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実は超優秀な落ちこぼれ令嬢はスローライフを目指します

作者: 花園聖

皆さんこんにちは!

花倉ももです!

新作はじめました。相変わらず下手くそで誤字脱字も多いかもしれませんが、許してください。

「はぁー」

特大サイズのため息をついた私:花井絢音は今年で記念すべき34歳だけど出会いの一つなんか見つけられていない。

念願の会社に入れた時は家族と一緒になって喜んだけど、蓋を開けてみれば見事に綺麗なブラック企業だった。今日もレポート、資料、プレゼンテーションを作らないといけないのに他の仕事も回されてくる。

「あんのパワハラ上司め〜私はロボットじゃないんだから!社員も全然いるのに何が人手不足よ!」

もう嫌!!諦め!!!!!これで私が無能な役立たずだと思って解雇してくれないかなー

「そう言えば最近睡眠も仮眠も取れてないや。よし!今から寝よう」

宣言した通りに机の上に頭を乗せて目を瞑る。…駄目だ。机硬すぎ!こんなんじゃ寝れない!もういいや資料を枕にしよう。怒るなら怒ればいい

「あっ…」

体が動かない。最近休んでないのが理由かな?視界ぼやけてきたけどそれは眠いってこと?

駄目だー。何も考えられないー。

そこで私の意識は暗転した


あれ?何ここ。真っ白な空間に私がポツンと1人。

ここは、死者の世界ではないのかな?

『ああようやく目を覚ましたのかい』

とても綺麗で澄んだ声が頭の中で響く。

私は驚いて辺りを見渡すと、誰もいないはずのそこには綺麗な男性が立っていた。白銀の肩まで届く長い髪の毛に、琥珀色の目、他の顔のパーツも100点満点の美貌。見惚れる前に突然現れたその男性にびっくりして、フリーズしてしまったが

そのことに気付いたようで

『ああごめんごめん、びっくりしちゃった?』

何も言えず首を縦に振る

『あははそんなに驚いた?さて私はこの世界を守っている神様だ。君も人生がちょっと可哀想で選択肢を与えてあげようと思って』

「神様……?選択肢………?」

何とか声を出せたがそれはか細くひ弱な声だった。ってかなんかもっと偉大な感じだと思ってたからびっくり

『うんうん選択肢まず1つ目ー人間としてもっかいこの世界でやり直す。』

つまり生まれ変わるってこと?スローライフができるならいいけど…

『2つ目ー別の世界で転生する。どの世界に転生するかはランダムになるけど…』

こっちは異世界転生か…ランダムってことは決めさせてもらえないんだろうけどまあ楽しそうだ

『最後に3つ目ー天国に行く。食べたり飲んだりしなくてもいいからのんびり生活できるよー』

え?3つ目は最高じゃん。でも食べたり飲んだり出来ないのか…ちゃんと自給自足してみたいんだよねー

『さあどれかから選んで?』

ある意味ギャンブルだけどこれにしよ!うん!自分の直感を信じる!

「2つ目の選択肢でお願いします」

『本当にいいのかい?後戻りはできないよ?』

「は…はい!大丈夫です…多分」

『おっけーわかった。じゃあ異世界転生楽しんでねー』

急に当たりが光り始める。まぶしっ…



ようやく光がおさまってきた。あれ?ここはどこ?

襖、畳、正真正銘の和風の家。

自分の手や足が小さい事から無事に赤ちゃんへ転生できたことを知る。

周りには大人がいっぱい。何故かみんな青ざめていたり、忌み嫌うような目を私に向けている。

私の周りには龍、虎、鳥、亀がフヨフヨと浮いている。鳥と龍は分かるけど虎と亀はどうやって浮いてるんだ?

よくみたら、周りの人も近くに光を発しているホタルのようなものが浮いている。

動きにくいけど、頑張って隣を見たら、赤ちゃんの男の子。彼にも光が肩周りを飛んでいる。

「まあなんてこと!」

急に言葉が聞こえてきた。この世界でも言語は日本語なのね。ちょっと安心。それにしても女の人はどうして驚いてるんだろう。

「最上級精霊が1人ついてる子と、精霊がいない子が同時に生まれるなんて、前代未聞だわ!」

精霊?あのフヨフヨした龍達は精霊じゃないの?

