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異世界RPG X  作者: すてらりうむ
第一章 始まり
9/30

第8話 解き放て 必殺技!

ゴブリンの少女から村を救うように頼まれたレオ一行

ついに決戦の時だ。

 アデスには、自分の村の人たちと待ってもらうことにして、俺達はブッシュの中から、ゴブリンの群れをこっそり観察している。


「敵の数は20人か。」


 敵の人数を数えたカイトが呟く、こいつの言うことは信用できる。


「しかし、ゴブリンとはいえ、こんなに大人数は危険だな…。」

「人数で襲われたらひとたまりもないわ…。」


 オレとユリがそう感想を述べると、ユイトがパンッ!と手を叩く。


「良い作戦を思いついた。」


 そう言うと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。




「ゴブゴブ…ここノ村ハ中々イイ所ダナ」

「ココヲアジト二シテ、森ヲ制圧シヨウヤ」


 ゴブリン達が呑気に会話をしていると、急に悲鳴が聞こえる…!


「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 その声のする方へゴブリンたちが目を向けると、一人の男がゴブリンを殺害していた。青色のフードを被ってる一人の青年…、もうお気づきかもしれないが、


「お前たちの仲間の命は貰った。悔しかったらやり返してみろ。」


 カイトが無表情かつ棒読みで言い放った!


「あんの野郎!!演技力って物を知らねえのかよ!!幼稚園児のお芝居のほうがまだ魅力あるぞ!」

「まあ…ゴブリンを挑発するくらいなら大丈夫でしょ、それにこの役割を完璧にこなせるのはカイトだけだよ。」

 草むらで待機しているオレがキレ散らかしている中ユイトはしっかりと見極めている。

そう、今回の作戦はアサシンでであるカイトがゴブリン一匹を奇襲して、仲間ゴブリンの反感を買う。

次に、怒ったゴブリンはカイトを攻撃しようとする。そこでカイトは持ち前の足の速さで逃げながらこちらへ誘導してもらう、そしてオレ達がいる向かいの草にユリが待機している。ユリにはあらかじめ魔法を唱えておいてもらい、ゴブリンがこちらに来たらツタで巨大な(おり)を作ってもらい拘束、そしてオレとカイトでボコボコにするって作戦だ。ユイトはなんらかのサポートに徹してもらう。


「さっすがユイト、こんな卑怯な作戦を作れるなんて、捻くれ者だな!」

「こんな捻くれた作戦すら作れないもんね〜レオは、」


 煽ったつもりが煽り返され、こいつも檻の中に入れてやろうかな…と思い込んでいたその時!カイトがこちらに走ってくる!オレはユリを見ると、合図としてウィンクを送ってくれる。ユイトも万が一のために魔法を唱えている。準備が整った!


「今だ!」

「【アイビー】!」


 ユリは思いっきり声を上げると、地面からツタが生え、四角の檻のような形になり15匹ほどのゴブリンを閉じ込めるが、何匹か捕らえれなかったゴブリンが俺達に襲いかかってくる!


「レオ、作戦変更だ!檻の中のゴブリンは俺に任せて、レオは近距離が不利なユリを守って!カイトは周りのゴブリンを倒してくれ!」


 とっさにユイトが状況を判断して指示を出す。俺は考えるのが嫌いだし、今はあいつに従っとこう。

盾を構えて、ユリの前に立つ。もう片手に剣も構えているため、カウンターもできる体勢を取っておく。カイトは言わずもがな、落ち着いた判断でゴブリンを攻撃しては離れ、完璧にアサシンとしての動きをしている。すると、ユイトは檻に入ってるゴブリンに向かって魔法を解き放つ!


「ツタは草だし、よく燃えるよね!【ファイア】!」


 そう言うと、ゴブリンの入っている檻に向かって火の玉を投げる。そしてゴブリンだけじゃなく、ツタにも燃え移り、目の前が火事のように燃え上がる!


「多分、レオやカイトが倒すより、こっちのほうが早いよね。」

「なるほど。賢い作戦だな。」


 ユイトの炎を見てるうちに、敵のゴブリンを全て全滅させたカイトがこちらへ向かってくる。


「でも、なんかオレなにもしてねえよな…。」

「そんなことない。ユリを守っていただろう。」

「負傷者を増やさないのはいいことだよ。」

「うんっ!ありがとうレオくん!」


まあ…ユイトの言う通りだな、ユリは近距離だと不利だし、これでよかったんだ。


「さてと、全部のゴブリンを倒したことだし、アデスに報告行くか!」

「ちゃんと、あのおっさんの荷物も回収すること忘れないでね。」


 ようやく一息つき、俺達が荷物を探そうとすると、カイトが体勢を低くする。


「カイト…?」

「静かに。」


 そう素早く言い放つと、周りを警戒している。なにかあったのか?でもゴブリンは死体だが、ここに20匹いるし…、ここの森のモンスターは戦いを好まないはず。そう思っていると、カイトがボソリと吐く。


「うしろだ」


 オレはなにが後ろなのかわからなく、後方を振り向くと…一匹のでかい怪物が俺にトゲ棍棒を振りかざしていた!


