第10章:「涅槃に達した男」
教室の窓から差し込む太陽の光が、宙を漂う埃を気だるげに照らしていた。昼休み真っ只中、教室は薄暗く、静寂と、数人の生徒が教科書のページを繰る音が響いていた。ユキオはノートに身を屈め、複雑な模様を熱心に描いていた。生まれつきの芸術家というわけではないが、絵を描くことは、彼の注意を10分以上惹きつける数少ない活動の一つだった。
ふと、彼はページから目を離し、思考をさまよわせる。「今日の給食は何だろう?」と考えた時、廊下に人影が動くのに気づいた。
そして彼が見たのは、ジョン・レノンという名の、どこか滑稽な美しさを持つ男だった。ユキオは心の中で、元生徒会長をそう呼んでいた。背が高く、まるで一度も櫛を通したことがないかのような長い髪と、丸い黄色い眼鏡をかけた彼は、70年代のアニメから飛び出してきたキャラクターのようだった。その隣には、いつものように美しい彼女がいて、彼とよく口論していた。二人はスローモーションのようにゆっくりと歩いていた。
ユキオは思わずその奇妙なカップルに見入ってしまった。彼らはまったくそぐわないように見えた。まるでパイナップルピザとオレンジジュースの組み合わせのように—何かが明らかに間違っていた。しかし、その時ジョン・レノンが顔を上げ、その異様に鋭い視線がユキオを捉えた。「しまった!」とユキオは思ったが、もう遅かった。
「おい、ユキオ、来いよ!」とレノンが叫んだ。その声は奇妙にも、ユキオに逆らえない力を帯びていた。
「また何か用か?」とユキオは内心でため息をつきながらノートを置いた。彼は渋々廊下へ足を運んだ。
近づくにつれ、ジョン・レノンは親しげな笑みを浮かべた。それがユキオをさらに不安にさせた。
「調子はどうだ、ユキオ?勉強は?気分は?」レノンは10人分はありそうな熱意を込めて尋ねてきた。
「また始まった」とユキオは心の中で唸った。「こうして馬鹿みたいに立ち尽くして、彼の質問に答えている。まるで髭面のヒッピーに尋問されているみたいじゃないか。一体何なんだ?彼はもう三年生なのに、生徒会を引退した今、自分の受験勉強をすればいいのに!無駄話で僕の貴重な時間を奪わないでくれ。今なら絵を描いているか、ただぼーっとしていられるのに。それも極めて重要な活動だって知っているのか?それなのに彼は僕に質問してきて、まるで僕が宇宙の秘密でも知っていると思っているみたいだ。そしてその彼女…彼女の視線はまるで僕の頭を引きちぎりそうだ。何をそんなに見ているんだ?僕は何も悪いことはしていない。ただこの馬鹿に歩いていくだけだ。なのに、まるで僕が彼の親友だとでも思っているかのようだ。」
しかし、ユキオはそれを口には出さず、そっけなく答えた。
「まあまあだよ。」
心の中の声は続いた。「『まあまあ』と答えたが、彼がこれで少しでも興味を失うとは思えない。これから彼は、自分の哲学的な戯言や、夢でミュータントズッキーニに襲われて人生の意味を悟ったとか言い出すに違いない。ああ神様、もう何度聞いたか分からない。毎回初めて聞いたような気持ちになる。本当にそうだ。そして、彼はこのくだらない話を僕にぶちまけるまで絶対に諦めない。それからまたモチベーションについてのくだらないことを言うだろう。そのせいで僕は糖尿病になりそうだ。いや、言わないだろう。彼は調和と平和の戦士だから、髭面の神々からそう命じられているんだ。そして僕は、このすべてを聞かなければならない。」
ユキオはうんざりしたため息をつきながら振り返り、教室に戻っていった。そこには未完成の絵と食べかけの昼食が残されていた。「おそらく、私はこのジョン・レノンを決して理解することはないだろう」とユキオは思った。「彼はまるでニルヴァーナに達した人間のようだが、そのくせトカゲのステッカーが神聖な意味を持つ並行現実に閉じ込められているかのようだ。」
ユキオは再びため息をつき、再びノートに目を向けた。頭の中のすべての考えから気を紛らわせようとした。いつものように、人生は彼に理解できない出来事を次々と見せつけ、彼はいつも通り困惑したままだった。