「仕方ない。冷財院の家系の1人だ。名前をつけてやろう」

「そうね。その方が外からの聞こえがいいものね」

はあ?外からの外見で名前つけるの?

「お前の名前は夢にしよう。冷財院夢だ。こんな豪華な名前をもらったことに感謝するんだな。さてこの子の名前をつけてあげようじゃないか」

「あいあおうおあいあう(ありがとうございます)」

「黙れ。今考えてるんだ。邪魔するな」

え…感謝しろって言われたから感謝したのに何なのこいつ!

「そうだな、この子の名前は爽真にしよう!爽やかで真面目な子に育つようにな!」

「いい名前ね!きっとこの子も喜ぶわ!」

やっぱりこいつら私のことを冷遇している

夢って実際にある名前だけど絶対適当につけた!それに比べて隣にいる兄(多分)の名前は何なの!?きちんとした理由でつけてるし!

はあ深呼吸深呼吸。イライラした時の対処法なんてあの腹立つ部長と会社で学んできてる。


3年後...


「かーしゃま、とーしゃま」

「ほらいい子ね爽真」

「おい!お前は私達のためにお茶を入れてこい!無能でもそれぐらいは出来るだろう!」

「はいお父様」

3年後、私は3歳になった。

3才児を使用人同然に扱っているが、前世の常識で考えると三歳児に熱いお茶なんか入れられるか!と思うが、この世界はチート可能である。

「精霊がついてないだけでこんなに冷遇されるとはねえ」

三歳児とは思えないほど饒舌に喋る私は誰にも気にされていない。この世界の仕組みは大体理解した。

まず、人が生まれるとき、新しい精霊が生まれる。その精霊は一緒に生まれた人に絶対服従らしい。

そんな精霊にもランクがあり、下級、中級、上級、最上級の4つのランクで構成されている。兄はとても珍しい最上級の精霊だ。最上級の精霊は、私の家系、冷財院家によく生まれる。それでも冷財院家の中でも、0.00001%の確率でしか生まれないらしい。私は無能で精霊が一緒に生まれてこなかった落ちこぼれと思われている。

「美羽、明日香、お願い、お湯を沸かしてくれる?」

「はーい」

「またあいつら主様を冷遇してんのかよ」

そう言いながら出てきた、龍の姿をしている美羽と思わず愚痴を漏らしてしまっている鳥の姿の明日香。この2人は、聖獣というらしい。他にも2人いる。虎の姿をした瑠璃と亀の姿をした雪だ。

合計4人は最上級の精霊よりも高いランクらしい。この4人の存在は知られてないし、今回、私が初めて、この4人に出会ったらしい。

「主様はなんであいつらに従うんだよ。」

口は悪いが、これでも一応女の子の声だ。

「んー正直バックレてもいいんだけど、将来はこの家を出て、田舎でスローライフを目指すの。だから追い出される方が都合がいいわ。」

「ふーん」

「なるほどそんな考えが...」

「まあ最初は本当にびっくりしたけど。こういう世界だったと教えてほしかったのに〜」

「なにか言ったか?」

「ううん。ただの独り言。」

「そうですか」

「まあいいや!なんかよく分からないけどスローライフを目指します!えいえいおー」

「「おー」」

絶対に逃げてほのぼの過ごすんだから!

「だから私の計画のためにも大人しくしててね」

「うーでも主様が冷遇されてるのは耐えられない」

「はい我慢我慢」

「お茶をお持ちしました。お父様、お母様、爽真兄様。」

「はあ、やっとか。遅かったな」

「早くなさい!」

「ゆめー」

「はい申し訳ありません」

明日香に我慢してと言っときながら、自分にも言い聞かせる。腹立つな〜。抑えろ〜。

コポコポ...

