第二話
どうやら鈴木は化学と数学が得意らしいことがわかった。だが、六時限目の国語では漢字がダメダメということを知った。
「はい、答案」
瑠美は採点し終わった答案を鈴木と交換しあった。
出された問題を解き、それを隣同士で交換し、採点するといった形式の小テストだ。
瑠美の得意分野でもちろん十問中満点だった。それに比べ鈴木はなんとか一問正解したというギリギリさんだった。
集められていく答案を眺めながら瑠美は思った。帰国子女でもないのに、どうして自分の名前をローマ字らしき文字で書いたのだろう。瑠美には解読できなかった。
計画どおり放課後までには全校内を鈴木に案内してやれた。バスを一路線乗って家に帰りつくと空の東の際にまだ白んだ月が上りはじめていた。
リビングに向かうと夕食の肉じゃがらしきおいしそうな匂いとともに母親がキッチンから姿を現した。
「あら、おかえり」
お玉片手に現われた母は娘がいうのもおかしいが、実年令二十歳ばかり若く見える。羨ましいものだ。
カバンをソファに置き、シャツのボタンとリボンをゆるめた。近くにあったリモコンでテレビの電源を入れる。主電源は切れてなかったらしく、美人ともいえない地方局のアナウンサーが原稿の読み間違いを訂正していた。
晴れるだろうな。
母親とケンカしていることも忘れ。頭の中は流星のことでいっぱいだった。
深夜二時から三時ごろがみどきだという。何個くらい見ることが出来るだろう。青白いだろうか、赤みがかったオレンジだろうか。それとも、それさえも判別できないほどの超光速で燃えつきてしまうのだろうか。ここまで、地球まで何千個、何百個届いてくるのだろう。そう考えるだけで、胸がドキドキわくわくしてくる。
テレビのニュースでも流星群の話題がでた。お天気コーナーだ。今夜は快晴で空気も澄んでいて流星群もきれいに見えることでしょう、と告げている。
やったーとガッツポーズをし、陽気な足取りで二階の自室に向かった。