第118章: ユキオとカズの依頼
ユキオの部屋に、窓から差し込む陽光が柔らかく降り注いでいた。彼はいつものように、リビングのソファに座り、スマホをいじっていた。その時、突然ドアが開き、兄のカズが顔を出した。
「ユキオ、ちょっといいか?」とカズは言った。
ユキオは驚いて顔を上げた。カズが自分から話しかけてくるなんて珍しいことだった。いつもはユキオが何かを頼む側で、カズはそれに応じるか、あるいは無視するかのどちらかだった。
「なに?」とユキオは尋ねた。
カズは少しためらいながら、言葉を選びながら言った。「実は、ちょっと頼みたいことがあってさ。ユキオ、お前、絵を描くのが得意だろ?」
ユキオは驚いた。確かに、彼は絵を描くのが好きだったが、それはあくまで趣味の範囲で、特に得意というわけでもなかった。
「まあ、そこそこかな」とユキオは答えた。
カズは少しほっとした表情を見せた。「じゃあ、頼みがあるんだ。実は、僕の彼女が、僕たち二人の絵を描いてほしいって言うんだ。できれば、あの、少しロマンチックに」
ユキオはますます驚いた。カズに彼女ができたこと自体が驚きだったが、その上、彼女のために絵を描いてほしいと頼まれるなんて、想像もしていなかった。
「彼女って…カズ、お前、いつの間に彼女ができたんだ?」とユキオは尋ねた。
カズは少し照れくさそうに笑った。「まあ、最近なんだけど、彼女、ミサキっていうんだ。僕たち、すごく仲良くしてるんだ」
ユキオはその名前を聞いて、少し複雑な気持ちになった。ミサキという名前は、彼にとって特別な意味を持っていた。彼女はカズの幼馴染で、昔からカズと仲が良かった。ユキオはその関係を少し羨ましく思っていた。
「わかったよ。描いてみる」とユキオは答えた。
カズは嬉しそうに笑顔になった。「ありがとう、ユキオ!助かるよ。じゃあ、これが僕たちの写真だ。参考にしてくれ」
カズはスマホを取り出し、ユキオに写真を見せた。そこには、カズとミサキが並んで笑顔で写っている姿があった。ユキオはその写真を見て、少し胸が痛んだが、すぐに気持ちを切り替えた。
「じゃあ、頑張って描いてみるよ」とユキオは言った。
カズは満足げに頷き、部屋を出て行った。ユキオは一人になり、スケッチブックを取り出した。彼はカズとミサキの写真を見ながら、二人の姿を描き始めた。
描きながら、ユキオはふと思った。「もしかしたら、僕もいつか、こんな風に誰かと一緒に写真を撮ってもらえる日が来るのかな」と。
ユキオはその後、数日かけて絵を描き続けた。彼はカズとミサキの姿を、できる限りロマンチックに、そして二人の関係を大切に思いながら描いた。完成した絵を見て、ユキオは満足げに微笑んだ。
「これなら、カズもミサキも喜んでくれるだろう」とユキオは思った。
ユキオは完成した絵をカズに渡した。カズはその絵を見て、目を輝かせた。
「すごいじゃないか、ユキオ!ありがとう、本当に助かるよ」とカズは言った。
ユキオは少し照れくさそうに笑った。「どういたしまして」
カズはその絵をミサキに見せるために、すぐに部屋を出て行った。ユキオは一人になり、ふとため息をついた。彼は自分の描いた絵を見つめながら、少し寂しい気