第五話
結局買えなかった。
自分の不甲斐無さに泣きたくなる。
一か月ならまだしも一年以上付き合っているというのに。
これは正直に謝って欲しいものを慶吾に聞くしかないだろう。当たって砕けろだ、なんて自虐的なことを考えながら家路を急ぐ。
帰りの電車で慶吾へ送っていたメールに、まだ返事はない。
あれは、いつの事だっただろうか。
慶吾が友達と飲みに行くんだと報告めいた話をしたことがあった。なんでわざわざ言うのだろうと訝しんだのを覚えている。
あぁ、そうだ。合コンに行くのだと言っていたんだっけ。
合コンに行くなんて、きっと私と別れたいんだろうと別れの覚悟をしたが慶吾は結局行かなかったな。何がしたかったのか未だ理解できない。
慶吾は時々、理解に苦しむ行動をすることがある。
きっと今日もそれなのだろう。
もやもやとしたものに無理やり理由をこじつけても、ちくりと感じたのは、きっと気のせいではない。
いつからこんなに不安を感じるようになってしまったのだろう。
出逢ってからなのか、同じ時間を過ごしていくうちになのか。
もともと一人でいることが多く、また一人で過ごすことに慣れていた私にとって誰かと同じ時間を過ごすのは異様でむず痒いものだった。
香菜の言うとおり押されていくうちに、自分だけじゃない時間に慣れていく私がいた。だけど同時に、一緒にいる人のいない時の寂しさを感じるようになっていった。
それは悲しいことではなく、寧ろ喜ぶべき感情かもしれない。
だからこそ不安でいっぱいの自分が抑えきれなくなってしまう時がある。ただ、そんな自分を慶吾に知られるのがこわくてこわくて全然可愛くない態度をとってしまったり。
思い出すほどに後悔ばかりで気持ちは余計に落ち込む。
本当は他の女の子の話なんか聞きたくない。
本当は合コンになんか行ってほしくない。
本当は毎日あいたい。
本当は…。
どんどん貪欲になっていく自分に恐怖すら感じる。
こんな醜い自分なんて知りたくなかった。
無欲の愛なんてあるのだろうか。もしあるのならば、それはなんて難しいことなんだろう。
こんな少しの隙間であっさりと落ちていく自分に落胆する。
しっかりしなくちゃいけない。
こんなどろどろとした感情を知られたくない。
溢れ出す欲心を力任せに抑え込む。
知られないように、感じられないように。
どうも暗い展開に…。
わー。