第4話 疾風の盗賊
異世界にきて1週間が経った…。クエストに行って、帰ったら飯食べて自己特訓の日々を続けている。
街の人とは言わないが、酒場に入り浸る冒険者達とはある程度顔見知りになり、
一緒に飯を食べる中にはなった。
ユイトは酒場にいる時は大体女冒険者に囲まれていて、
本人は大変とかしつこいって言ってるけど、どう考えても自慢にしか見えない。
そんな訳で異世界の生活はそんなに悪くないものだった。
しかし、俺には1つ悩みがあった。
「仲間が欲しい!」
テーブルを叩き、本音をぶちまける。
俺の台パンに一瞬ビクッとさせるユイトだったが、飲み物を1口飲んで口を開いた。
「確かに異世界やこういうRPGにおいて仲間は必要不可欠だよね。でも、急にどうしたの?」
キョトンとした間抜け面に俺は優しく説明してあげることにした。
「やっぱり俺ら2人となると色々不便だろ?これから強いモンスターとかいたら、絶対大人数のほうがいいし、何より仲間がいた方が楽しそうじゃないか。」
俺の説明に理解したように頷くユイト。
「確かに…2人でこのまま冒険者を続けるのは確かに不便だね…。それなら仲間を募集したほうがいいかも。」
見事に賛成してくれたので、今日は仲間を探そうと思う…。しかし、来たばっかりの俺らが仲間勧誘しても入ってくれるんだろうか、上級職なのは承知しているが、結局は初心者なのだから五分五分である。
「ん…、あっ、ヘボラ!」
「おっ…レオにユイトじゃねえか、朝から早いな」
俺がギルドで1番信用していると言っても過言ではない冒険者の姿があった。俺はさっそくヘボラに縋り付く。
この人ならきっと分かってくれるはず!あんなに優しくしてくれていたのは、
きっと仲間フラグなんだろう…それ以外ありえない!
「ヘボラ、俺たちの仲間にならないか?」
「断る」
即答された…、えっ…そんなバッサリと言う?
振られたショックでそのまま地面に倒れてしまう。
「ど、どうしてだよ!!」
疑問を叫ぶとヘボラは、背中を見せると、そのまま振り向き、前髪をフワッとあげて口にする。
「俺はソロ冒険者さ…仲間は作らない主義でな…。」
無駄なイケボでカッコつけるヘボラ、異世界に来て1週間…初めてこの人に殺意が湧いたかもしれない。
「はあ…、こんな調子じゃ仲間なんて集まらないよな」
「本当にそうかな…?」
ユイトがため息を吐くと、後ろからギルドマスターのサブローがオレの肩に手を置いてきた。
「マスター?」
「仲間がほしいのなら、あれを有効活用してみてはどうかな?」
そういって掲示板を指差す。冒険者クエストの掲示板の横に置いてある掲示板だ。
「仲間募集掲示板…?」
「YES、パーティメンバーを募集したいのなら、この掲示板は欠かせないぞ。
この紙を使って、募集してみてはどうかな。」
「ありがとうございます!」
オレに1枚の紙を渡してくる。それを受け取ると、さっそく募集用紙を書き始めた。勇者と賢者のパーティです。どんな方でも大歓迎!!
「よし、勇者と賢者のパーティなら、入りたい人も山程いるだろう!!」
「そんなに上手くいくのかな…」
ユイトはなにか言ってたがきっと幻聴だろう。オレは早速掲示板に張り出した。後は逸材が来るのを待つだけだ!
「ていうか、ユイトが女性冒険者に声かけたら一発じゃねえか?」
「アイツ目当てで入ってくる奴はお断りだ!」
ヘボラがそんな事をいうが、ユイト目当てで入ってきたら、他の仲間と連携とれるか分からないし、それこそメンヘラやヤンデレだったら酷いことになる。
決してオレがイラつくからではないぞ決して…。
次の日…。
「…1日経ったぞ、一人も来ないってどういうことだよ!」
今のところ誰一人として来ていない。おかしいな…、募集掲示板に目を通す人は多いのだが…。
「やっぱり、最初から上級職2人は違和感なんじゃないかな、また…活躍できなかったらどうしようみたいな。」
「くっ…そこは盲点だったか、」
ユイトのマジレスにより、俺達の仲間募集は失敗に終わった…かと思った。
「仲間を募集している勇者と賢者のパーティはここか?」
俺達の横から一人の男が現れる。若い青年だ、身長は171cmくらいかオレやユイトよりは低い、青色のフード付きマフラーを羽織り、軽めで動きやすい服装をしていた…盗賊だろうか、フードを被っているが髪はオレンジで、右目元にセンター分けをしている。青色の瞳はジト目であり、一言で表すと…クールな奴だった。
「お、おう!募集しているぞ!」
「もしかして…メンバー希望者かな?」
「ああ、話だけでも…と思ってな。」
青年を席に座らせ、飯を食べながら自己紹介だ、
「オレの名前はレオだ!このパーティのリーダーで職業は勇者だ。」
「ユイト、賢者をやっているよ、よろしくね」
「俺はカイト…。職業は盗賊で、年は18歳。風属性ですばやさには自身がある。」
「18ってことは、オレと同い年か。」
冒険者カードを拝見したが、この人の素早さ…高いな。レベル6で 素早さが33…。普通におかしい。
しかし、このカイトという青年…表情1つも変えないな、さっきからずっと真顔である。
「カイトはどうしてオレ等のパーティに来てくれたんだ?」
疑問に思い聞くと、これまた無表情で。
「昨日、この街に来たんだが…勇者のパーティと聞いて興味を持っただけだ。」
これまた淡々と喋るカイト…。会話が楽しくないのか?
