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そんな情けない初陣から2年が経った。
もう学院に通うまであとひと月になっていた。
冒険は明日からしばらくはお休みだ。
あの時のダンジョンを私、ジン、サラの3人のパーティーが制覇したのはおよそ半年前。
未到達ダンジョンだった事もあり大騒ぎになった。
ま、お祭り騒ぎってやつだ。
王都のタウンハウスとフォーライト領の奥にあるダンジョンのある街を転移で通った。
ここにもジンとサラの借りている一軒家があり、そこを拠点にダンジョンに潜った。
潜らない日はひたすら地獄の特訓に耐え、年齢が上がるにつれ体力もついた。
その後、他の領地の未到達のダンジョンを更に2つ攻略した。
その結果ジンとサラがSSランク、私はなんとSランクに上がった。
貴重な素材はギルドに買い取ってもらい、宝箱の中身も必要ないものは売り、気付けば口座には驚くほどの金額が・・・・・・追放されても一生遊んで暮らせるな。
ランクがSに上がると、かなり高級な宿泊施設にも泊まれ、料金も割引される等待遇が良くなるらしい。
らしい、と言うのも私はその待遇を受けたことがないからだ。
『成人するまでは外泊は許しません!』これだけは家族の同意は得られず・・・・・・心配をかけている事を理解しているだけに我儘も言えなかった。
そんな理由でまあ、私たちはダンジョン専門で護衛などの依頼は一切受けない。
他にも特典があるらしいが必要な時がくれば使えばいい。
そんな毎日を送っていた今日は、王都を挟んでフォーライト領の反対にあるダンジョンのある街に来ていた。ちなみにここにもジンとサラの借りている一軒家がある。一体何軒借りているんだ?
ここはまさしくイメージしていた冒険者ギルドって感じで酒場も一体化していた。
他のダンジョンのある街もこんな感じだ。
今日潜っていたダンジョンで無謀な冒険者パーティーに遭遇し満身創痍で動けなくなっていたのを連れて帰ってきた。
でも地下78階までは潜るだけの実力はあっただけに、引き際を誤ったのだろう。
時間に余裕が出来たので騒がしいギルドの酒場で軽い食事をしていたら不快な言葉が聞こえてきた。
『おい、あそこにいるの死神の使者だぜ』
『違うだろ魔王の使者だろ』
『いや、悪魔の使者って聞いたぜ』
ああ、ここでもそう呼ばれるのか・・・・・・しかも間違っているし!
だからこんなチーム名嫌だったんだよ!
恥ずかしいだろ!
何自慢げな顔してるんだよ!
お前だよジン!
それに横にいる女は誰?
今までもランクにつられて近寄ってくる女もいたけれど、まったく相手にしていなかったのに最近のジンは色目を使ってくる女を無下にはしなくなった。
だいたい女の目当ては予想がつく。
まだ20歳という若さでSSランク。サラや私に取って代わってパーティーに入りたいか、ジンの稼ぐお金目当てかのどちらかだろう。
・・・・・・ジンって見た目は悪くないんだけど、男前か?と聞かれたら違うんだよね。
ただ、強者のオーラが出ているからか、男らしい体格をしているからか、雰囲気イケメンに見えないこともない。
だけどね~コレはダメだ。
今日もサラはさっさと帰っちゃったし・・・・・・『異界の使者』解散の危機か?
「ねえジン、大切な話しがあるからその人どこかにやってくれないかな?」
「ん?大切な話し?ああ、悪いな席を外してくれ」
キッと睨んできた女だったけれどジッと見つめただけで慌ててどっかに行った。
なんだよっ!こっちは睨んでないよ!失礼だな!
まあいいや。それよりもだ!
「ねえ?ジン?まさかだとは思うけれどサラにヤキモチを妬かせたくて色んな女を側に置いているんじゃないでしょうね?」
「っえ?ち、違う!」
「いや、そうだよね?」
「・・・・・・」
「それさ、悪手だよ?一番やっちゃいけない事だよ?」
「え?」
「あのさ、自分がやられて嫌なことは相手にもしちゃダメって教わらなかった?」
アンタ何歳だよ!
「人を試す様なことをして・・・・・・その為に他の女と仲良くしている所を見せつけるなんてね。最初はヤキモチを妬いたとしても、それが続くと不誠実な奴だと信用をなくし、好意も無くなる。そして嫌いになり、最終的にどうでもいい存在になる。ねえジン?・・・・・・パーティー解散したいの?サラめちゃくちゃモテるよ?捨てられるよ?はっきり言ってジンより素敵な人なんて腐るほどいるからね?」
「い、嫌だっ!それに誰にも手は出していない!お、俺は真っさらな身体だしサラ一筋だ!」
「そんなの当たり前じゃん。男は女に純潔を求めるけれど、それは女だって同じだよ?誰が他の女の手垢のついた男がいいと思うのよ。私なら浮気は絶対許さないし、キスの1つすら許さないわね。そんな男に執着するよりも、さっさと誠実で綺麗な身体の男を見つけるわ。
だって初めてのことは愛し合う人と1つずつクリアしたいでしょ?
あのね、自分のしたことは自分に返ってくるのよ?
手は出していないって?・・・・・・そうは見えないよね?相手に気を持たせるような行動ばかりしていたよね?それも減点だよ?その気がないなら冷たいようだけれど相手にしちゃダメなんだよ。サラもジンに見切りをつけて今頃いい男に慰められているかもね」
「う、嘘だろ?」
「さあ?最近サラ家に帰ってきている?」
サーとジンの顔が血の気が引くように真っ青を通り越して白くなった。
まあ、サラは我が家に来ているだけなんだけどね。
どうもエル姉様と気が合うみたいなんだよね。
ちなみにジンがサラにヤキモチを妬かせようとしているのはサラにはバレている。
実際サラは『馬鹿な子ほど可愛いって言うじゃない』って大人の発言をしていたけれど面白くはないはずだ。
「もう手遅れかもね。馬鹿なことしたよね~。強くて思いやりもあり、優しくて面倒見もいい。さらに料理も上手。しかも色気ムンムンの美女。なかなかいないよ?そっか~。ジンは自業自得で捨てられるのか~。寂しくなるね。でもいいじゃん!ジンには声をかけてくる女がいっぱいいるもんね!」
「や、やめろ、やめてくれ。あ、謝る。俺、サラに謝ってくる。そして気持ちをちゃんと伝える」
ガタンっと、椅子を倒した勢いのまま走り出したジン。
ほんといい歳して何をやってんだか。
まあ、ジンが素直に気持ちを伝えたら一件落着ね。
役目も終わったし、私もそろそろ帰ろうか。
優しい家族が待つ家に・・・
私とジンの会話をこっそり聞いて顔色を変えている男たちがいたことは知らない。
それが今日連れて帰ってきたパーティーだったことも・・・・・・




