イチジョウ〜1畳〜
2 ☓☓☓年。
イチジョウは監視カメラの映像を観た。
実験体『D』があぐらをかいて座っている。
実験体Dの『1畳生活』も一ヶ月。
Dは一ヶ月もこのたった1畳のトイレも風呂も娯楽も無い『畳1枚』の部屋から、工場で働く時以外は一歩も出ていない。
彼は狂いもせず、泣きも怒りもしなかった。
妹を人質に脅されているとしても凄い精神力だ。
あのミッションに相応しい感情のないマシーン。
合格だ。
◯月◯日
トラブルが起きた。
私の雇い主である『S』の作った超小型スパイマシーン『マウス』が工場で働くDを襲った。
「ぎぃやあああ!」
Dが感情的になるのを初めて見た。
何度も何度もマウスはDに噛みついた。
Dは病院に運ばれ、一命は取り留めたものの両耳を失った。
彼はPTSDになり、三日三晩泣き続けた。
△次◯日
「今日のご飯はなにかしら?」
Dは耳を失い、以前とは別人の様に朗らかで感情的になった。
彼のミッションの事を考えると先が不安だったがSは「まぁいいだろう」と前向きだった。
□月◯日
Dがミッションに向かう日がやってきた。
マシーンの操縦は叩き込まれているが、果たして向こうにたどり着けるだろうか?目的地にたどり着けずそのまま朽ち果てる可能性もある。
生きろ。D。
君は私の最高傑作だ。
その後のDの活躍は私はよく分からない。
Sが世間話ついでにしてくれた話によるとDはNに接触成功。
Nの家でミッションを遂行中。
重要人物である「Sちゃん」と「S男」と「Gアン」を懐柔したらしい。
「おい。君はなぜ押し入れで寝るんだい?」
「そう訓練されたのさ」
「あっ!ネズミ」
「ぎぃやぁぁぁ!」
1969年から始まったDのミッションは2024年現在も尚続いている。




