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第六話

そこは、宝箱だった。



僕がその店に出逢ったのは、廻りあわせともいうべき偶然からだった。


まぁ、ざっくりいえば道に迷ってたまたま見付けただけなんけども。


外観は若干大きめの住宅街に隠れるように建てられた古びた洋風の建物で、店の内装は外観からの期待を外さない造りになっている。

アンティークの家具や食器、ガラス製品などが並び、壁にはエキゾチックなタピストリーが掛けられている。天井からはクリスタルだろうか、日本には不釣り合いなシャンデリアが吊り下げられている。なんとも豪奢な光景に思えるかもしれないが、実際に現場に立てばそのようなことは些かもなく、室内の緩やかな灯りは窓から差し込む太陽と相俟って、なんとも居心地のよい空間をつくり出している。

現代のコンクリートに溢れた生活とは懸け離れた空間に不思議と安心感を覚え、僕は一瞬でこの店に続けて通うことを決めた。


どうやら店内にあるものは全て売り物らしい。天井のシャンデリアから手書きの値札が見え、僕は思わず笑いを零す。

「何かお探しですか。」

意識を飛ばしていた僕は、突然の人の気配に仰け反った。

「…どうも。」

「いや、驚かしてしまったようですね。申し訳ない。久しぶりのお客さんだったものですから。」

そう言って軽く笑った彼は、店の雰囲気そのままの上品な紳士だった。きっと、彼が店主なのだろう。

「いいお店ですね。毎日お邪魔したいくらいです。」

「そう仰っていただけると、今日は開けていてよかった。」

”今日は”ということは、あまりやっていない店なのだろうか。

「定休日か何かだったんですか?」

「いえ、定休日というのはないんですが、この店は毎日開けているわけではないので…。」

そう言葉を濁した彼は、不思議な笑みを浮かべる。

「じゃあ、僕はラッキーですね。実は道に迷って偶然この店を見つけたんです。近道しようと思って直感で歩いたらここまで来ていました。」

「それはまた…。お疲れではないですか?」

彼曰く、この辺は同じような作りになっており慣れない人は迷いやすいらしい。

「…はい、いえ、少しだけ。」

素直に”疲れた”と言うのが憚られ微妙にごまかす。

「もしよろしければ、コーヒーでもいかがですか?」

思わぬ申し出に驚いて彼を見返す。

「いえ、お急ぎでなければ。この間、私の好きなコーヒーが届きましてね、一人で楽しむには勿体無いぐらい良い香りがするんですよ。ご一緒していただけますか?」

正直、歩き疲れて”少し”どころでなく”大分”疲れていた僕は、喜んで彼のありがたい申し出を受けた。

「急ぎの用事はありません。というか、この後の予定はないんです。どんなコーヒーなんですか?」

「それはよかった。では早速、準備をしましょう。こちらへどうぞ。」

そう言って彼は、店の奥へと歩いて行った。

小さい店だと思っていたが案外広く、またよく見れば女性が喜びそうな宝石やアクセサリーまでもが独特な規則性を持ってならべられており、店のあらゆるところから彼のセンスの良さを窺わせる。

「足元に気を付けてくださいね、階段がありますので…。ここから一階に繋がっているんですよ。」

そう言って彼は僕を階下へ促した。



久しぶりの更新。

新しい人の登場!

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