第2話 デビュー!!冒険者!!
柄悪い見た目の優しい男性に酒場ギルドの場所を教えてもらい、やっと酒場にたどり着く。
店の雰囲気は古びた木材でできた、かなり大きめの木造の家だった。
「怜王、この世界では名字という概念は無いと思うから、龍ヶ原と、星光という名字は封印しよう。」
「了解だ!」
そう言ってハイタッチをすると、2人はドアを開ける。中からウェイトレスの歓迎の声が聞こえる。
「いらっしゃいませ〜!お食事なら空いてるお席へどうぞ!」
元気なウェイトレスの声に、入った瞬間歓声が聞こえる。みんな様々な格好をしていた。第一印象はかなりイイとと思いたい。
「よぉ!ちゃんと来れたな!」
そう言って前に出てくる冒険者が一人。路地裏で俺達と会ったあの男だった。
「あ、あのときの…!冒険者だったんですね。」
「へへへ…驚いただろ?」
俺が話しかけると、ケラケラと笑いながら会釈してくれる。
「あの時はありがとうございました!えっと、冒険者さん?」
「礼なんていらねえよ、それに俺の名前はヘボラで通ってるんだ。それと、タメ口でいいぜ兄弟!」
そう言うと、肩組んでくる。なんかこういう感じの冒険者憧れるな…!
「ここにたどり着いたってことは、いよいよ冒険者になるってことか!
あのカウンターにいる受付嬢に話しかけてみな!そこから冒険者登録してくれるぜ。」
「了解だ!何から何までありがとうな!」
俺がお辞儀すると、礼はいらねえと笑いながらクエストに出かけていく。
「レオがあんなに丁寧なんて珍しいね」
「あういう先輩冒険者は何かと奢ったりするタイプだ…媚を売っといて損はないだろう。」
ユイトにゴミを見るような目で見られたが気にせず受付嬢の元へと向かう。
カウンターは奇跡的に空いていたので、そこへと行く。
「あら、はじめまして!ご要件はなんでしょうか?」
目の前の受付嬢を見て失神してしまいそうになる。
赤髪のボブカットで、キレイな青い瞳をしている歳は20代前半だろうか、
しかし見た目はほとんど女子高生のような美人さんだった。
「え、えっと…あ…。」
ついついこのような人を見ると言葉をつまらせてしまう、するとユイトが間に割って出てくる。
「俺達、冒険者になりに来たんですけど…登録させてもらうことは可能でしょうか?」
すらすらと対応してくれるユイト、そういえばコイツ学校通ってた頃は女子にモテモテだったし。
このような時慣れているのか、引きこもりが全員コミュ障って訳ではないしな…。
「冒険者登録ですね!」
「はい、2人分お願いできますか?」
俺が言うと、受付嬢のお姉さんはにっこりと笑い。
「それでは登録手数料として、お一人1000G頂きますが…」
「「…」」
………詰んだ。
「ユイト金持ってる?」
金が無い俺達は一旦受付嬢の元を離れて、空いてるテーブルで作戦会議を行っていた。
「持ってるわけないでしょ、こんな状況なんだから一文無しだよ。」
「…あの神様、こういうのは神様が少しくらい用意してくれるんじゃないんですか?」
俺はそう聞くが、なにも聞こえなかった。
「どうやらもう神様の言葉は聞けないみたいだね」
「そんなあああああああっ!!」
本格的に詰んでしまい、机にうつ伏せになる。
頼みの綱であるヘボラはクエストに行ってるし、どうすればいいんだよ…。
「今すぐ冒険者になるのは諦めて、地道に働いて金を貯めるしかないね。」
「くっそ…なにかいい案はないのか」
「よう、新米ボーイ」
すると後ろから声がかけられる。振り向くと一人の男性が立っていた。
ウェーブ髪で髭が生えておりサングラスをしている。年は40代か…?
かなりのベテランなおっさんだった、目に僅かな傷があり、逞しい体つきをしていた。
「誰…このおっさん」
「俺はサブロー、この酒場のギルドマスターだ。話は聞かせてもらったぞ。レオ、ユイト。」
俺達の名前を呼ぶと間に入り込む。ギルドマスターってこの酒場の最高権力者ってことか、
妙にダンディだなこの人。
ギルドマスターだろうが、ハムスターだろうが関係ない、今の俺は機嫌が悪いんだ。ほっといてくれ。
「冒険者手数料が無んだろ?それならこれを使いな。」
そういってサブローは3枚のお札を渡してくる。この世界の通過か?
「これは3000Gだ、もっていきな。」
急に渡されたお金に驚いてしまう。3000G …?登録手数料は2000G …。えっ少し多くない…?
「このお金は一体…?」
「お前たちの登録料だ、冒険者になりたいんだろう?ギルドはいつでも冒険者を待っているからな。
この金で冒険者になるといいぞ。」
な、なんて優しい人なんだ…!!
