第十二話
R15っぽいかもしれないです。
まんまではないですが、思考的な方向で。
忘れていた、いや、忘れようと閉じ込めていたものが粘着質な音を伴って溢れてきていた。
これを説明するには、僕の恥ずべき過去を話さなければならないだろう。
結論から言ってしまえば、あの頃の僕は愚かで周りを顧みることができていなかったのだ。
それは大学に通い始めて独り暮らしにも新しい環境にも慣れてきた頃だった。
僕は、ああ…俺は、遊び呆けていた。
あの頃の年代の少年達ならば誰しもが陥るんじゃないのかと思う。
苦しかった大学受験を終え、大学入試に成功し、そして新しい生活が始まる。それは恰も新たな自由を手に入れたかのように感じられる。
その時に俺は選ぶべき道を誤ってしまった。今となっては、それが彼女に繋がっているのだから誤りだとは言い切れないが俺はその道に進むべきでなかったと思う。
たとえ僅かであろうとも積み重ねられてきた時間は、今の僕を形成している材料となっている。
俺が俺である理由。
そして俺が僕である理由。
全ては数珠のように繋がり廻っている。
では、過去の愚かしい自分を正すことはできないのだろうか。
もし正すことができるのならば、僕は彼女と過ごす価値のあるモノになれるのだろう。
僕が勝手に信じているだけかもしれないが、もしできるのであればそうありたい。
今はまだ自分が自惚れているとしか言いようがない状態ではあるが、彼女にも好かれていると感じて過ごしている。
だが、これでは満足できない。
貪欲だろうがなんであろうが今の僕にとって彼女を手放すことなどできはしないのだ。
さっきの少女はきっかけに過ぎない。
僕が俺であった頃を甦らせる物体。
確かに覚えているわけじゃない。それは俺の行いのせいでもあるのだが、覚えていたくなかったからかもしれない。
俺は、多分あの少女とも関係があったのだと思う。
自分で言うのもなんだが、俺は外見だけでいえば一般に望まれそうなものは大概持っている。所謂、容姿には恵まれている。重ねて頭のほうも悪くない。
ただ、それが災いしてか来る者拒まず去る者追わずになっていた。
あの頃の俺を弁解するならば、青少年男子なら誰しもある生理的現象が一般的でなく、かつ要求に応えられる相手に困らなかったから。これが揃えば俺じゃなくても同じ状態になるはずだ。
サークルでの飲みなどでこれに拍車がかかったのは言うまでもないが、悪友とツルんで毎夜遊んでいたのもよくなかった。一番の原因は俺自身が求めていたからかもしれないが…。
荒んだ時間を過ごしていたとも言える俺の行いは男からも女からも眉を顰めるものであっただろう。表立って咎められなかったのは、幸運というべきか不幸というべきか俺には分からない。
そして、こんな生活を続けていれば必ず起こるであろう女性関係のトラブルは持ち前の頭と器用さで大概のものならば回避できていたため、キャンパスでド修羅場なんて事態は今も起こってはいない。
勿論、こんな俺であったことは彼女には言えるはずもなく、今は彼女の彼氏として僕として真面目に生きていきたいと思っている。
だから、こんなことで後ろ暗いアレを引き出されたくはないと自分勝手に頭を悩ませていたりする。
もう終わったこととして閉じ込めていたが、不可抗力といえども溢れ出してきてしまったからには、俺として、あの少女とはきちんと終わりにしなければならないだろう。
戸塚くんは、女性の敵!みたいになってしまっております。