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妻がきた!  作者: 蜜郎
1/1

ロロ村より、

「カミーラ、おはよう」

「おはよー」


太陽が昇るか昇らないか、そんな早い時刻から私たちの村、ロロ村の活動は始まる。


「もうすぐロロの実の収穫時期ねー」

「春ロロは人気だし、今年は量も多いから期待できるわねー」


他愛の無いおしゃべりをすることが、この村の女たちの、そして私の楽しみ。

でもその間も誰一人、仕事の手を止めるものはいない。みんな働き者だ。

一つ一つ確認し、傷んだ実を見つけたら摘み取っていく。


「今年は量だけじゃなくて、質も良さそう…ってあれ?そういえばサーニャは?まだ姿が見えないけど…」「なに言ってんのよ、カミーラ。あの子は新婚よ、遅れるに決まってるわでしょ」

「あー、そうだった」


先々日、親友のサーニャがトルテという村の若者と結婚したのだ。

村人総出で二人の門出を祝い、ちょっとしたお祭り騒ぎだったのを思い出した。


「あのとき飲んだロロ酒、おいしかったわねー」

「ほんとねー。というわけだからカミーラ、さっさとあんたも結婚しなさい」


え、なんでそうなるの。


「あんたが結婚したら、またロロ酒が飲めるもの」

「そんな理由で結婚したか無いわよ!…それにこんな嫁き遅れ、貰い手なんていないわ」


そうなのだ。私は今年21。18が嫁ぎのピークといわれているこの御時勢、すでに私は立派な嫁き遅れなのだ。


「大丈夫よー、同じ嫁き遅れ仲間だったサーニャも結婚できたのよ?」

「そうよ、カミーラも結婚できるわ」

「そんな簡単にできるわけ…「そうだよ」ん?」


アンおばさんの所のロンだ。

普段この時間の子供たちは薪拾いの仕事をしているはずだけど…。


「ロン、あなた仕事はどうしたのよ」

「カミーラみたいなおばさん、誰もお嫁になんてもらってくれないね」


こんなカンジにロンはいつも私に憎まれ口をたたく悪ガキだ。

でももう慣れているから腹も立たない。


「ロン!あんたっ!!」

「わあっ!」


でもアンおばさんは怒り、ロンは逃げ惑う。

おばさんの腕をすり抜けながらロンは私に、


「だからボクがもらってやるよ!」


それだけ言うと、さっさと走り去っていった。


「ロン!待ちな!」

「ハハハ、ほらカミーラ、結婚はそう遠くないよ」

「ハハハ…」


私はただ苦笑いするしかなかった。

みんなは笑いながら持ち場に戻っていった。私も仕事を続けるが、さっきより身に力が入らない。

みんな結婚を勧めるが、どうにも私は結婚したいとは思わなかった。

今のまま、父さんと母さんと暮らしていければいい。それしか考えていなかった。

プチリと熟しすぎたロロの実を摘んだ。

今の私はこのロロの実のようだ。熟しすぎて時がたつと、自らの重みで落っこちる。

ならそうなる前にさっさと身を引いて、ほかの果実の邪魔にならないほうがいい。


「(…これでも昔は結婚に憧れていたんだけど…)」


そんなことを考えていたら


「カミーラ!!」

「サーニャ。どうしたの?そんなに急いで。旦那さんとゆっくりしてくれば…」

「ドーヴァさんが…!ドーヴァおじさまが…!!」


「…父さん…?」


ぐちゃりとロロの実が落ちた。

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