「「ありがとうございます!」」
「頑張れよ、じゃあな」
そう言って颯爽と去っていくマスター…。
この街の人たちは親切だ、これが始まりの街と言われる由来なのか。
俺達はギルドマスターに貰った金を受付嬢に渡すと、お姉さんは快く解説してくれる。
「それでは説明しますね、冒険者というのは、この世界に蔓延るモンスターを退治する人のことです。
基本はギルドの掲示板に貼ってあるクエストを受けます。
また、自らモンスターを退治しに行く人のことです。
モンスターや生き物を殺したり、食べたりするとEXPというものが手に入ります。」
「わかりやすく言うと、経験値のことだよ。」
ユイトがこっそりと教えてくれる。
「EXPが一定数貯まるとレベルというものが上がります。
レベルというのは、その冒険者の強さの目安です。
レベルが上がると強力な技や魔法、スキルを覚えるので、頑張ってレベルを上げてくださいね。」
ここまではゲームっぽいのでわかりやすい。ユイトも楽しそうに頷いていて何よりだ。
「それでは職業について説明しますね。冒険者には職業というものがあります。
剣術に特化して素早さと高い機動力が魅力の剣士。
高い攻撃力と様々な武器を扱う戦士。
魔法攻撃を得意として後方から魔法を打つ魔法使い。
補助魔法を得意として味方を回復させたり強化させる僧侶。
素手で戦う身軽な武闘家。
爆弾やスティックなどトリッキーな戦術が得意な道具使い。
罠を仕掛けたり相手を妨害するのが得意な盗賊。
銃を使って一瞬の隙を狙い撃つガンマン。
戦闘能力は低いけど仲間を有利にサポートできるハッカー。
ほかにも様々な職業があり、レベルが上がったり、熟練度が上がると上級職という上位互換職に就くことができますので、がんばってくださいね!」
長い説明が終わり、ようやく自由になる。職業か…俺は剣士や戦士がいいな、せっかくなら武器持って戦いたいしね。
ユイトはこういうのは、魔法系になりそうだ、するとお姉さんはカードを取り出し。
「こちらのカードは「冒険者カード」といいます。貴方方のステータスやイメージの現状を維持できる、冒険者に取って大切な物です。」
「名刺みたいな物だよ。」
わからないところをユイトが教えてくれるのがありがたい。
「まずはお二人は、こちらの書類に、身長、体重、年齢、特徴などの記入をお願いしますね。」
とにっこり笑って書類を2枚出して渡してくれる。差し出された書類に自分の情報を書き出していく。わかりにくい部分はユイトに教えてもらい、2分くらいでお互い描き終わると、書類をお姉さんに渡す。
「はい、ありがとうございます。それでは、こちらのカードに手をかざしてください。それであなた達の初期ステータスが分かりますので、自分にあった職業をお選びください」
そう言われ、お先にカードに手をかざす。どんなステータスになるのか期待を込めて、お姉さんの言葉を待つ。俺が終わるとユイトがかざし、これで全ての準備が終わっただろう。歓声した冒険者カードをお姉さんが見ると、
_____________________________________
Name レオ 職業 ??? レベル1 光属性
HP 90/90 MP50/50 攻撃 16 防御 10 魔力 11 魔法防御 13 素早さ 15 回避力 12 器用度 14 運 11
_____________________________________
_____________________________________
Name ユイト 職業 ??? レベル1 闇属性
HP 80/80 MP 100/100 攻撃 10 防御 8 魔力 13 魔法防御 8 素早さ 6 回避力 12 器用度 11 運 7
_____________________________________
「はっ!?はあああっ!?何ですか、この数値!?レオさん、レベル1なのに全てのステータスが10を越えている!?
ユイトさんもレオさんほどじゃないですけど…全て5以上…、貴方達…一体何者なんですかっ…?」
あまりの驚きに声を荒げるお姉さん、同時にギルド内の冒険者達もざわつく。
「なに…そんなにすごいの?」
「すごいなんてものじゃないぞ、」
俺が聞こうとしたら、サブローが現れる。
「基本、初心者の冒険者はステータスが1〜4で、特別に突出したものが5だったりするんだ。
つまり、お前たちは平均以上…いや、最高級の強さってことだ。」
なんかよくわからないけどすげえ!!周りの冒険者からも歓声が聞こえる。
「俺達ってすごい人材だったってことだなユイト!」
「多分、神様が召喚するときに補正かけてくれたんでしょ、転生系アニメでよくあることだよ。」
冷静に説明しているが、ユイトも頬を赤くしている、興奮している証拠だろう。
お姉さんが咳払いをすると、
「それでは改めて、このステータスだと最初から上級職、レオさんは最強の職業【勇者】になれますよ!」
「勇者というのは、全ての能力がバランスよく上がる、限界まで鍛えた冒険者のみがなることを許される職業だ。」
お姉さんとギルドマスターの説明を聞き、よくわからないが、最強という言葉に反応する。
「じゃあ、俺…勇者で!!」
キラキラとした顔で宣言すると、周りの冒険者から歓声が聞こえる、ノリの良い人達だ。
気分がいい中、ユイトがお姉さんに近づき。
「僧侶の上級職ってありますか?」
と質問する。お姉さんは頬を赤らめながらおずおずと
「け、賢者という職業はどうでしょうか?全ての攻撃、回復、サポート魔法を覚えることができて尚且つ、
ほぼ全ての武器を装備できる万能職で…きっとユイト様にもお似合いだと思います!!」
「へぇ〜、じゃあそれにさせてもらおうかな。」
なんだかお姉さんの態度が激変しているが…そしてユイトが賢者になると、またまた冒険者からの歓声が聞こえる。
今回は女性の声が多いような…と思ったら、ユイトは見た目はイケメンだからお姉さんや女性冒険者を虜にしているのか!イラついてきた…。
「それでは、冒険者ギルドへようこそ!レオ様、ユイト様。これからの活躍を期待していますね!」
そして拍手喝采が起こり、とても気分がよくなる。
「ユイト!さっそくクエストに行こうぜ!」
「もう…早いなレオは、でも気落ちはわかるよ」
こんな状況で燃えないほうがおかしいだろう…。俺達はさっそくクエストへ向かうことにした。
初クエスト…どんな冒険が待ち受けるのか、こうして俺達の冒険は幕を開けた。