「ねえ。レオこの人やりにくいよ…。」
ユイトがこっそりと耳打ちする、同感だがステータスを見る限りかなりのハイスペックなコイツを逃すわけにもいかない…。
「ひとまず、クエストに行って決めてもいいか?」
「了解。」
ひとまずオレの言葉でお茶を濁す。三人は掲示板に行くと、クエストの張り紙を見る。
「これにしよう!【マザーチキン討伐】!」
直感で選んだが、初心者向けのクエストだし大丈夫だろう。ユイトとカイトも異論は無いっぽいので、受付嬢のお姉さんにクエスト紙を渡して早速出発だ!
☆
「そういえば、マザーチキンってどんなモンスターなんだろうな」
「チキンってあるし、鳥なんじゃない?」
オレとユイトが相談していると、カイトが説明する。
「マザーチキンは、ユイトの言う通り鳥型のモンスターだ。空中から遠距離で火を吐いて攻撃してくる。遠距離攻撃だとそう苦戦はしないだろう。」
カイトが完璧に説明してくれる。コイツもレベル6だよな?詳しすぎだろ…。
「カイトって成績とか上のほう?」
「ああ、常に学年トップを維持していたな…通知簿もオールSだ。」
ユイトが質問するとッ答えてくれるカイト、天才じゃねえかコイツ!
一つ不満を言うならドヤ顔みたいな表情を一切せず、無表情で淡々と告げている。
「すげえやつだな!カイト!」
「冒険者たるもの、知識をつけておくのは至極当然のこと…。」
褒めても一切動じていない。…コイツは表情を変えたら死ぬ病にでもかかっているのか…?
そんなこんなで雑談していると、空からマザーチキンが現れる!細めの体で目を閉じている。かなり上空にいるモンスターだ。
「空の敵なら、ユイト任せていいか?」
「おっけー、ちょうど唐揚げが食べたかったんだよね…。【ファイア】!」
魔法で炎を生み出すと、モンスターへ向かって投げつける!しかし、全く効いていない!
「なっ…!」
「マザーチキンは炎属性で尚且つ、炎攻撃を無効化するぞ…。」
カイトに説明されて驚くユイト。
「まだまだッ!【アイシクル】!」
新しく覚えた氷魔法だ、3つほど、つららができると、マザーチキンに向かって発射するが、見事に全て避けられてしまう。
「なんだよ…ちょこちょことすばしっこい!」
「レオ、ここは俺に任せてくれ」
「いや…でもカイトは盗賊だろ?飛んでる相手は不利なんじゃ…」
そう言ったが、カイトはフードを外し、マフラーの位置を上げると…
「冒険者たるもの…どんな不利状況でも、勝たねばならない…。」
そういうと、体勢を低くして、そのままジャンプする!マザーチキンと同じ位置に届くと、素早くダガーを振り下ろす。マザーチキンにクリーンヒット!
「きゅぇぇぁぁぁぁぁ!!」
マザーチキンが悲鳴を上げるが、負けじと炎をぼぉぉぉぉっ!と吐いてくる。
カイトは走り回り、炎を避ける。速い…!!すると、マザーチキンは今度はこっちへ突進してくる。
オレは盾を構えるが、突進がヒットする目の前でマザーチキンが爆発した…!何事!?
すると、目の前で瀕死の状態で倒れそうになっている。その時、カイトが声をかけてくる。
「レオ、俺のトラップは効いた…。トドメを刺すんだ。」
先程の爆発は、カイトによるものだったらしい。しっかり盗賊としての責務を果たしている…!
「ああ!トドメだ!うぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁ!」
両手で剣を握り、力いっぱい縦に切るつける!マザーチキンは倒れた。
「よっしゃ!カイトナイスぅ!!」
そう言ってカイトと肩を組む。いつも通り無表情だが、どこか心なしか嬉しそうに見える。そしてモンスターを解体すると、カイトが訪ねてくる。
「それで、結果は…?俺を仲間に加えてもらえるだろうか?」
改めて聞いてくるが、答えは勿論。
「当たり前だ!!これからよろしくな、カイト!」
「うん、文句なしだね」
「ああ…よろしく頼む。」
そう言うと、オレとカイトはがっしりと握手する。心強い仲間が一人増えた。
この調子でまた、仲間を増やしていきたいと思ったのであった。