがあるけど、それは美味しい証拠。
虫も鳥も、美味しいものは見分けられる。
みずみずしくて、酸い。
真っ赤に燃える宝石を、そのままかぶりつくのが好きだった。
でも科学は進化した。
夏で無くても一年中食べることができる野菜や果物を次々と発明していった。
さらに、レベルの高い農薬を発明したから、虫を寄せ付けない。
故に形も綺麗で、色も真っ赤なトマトが出来た。
大量に作ることができるから、低価格で販売している。
人々は、安くて綺麗な形の野菜を選ぶようになった。
ブランド物として地元のスーパーに並んでいた山宮トマトも、だんだん売れなくなっていった。
代々続いていた農家は、僕の親の代で幕を降ろすことになった。
──潤美には、どうか安定した会社に就職して欲しい。
両親の言葉が頭に過ぎった。
僕としても、今まで育ててくれたお母さんとお父さんを少しでも楽にさせてあげたい。
そのためにはまず、ちゃんとした会社に就職して安定した生活をおくりたい。
就職は、大学を出ると有利に動く。
かといって、僕に四年制大学に入れるような財力は無く、短大を選んだ。
きっと今の時代、僕と同じような考えの子が、たくさんいるんだろう。