お茶をいれるけど、体が小さいし、一応本家の血筋ということできれいな着物を着ているが、

本音を言うと邪魔。

わざわざやかんを2つ用意した。1つは大人用に少し熱めを、もう1つは、兄様用に少しぬるめを。注ぎ終わって3人の前に茶飲みを置く

どうだろう。あの2人がわざと温度調節間違えてないといいんだけど、

「ふむ。無能にしては、いい温度じゃないか。」

「あら、この高級な茶葉を引き立たせるいい温度ね。褒めてあげるわ」

「ありがとうございます」

「ゆめーおいしー。ありあとう」

「ありがとうございます」

「ああそうだ。洗濯物も済ましてきなさい。」

「はい。ではわたしは失礼します。」

「さっさと下がって頂戴。あなたの顔を見ると気分が悪くなるわ!」

「またあとでー」

すっ、ぱたん。ふすまを閉じてから一息をつく。相変わらずあの両親を前にすると息が詰まる。

少しゴメンだけど盗み聞きさせてもらう。

「ふう。相変わらずあいつは使用人の能力が完璧だな。」

そりゃどうも。会社の飲み会とかで、人に気配りしてたのは私だけだし。これでも私はちゃんと自活していたつもりだ。ただ家に帰るヒマがないほどブラック企業だっただけ。褒められても嬉しくないけど。

「ええ。いっそのことあの子を使用人として雇ったらどうかしら?」

「ああ。そして金を払ったあとはどこへなりとも旅をさせようか。」

お、いいね。追い出す話が出てきた!そのまま追い出そうよ!

「ゆめいっちゃうの?や!」

「わかってるよ。家族で離れ離れなんかしないからな。」

私に絶対向けることのない、優しい声色...まあどうでもいいけど。親の愛なんてもらったところでなににもならない。にしても兄様〜何言ってるの〜追い出してよ〜。

「にしても信じられないわ!精霊を持たない子と最上級の精霊が同時に生まれてくるなんて」

「ああこれは俺も予想外だった。まあ最上級精霊が生まれてきたおかげでこの冷財院家に精霊がまた集まりだしてきた。喜ばしいことだ!」

そういえば人が死んでも共に生まれてきた精霊はいなくならないんだっけ。ほとんどの精霊は精霊界という世界に行くらしいが、最上級や上級の精霊に付き従うようになる下級精霊もたくさんいるらしい。精霊は多いほうが権力が強いらしく、最上級の精霊がいる今の冷財院家は最強ってことだ。

まあ多分精霊が集まり始めているのは美羽たち4人のおかげなんだろうけど。あの4人は精霊よりも強いから、わざわざ精霊界から来る精霊もいるそうだけど。

よし十分聞いた。じゃあお洗濯をさっさと終わらせて部屋で脱出計画でも立てて起きますか


数十分後...

「ふう疲れた〜この体、無駄にちびで着物も素敵だけど、邪魔だし」

「あっおかえり〜」

「おかえりなさい!」

「だいじょぶだった?」

「主様、新しい精霊たちがまた来てる。どうする?」

「えーまたー?」

来るのは基本的に上級精霊。精霊を持たずに生まれてきた私に集まってきたら面倒くさいことこの上ない。

「また精霊さんたちに爽真兄様についていくようにお願いしといて」

「いつも気になってたんだけどなんで主様を冷遇すんのかな?あたしたちが付いてるのに。」

「どうせあの人らが弱くて俺達のことを見えないだけでしょ。」

明日香の疑問に瑠璃が答える。

「僕達のことが見えないなんてほんと馬鹿だよね」

雪もあの両親に対して冷たいな...

「けどあの子は優しいよね。何だっけ名前...爽真だっけ。」

「爽真兄様は優しいけど将来は両親と同じなんじゃない?きっと幼いから妹の私をかわいがっているだけで、育ったらあの両親の人形ってなるんだろうね。」

幼いから、両親の言うことを聞かない。きっと自我が芽生え始めたら...傀儡となって親の言いなりになるんだろう。

「まああと13年ぐらいしたら私のことを追い出してくれるんじゃない?」

「華乃宮家を追い出されたいなんて世界中探しても主くらいだよ」

「かもねー」

雪の質問に答えておく。仕方ないじゃん。あの会社から抜け出してみんな最初に思うのはスローライフのことでしょ

「とにかくあいつらも3歳児を外にホイホイ追い出すほど馬鹿じゃないでしょ。兄様もいるし...しばらくはあいつらに追い出されることがないと思うから待機かな...16歳ぐらいになったらもう追い出してくれると思うけどなー。」

「まあいいや!僕は主についていくね!」

「雪、ありがとうね!」

「わたしも!」

「あたしも!」

「俺も!」

「ありがとう美羽、明日香、瑠璃、雪!」

そこから13年間毎日この日を繰り返すだけだった。兄様は育ってもっと使用人らしい仕事をやらされる事以外は,,,


13年後...