「レオ!あぶない!」


 すると、ユイトが俺を引っ張り、そのまま地面に倒れる。オレがさっきまでいた場所は大きく地面がひび割れていて、あのまま立っていたら…オレの頭はトマトみたいに破裂していたことだろう。


「さ、サンキューなユイト…。」

「うん…それより」


 オレ達は目の前の怪物を見る。大人が3人分くらいの大きさのゴブリンだ。頭には冠のようなものを被っており、棍棒はトゲのついた物になっている。


「あれはキングゴブリンだな…。その名の通り、ゴブリンの王だ。群れのリーダー敵存在とも言える。」


 カイトの説明で理解した、恐らくこのゴブリンはゲームで例えるとボスと言える存在だ。ユリは杖を両手で握りしめて、ガタガタと震えている。そりゃあこんな迫力あるモンスターを見たら誰だって固まるだろう…。この場にいる、カイト以外の3人は表情を青ざめている。カイトはマフラーの位置を上げると両手の剣を再び構える。


「ただデカいだけでゴブリンはゴブリンだ。行くぞ。」

 

 そう言い、カイトはキングゴブリンに向かって駆け出す。キングゴブリンはトゲ棍棒を握りしめ、カイト目掛けて振り回す!カイトは避けながら、斬撃を飛ばして攻撃する!攻撃があたったキングゴブリンが怒り、カイトを叩き潰そうとする!カイトは背後に回ると、相手の背中を登り空中へジャンプすると、剣を口に咥えて右手をゴブリンに向ける。


「【フーラ】」


 カイトが呪文を唱えると、風でできた刃がキングゴブリンに向かって飛んでいき、頬を掠める。カイト…あんな戦い方できるのかよ、


「【フーラ】は風魔法の1つで、風の刃を作って攻撃する魔法よ。」


 ユリの説明を聞き、風属性だからか…と納得していると、空中でウギ機が取れず、棍棒に当たったカイトがこちらに吹っ飛ぶ!


「…っ、」


 かなり大きなダメージを喰らったのか、地面に倒れ込むカイト…。キングゴブリンがトドメを刺そうとするが、


 「【リーフ】!」


後ろから、大量の葉っぱが飛んできて、キングゴブリンにダメージを与える!ユリが杖をキングゴブリンに向けていた!


「か、カイトくん一人で戦っているわけじゃないわっ!」


 声が震えながらもユリは覚悟している、ユイトもカイトの回復に努めている。…みんなで力を合わせるしかねえな!


「ユイト指示を!」


 オレはユイトに作戦を求めると、アイツは手当しながらもニヤッと笑い。


「好きにやれ」


 とオレを見ていってくれた…。じゃあ、好きにさせてもらう!

オレはキングゴブリンに向かって剣を構え走り出す!相手は棍棒を振りかざしているが、素早く盾で受け止める。そのまま横に避け、手首を斬りつける!相手が近距離型だからか、遠くからユリが魔法でダメージを与える!怒ったキングゴブリンはオレに向かって突進してくるが、オレも剣を前に突きつけ突進する!俺の剣がキングゴブリンの腹を突き刺したが、まだ倒れる気配が無い…。しかし、俺を叩きつけようとするキングゴブリンが急に体勢を崩す!


「レオにばかり、気を取られてるね」


 ユイトが飛ばしたと思われる氷の氷柱(つらら)がゴブリンの足に刺さっていた。そのまま背後に回ったカイトがキングゴブリンにダイレクトアタック!!更に体勢を崩し、完全に動きが止まる!


「レオ。チャンスだ。」


 カイトがオレに言うが、アイツを一撃で葬れるわけがない…。せっかくのチャンスなのに!すると後ろから声が聞こえる。


「必殺技を使うんだ!」


 そこにはギルドマスターのサブローが腕組みをして立っていた。


「なんでマスターがここに?」

「話は後だ、今は目の前のモンスターを倒すんだな。」


 見ると、キングゴブリンは立ち上がろうとしていた。今立ち上がったら、有利状況が五分五分に戻ってしまう!ユリは杖を振り回し、魔法を唱える。


「【アイビー】!」


 地面から伸びたツタが、ゴブリンの手足を拘束させる!


「レオくん!!はやく…トドメを!」


 ユリのMPも限界にきているらしい…。すると、オレの中から急に力が湧き出してくる…。みんなの姿が…、急に出てきたボスにビビらずに立ち向かい、チームに勝機を見せたカイト…。怖がりながらも勇気を出して魔法を唱え、今もゴブリンの足止めをしてくれているユリ…。すぐに作戦を思いつき、高い適応力で仲間を支えたユイト…。オレがここで本気を出さなくて…なにになるんだ!


「…やってやるよ!」


 オレは剣をグッと引くと、高く飛び上がり、キングゴブリンの頭目掛けて剣を振りかぶり…力を溜める!オレの剣が光に満ち溢れ輝き出す!そのまま縦に斬りつけ、横に斬りつける!(エックス)の文字のように斬りつけた後、最後に相手の中心に剣を突きつける!!


