第二話
珍しい。
今日は、奴からメールも電話もない。
いつもなら朝の『おはようメール』に始まり、聞いてもいないのに『僕の今日の予定メール』『ランチの約束』『今日の講義の感想』『午後の予定の確認』等々。
ストーカーじゃないかって?
これだけ聞くと完璧なストーカーに思えなくもないが、これは私の彼氏の話だ。
私の彼氏こと戸塚慶吾は、マメな奴である。
付き合ってからずっとなので慣れてしまったが、友人からは随分と愛されていると言われる。ただ、偏っていると注釈がつくのだが…。
慶吾とは大学が違うため毎日顔をあわせるということはないが、その代りなのだろうかメールと電話が絶えない。
少なくとも生存確認にはなっていると前向きに考えることにしている。
ただ、携帯料金は大丈夫なのだろうかと毎月心配になるが…。
以前聞いてみると、『バイトで稼いでるから。』と微妙な答えをもらった。
それは答えになってないと思うのだが、なんだかそれ以上聞けなかった。
それ以来、連絡の多さとかについては触れられていない。
あれだけマメな慶吾がメールの一つも寄越さないなんて、なにかあったんじゃないかと心配になる。
普段ならありえない状態に、無性に胸がざわつく。
友人や親からはクールだの落ち着きすぎてるだの言われるが、私だって感情がないわけじゃない。
ただ、表面に出にくいというだけのこと。
今だって、心配でそわそわしているのに。
この講義が終わったら電話しよう。そう決めて、意識を大分進んでしまった教授の話へと戻す。
これは後で誰かにノートを借りなきゃいけないな、と真っ白な自分のノートを見て思わず溜息をついた。
彼の名前が判明。
しかし、彼女は不明なまま…。
追々出します。