「夢〜!やっと会えた〜最近忙しくてなかなかあえなくて寂しかったよ〜!!!!」

「お久しぶりです。爽真兄様...」

なんで!兄様はおとなになって、両親の言うことを聞いている。ただ一つ以外は...そのただ一つ両親の言うことを無視するものとは、このシスコン精神だ。正直すっごく迷惑すぎる!追い出してほしいのに!兄は16歳になってもうすでに冷財院家当主になっている。前当主はあの父だ。当主というだけでこの国全員が兄様の言葉に従うのにそこに最上級の精霊が加わってしまっては、鬼に金棒どころか鬼に最強の斧みたいなものだ。

当然性格もよし、お金もガッポガッポ、顔もイケメン、最上級の精霊、この家柄、権力...

女性がこんな優良物件を逃すわけ無いだろう。外に出れば野次馬が集まりまくり、兄様は女豹に囲まれる。そもそも冷財院家というだけで注目の的なのだ。私は学校に行けなかったから学力はほとんどゼロのはずだけど、私には前世の記憶がある。基本情報は同じでそこに精霊のこととかが加わるだけ。数学や国語、外国語は得意だけど精霊の力を借りる理科や全く知らない歴史はやばい。まあゆったり過ごすから関係ないけど。

とにかく話を戻すと唯一兄様に指図できるのは父だけで、兄様は自由に従うか否かを決められる。兄が父に逆らっている命令はただ一つ。私、夢に優しくしないほうがいい、という命令、提案である。にしてもシスコンはまあ優しくしてくれるから嬉しいけど私の計画は兄様のせいでがらがらに崩れ去ろうとしている。どうしたものか...仕方ない!脱出準備を終えたらこの家から家出しよう!うん!そうしよう!

家出するためにはこの兄とこの屋敷のセキュリティを突破しなきゃ行けないんだけど...冷財院家の人を簡単に外に出すわけには行けないっていうこともあるけど、一番の意味あいは、きっとお兄様が私に出ていってほしくないからなんだろうけどな〜。

話が脱線しちゃったけど、とにかくセキュリティをかいくぐらなければ脱出できないということだ。

さすがのお兄様でも私の部屋に監視カメラをつけるような変態のようなことはしていないようだが、私は知っている。窓の外、ドアの外、とにかくこの部屋から出ることができそうな場所には監視カメラが設置してあることを。

しかもたちの悪いことに、自分の上級精霊の力を借りて起動する監視カメラのせいでいつでも私の部屋の前を見ることが出来るらしい。正直怖い...ストーカーがいる...誰か助けて...なーんて言うわけがないじゃないですか!

こっちは聖獣!最上級の精霊以上だから多分なんとか出来るでしょ!!

「ちなみに無理だよ?」

「............................エッ?」

美羽が心を読んでくれたみたいだけど無理ってどういう事!!!!!?????

「私達でも最上級の精霊は無理。下級、中級、上級なら多分行けると思うけど。」

「なんでよりによって最上級なのよ〜!!!」

私の虚しい叫びは意味がない

でも!現状詰みなのに叫ばずにいられるか!!