「必殺!〚ブライトネスソード〛!」


 決まった。俺の突きが通ったキングゴブリンはそのまま爆発する!これがオレの必殺技…!煙の中からキングゴブリンが現れるが、そのままグッタリと倒れる。見事オレ達の勝利だ!


「よ…よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「やったな。」

「すごい…バトルだった。」

「やったーっ!私達の勝利ね!」


 オレはカイトにハイタッチしようと手を挙げると、グーにして、タッチしてくる。もちろん無表情だが、心なしか楽しそうに見えた。ユリはユイトの手を握りぴょんぴょんと飛び跳ねている。ユイトも満更ではなさそうだ。そして拍手しながらサブローがこちらへ歩いてくる。


「素晴らしいバトルだったぞ、レオ達」

「てか、なんでアンタがここにいるんだよ…。」


 オレは首をかしげると、サブローは目を閉じた。


「お前たちの活躍を見たかっただけさ」

「調子いいマスターだな。」


 でも、マスターの必殺技の指示がなかったら、また不利になってたのかも知れないしな…。てか、さっきの必殺技、使ったら手がビリビリして、不思議な感覚だったな。


「冒険者は強くなると必殺技を覚えるぞ、レオお前もこれがらもっと強くなれよ。グッドラック」


 そう言って、森を離れていく…ほんとに何しに来たんだ…?




「ほ、本当にありがとうございました!!」


 アデスに勝ったことを報告すると、村のみんなと共に感謝してくれた、確かに全員ゴブリンだが、さっき戦った奴らとは違い、愛嬌のある見た目をしていた。長老のようなゴブリンがオレのもとに来て


「なんとお礼を言ったら良いか…本当にありがとうございます…。」


 深々と頭を下げると、こちらに1つのチョーカーのような物を渡してくる。


「こちらはお礼でございます。」


 それをカイトに見せると、興味深そうに説明する。


「これは、使い魔を登録できるチョーカーだ、精霊や悪魔を使い魔として契約できる高級品だ。」

「そんなすげえもの…オレ達がいいのか?」

「なんのなんの…ワシ達が持っていても意味ないじゃろうし…勇者様たちが持っていってくだされ。」


 そういうことならありがたく貰っておこう。そしてユイトが奥から風呂敷を持って戻って来る。


「あのおっさんの荷物、無事回収したよ。」


 ゴブリンも解体して、沢山戦利品を手に入れて、オレ達は満足していた。


「じゃあ…オレらは帰るぜ!元気でな」


 そう言うと、ゴブリン達は手を振ってくれる。アデスはユリに近づくと、


「また遊びに来てね…、魔法使いのお姉ちゃん…!!」

「ええ、必ず行くわ。」


 アデスと指切りをして、オレ達は森を離れる。クエストは無事成功だ!



 街へ戻ると、酒場で待っていたおっさんに荷物を返してあげた。


「おお!!冒険者のあんちゃん達…本当に…本当にありがとう!!」


 涙ながらに頭を下げるおっさん。オレ達は笑顔で、また何かあったらいつでもどうぞと伝えた。とっくに外は日が暮れていた。


「はあ…結局。家を買う資金は得られずか…。」


 ユイトが呟くと、おっさんが顔を上げ、


「あんちゃん達、家がほしいのかい?」

「あ、ああ。今家の資金を貯めているところなんだ。」

「全く集まらないけどね。」

「そういうことなら!」


 オレとユイトが苦笑いしていると、おっさんは立ち上がり、腕をまくった。


「実は俺は、この街の大工の頭領だ!」


……………。


「「「…えええええええええええ!?」


 驚くべきことを聞いた、この男が大工さん?家をつくる人だよな?おっさんはニヤリと笑うと、オレに話しかけてくる。


「礼が決まったぜ、お前たちが自分たちで材料を集めてきてくれたら、希望に沿った家を、0Gで作ってやる!」

「ほ、ほんとか!」


 オレはぱぁっと顔が明るくなる。カイトは真顔、ユイトはユリと微笑みながら、喜びを噛み締めている。


「じゃあ、どんな家がいいんだ?」


 その日は飯を食べながら、家についてひたすら討論した…。

翌日移行、オレ達は大工に言われた通りの資材を集め始めた。たまにへボラを中心とした街の冒険者達も手伝ってくれた。岩を砕いたり、木を切ったり、モンスターを倒したりすること一週間…。



「ふう…ようやく完成だぜ!」


 大工のおっさんと、何人かの弟子さん達が家を完成させた。

 木造の広めの二階建て。リビングや会議室、個室を10つ、更には地下まで作ってくれた。インテリアは自分たちで好きにしろとのこと。


「すっげえ…!思った通りの家だ!!」

「悪くないな。」

「これで…やっとゆっくりできる!」

「みんなで暮らすのが楽しみだわっ」


 オレ達の反応を見た大工は満足気にドや顔を決めた。


「なにかあったら言いな。しかし、今度はしっかり金をもらうからな!」


 そう言って、オレと握手して去っていく。


「レオ!早く入ろうよ!」


 ユイトがはしゃいでいるのを見て、こちらも自然と笑顔になる。とにかく…これが、

オレ達のマイホームだ!!!

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