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ゾンビをアンドロイドに置き換えたホラー

ミッドサマーやマウスウォッシングにNo, I'm not a Humanのような推理性を入れたもの

キャラも雰囲気も好きだけど、伸びる気がしなくてまたぼつ。


冒頭1話は下で、次話は信号主婦のバグを解明しながら、なぜ横断歩道を渡り続けるかを解く

1話で壊れた生徒と親子設定なので、本来わたり続けるだけの挙動から変わってしまっていて、

壊すかどうかを迷う主人公に天宮が壊す話。


アンドロイドは人間を殺せない設定なので、それをいくつかエピソードで示しつつ、

最後は本当に相手が友達かを問うために天宮が殺してくれというが殺せない主人公ということで、もやもやして終わる予定だった。


苦労供養~


------

「校門の前で轢かれてた子、あれ、人間かしら?」


 隣の席にカバンを置きながら、その女子生徒は俺に声をかけてきた。


 細く、小柄なシルエット。

 平坦な声のそいつは、薄さを隠すみたいに制服の上から白衣をまとっている。


天宮(あまみや)ののか』。表情から読める感情は、ごく僅かしかない。

 けれども、眼鏡の奥にある目からは好奇心が滲み出ていた。


 そう。

 彼女は嬉々として。うきうきして。いきいきしていた。


 眩しかった。波風ない日々に慣れた俺には。

 無論、天宮の瞳が、朝から礫死体を目にして輝いていたとしてもだ。


「残念だけど違う。アンドロイド同士の茶番さ。片方が壊れて、後から轢かれた」

「なあんだ。つまらないわね」


 俺の返答に、天宮は氷河みたいな表情を取り戻して机に突っ伏した。

 そのまま、指先で紙を滑らせてくる。


「それ、最近見つけた暇つぶし。東雲(しののめ)くん。放課後、付き合って」


 渡された紙切れには、たくさんの不審人物が記されている。


 電車で笑い合う、たくさんの大人たち。

 広告画面のアイスを舐め続ける男。

 信号が変わる度、渡り直す主婦。などなど。


 遭遇した日時、場所、顔の特徴。

 刑事がいたら実に喜びそうなリストだった。


 そして俺も、心が躍った。

 それは、警察よろしく、世の中を良くしたいとかじゃない。


 確かめたいのだ。

 こいつらが一体、何者なのかを。


「ひとりくらいは当たりだといいけど」

「どうかしらね。校外は探しにくいわ」


 ---

 -


 チャイムが鳴く。それは解放の合図だ。

 虜囚みたいに閉じ込められていた人間は、ようやく学校から脱出できる。


「はー、やっとか……」


 伸びをしつつ立ち上がる。

 隣の席へ視線を向けると、天宮は首を傾けのんびり船を漕いでいた。


 まったく、周囲を見渡せと言いたい。

 他の誰ひとりとして、天宮のように居眠りなどしていないだろう?


「天宮。起きろ、終わったぞ」

「ふぁ。いま確かに、『下ったら抉り出し』って」

「危機一発じゃねえか……」


 居眠りで『猿夢』を見るなよ。

 だいたい、天宮が死んだら、俺はどうすればいいと言うのか。


「ちょっといいかしら、天宮さん」


 途端に、天宮の顔から人間味が消える。

 この極端な塩対応は、俺と天宮をもっとも区別する一線だろう。


 彼女は探索者であって、俺のような観察者とは違う。

 だからこそ、自分に他者が近寄ってくるのを極端に嫌う。


 ゆえに、こんなふうにーー、なる。


「あのね、だから天宮さん。校内清掃を手伝ってほしいの」


 必死に話しかけるクラスメイトは、慈悲を乞う農民みたいだった。

 けれども天宮は、そんな姿をまるで透明だとで言わん態度で無視し続ける。


「埃はアレルギーの原因よ。虫も湧くわ。勉強しながら、手伝ってほしいのよ」

「……」

「たまには、お願い。先生には私から、ちゃんとやってくれたって伝えておくから。どうかしら、お願い!」


 圧倒的無視と沈黙の末、天宮は口を開いた。


「命令よ。いますぐ離れなさい」

「…………。」


 その言葉にクラスメイトは、表情を能面みたいに変える。まるで、農奴から徴兵されたみたいに。


 天宮はほんの少しだけ口端をあげていた。


「おい。天宮……」


 俺の仲裁の試みも虚しい。

 クラスメイトは硬く口を閉ざすと、回れ右して天宮から離れていった。



 俺だって、学校で天宮以外と会話なんてほとんどしないさ。

 友達と呼べる人間なんて、本当にいるのか怪しい。


「東雲くん。行きましょ」


 けれど、俺は天宮ほど露骨ではない。たまにはクラスの連中と話したりもする。

 相容れないのは仕方ない。けれど、拒絶だけで生きていくことなどできない。


 協力者。隣人。知己の存在。

 関係を表す言葉は多様だ。そして、必ずしも好意から成り立つわけじゃない。

 だからといって、悪様に振る舞うばかりが、術じゃないだろう。 



「あぁ。だけどな。もう少し、紳士淑女でも良いんじゃないか?」


「そうですか? 天宮だってーー。十分理性的に振る舞っていますよ。世の中には、いきなりナイフや棒切れを振り回すのもいるんですから」


「極端だな。周りを邪険にしすぎるなって話さ」

「天宮はまともに話せる人間を友人と呼びたい派なだけです」


 それならば、俺と天宮は友達と呼べるのだろうか。

 でも、決定的証拠はまだない。


 天宮が人間だという保証は、どこにもないのだから。


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