「お兄様に出ていっていいか許可取れるかな」

「主、無理ってわかんない?あのシスコンが主を手放すわけ無いじゃん。」

いつの間にか明日香も参戦してるし。

「一回正面突破するか」

「まっ!主がトライするだけトライすればいいじゃん。それで気が済むなら」

「明日香?あなたはどっちの味方なの?お兄様を応援しているようにしか見えないけど。」

「モチロンアルジノミカタダヨ〜」

「棒読みだから。」

数時間まって深夜になった。

堂々と出ていく作戦だ。成功率は1%ってとこかな?まあ試すだけ試そう。

夜風にあたりに行くと言ってちょっと出たらすぐにダッシュ。って言う作戦だけどそう上手くいかないよなー

もう早速お兄様に遭遇しちゃったよ

てか早くない?部屋の扉から出て1分ぐらいしか歩いてないよ?玄関まであと5分くらいかかるよ?どれだけシスコンなんだ…

ちょっと申し訳ないけどキモい

「私はここで大丈夫だから!兄様も仕事残ってるでしょ?」

「いや、もう仕事は終わってるんだ。せっかくだし一緒にお散歩しよ!♡」

「わ、わかった」

いやだめでしょ!仕方ない。兄様には美羽のことは見えない。だからこっそり眠り薬を混ぜた霧を発生させてもらい、眠らせている間に逃げ出そう。チャンスは...

今!!!!!!!


念の為、美羽に屋敷全体に毒霧を発生させる。もちろん私には効かないように調整してくれている。

「ううん。ねむ…仕事のしすぎてか…zzz」

兄様が急にぶっ倒れて眠っちゃった

よし、門番の人も眠ってる。

外に出る。この世界で外に出るのは初めてだなー。

一応この世界で私をここまで育ててくれたことには感謝してる。だから侵入者がいないように結界を張ってあげる。でも、それだけだ。


数週間後…

「いやー極楽極楽」

「ええ。ここは本当に穏やかで気持ちいいです。」

美羽も同意してくれている。

ここはとある島。前世で言う太平洋に、ポツンと浮かぶ島。そんなにデカくはない。

実はこの島、元々海だけだったのを瑠璃が土で島を作り、明日香が私を乗せて島に上陸させてくれて、美羽が川を作り、雪が私がいつでも遊べるように氷(雪)ゾーンを作ってくれた。

お陰でものの3分であっという間に島ができた。

家は、みんなが協力して作ってくれた。私も何かやりたい、と言うと皆自分でやりたいそうだ。

完成した家は、冷財院家に引けを取らないゴージャスな作りと大きさだった。

食料は、聖獣達の加護によって食べなくても生きていけるようになったらしい。

もう私、人間卒業してない?まあスローライフをゲットできた今となってはもうどうでもいいけど。

「ようやく、スローライフゲットだー!」

「おめでとう、主」

「おめでとうございます。主様」

「おめでと、主人」

「ふふ、おめでとう、主人様」

「うん!ありがとう皆!」


その後の冷財院家…

「ちっ!まだ見つからないのか!」

爽真は苛立っていた。まあシスコンの彼は妹がいないだけで本当に耐えられないのだろう。

「爽真、いい加減あの無能のことはほっと来なさい。」

爽真と夢の父親、冷財院幸人(れいざいいんゆきと)はそう爽真に諭す。2人の母親、冷財院氷奈(れいざいいんひな)も幸人に同意する様に頷いている。

「しかしっ」

「せめて仕事を全て終わらせてから探しなさい。仕事が滞ると、困るのはこの国の人間だぞ?」

「そうよ、爽真、好きなことはやること全て終わらせてからにしましょうね。」

「ぐっ、はい」

そこから数十年たっても爽真はまだ夢を見つけられていなかった。

「爽真…もう諦めろ…きっと…あいつはもう…のタレ死んでるに…違いない」

「そんな!」

すでに氷奈は床に伏せており、幸人も天に召されようとしていた。

「爽真…お前は…私の誇り…」

「父上!!父上!!!」

「……」

爽真の頬には、一筋の涙が流れていた。それでも、爽真は何かを決心した様に立ち上がる。

「父上、母上、せめて、冷財院家当主としてやるべき事を果たします。」

そこからは、夢を探す時間もないほど忙しかった。

すでに後継ぎも成人している。でも、幸人と氷奈に誓った以上、まだ諦める事はできない。


そして、さらに十数年後…

爽真も天に召されてしまったが、誇らしい死に方だった。後継ぎも優秀だった。冷財院家はずっとそのままの地位を保っていたのだった。


一方その頃、夢にも寿命が訪れようとしていた。

夢は、この島を見つけた航海士との子供と、大好きな聖獣たちに囲まれて、幸せな最後を迎えていったのだった。


【THE END】


ここまで読んでくださってありがとうございます!

よかったら『落ちこぼれの建国計画』の方も見てください。

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