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千変万化!  作者: 守山じゅういち
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92 聖なる盾のイオリ

 その日の夜、子供達が寝静まった頃にシンクから相談したい事があると呼ばれた。

 何だろ? 新しい屋敷についてかな。それとも最近シンクの様子が落ち込んでいた事と関係する話かな。

 一階のソファがある部屋にはハルとペレッタがいた。

「あれ? シンクから相談したい事があるって聞いたんだが」

「はい、私達にも関係する事なので同席します。どうぞ、座って下さい」

 ハルに促されソファに座ると程なくしてシンクが人数分のお茶を用意して現れた。

「待たせちゃってゴメンね、イオリさん」

「いや、別に構わないけど……で、相談って何だよ」

「うん、実は……」



「ふ~ん……聖なる盾のパーティーを抜ける、ねぇ」

「抜けるって言うか、一線を退いて後方支援に回ろうかと思ってるんだ」

 シンクの話というのは冒険者を引退し聖なる盾を支援する裏方になるという話だった。ここ最近シンクは自分の限界を感じ、同じパーティーの二人の足を引っ張っているのではないかと悩んでいたようだ。パーティー内での実力で言えば確かにハルやペレッタに比べて一歩劣っているかも知れない。

 シンク自身も今の自分の力に限界を感じているし、冒険者ランクにも見合っていないと考えているようだ。将来的に自分が限界を超えて更に成長出来るとは思えず、それならいっそ冒険者を引退して別の形で二人の力になろうと言うわけだ。

 しかし三人しかいないパーティーなら、実力が不足している事よりも人手が足りない方が困ると思うんだがどうなんだろ。

「それでどうすんだ? 二人で冒険者パーティーを続けるのか? それとも誰か新しいメンバーを加えて再スタートするのか?」

 冒険者パーティーのメンバー入れ替えなんて珍しい話ではない。冒険者ギルドでもソロで活動するよりかは、なるべく多人数でパーティーを組んで活動する事を推奨しているしな。

 Dランクの聖なる盾ならギルド側も新たなメンバーを斡旋してでも活動継続を望むんじゃないかな。

「元々、聖なる盾はこのタイガース孤児院を守る為にハル姉さんと俺とペレッタで始めたパーティーなんだ。だから今までは長期間街の外に出るようなクエストはしなかったし、クエストを受ける頻度も抑えていたんだ。でも、今後は俺が孤児院の子供達を見守っていけるし、イオリさんの付けてくれた警備猫達もいるからそれほど心配は要らないと思うんだ」

「ふ~ん、保護者としてシンクが子供達の面倒を見るっていうなら確かに冒険者活動に本腰を入れても良いんじゃないか? ……結局、俺に相談したい事って何だよ」

 ハルやペレッタの顔を見る限り、シンクが冒険者を引退する事には反対していないようだが。

「相談っていうか……お願いなんだけど。イオリさん! 俺の代わりに聖なる盾に入ってくれないか。アケルの冒険者の中でもハル姉さんやペレッタを託せるのはイオリさんしかいないんだ!」

「どうかな、イオリさん。私もイオリさんの事を信用しているし、何よりハル姉の恩人でもあるイオリさんの力になりたいんだよ」

 お茶を一口飲んで、少し考える。

 なるほど、悪くない話だな。

 ペレッタの言う通り、ハルとペレッタと組めば今まで以上に冒険者活動も向上するだろう。

 信用と言えば、そろそろ俺が特殊なスキル持ちだと話してもいいかと思ってる。

 このまま冒険者を続けていれば何時かはバレる時が来るだろう。その時に備えて味方を増やしておくべきか。

「わかった。その申し出、ありがたく受けるよ。これからよろしくなハル、ペレッタ」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね。イオリさん」

「うん、一緒に頑張ろう!」

 さて、話は変わるが一つ提案をしてみよう。

「シンクが裏方に回るって事なら一つ頼みたい事があるんだが」

「何かな?」

「聖なる盾の支援する裏方をルウも一緒にやらせてみてくれないか」

「ルウと?」

 あの子が商業ギルドから資金援助を受けられなかったのは実績が足りなかったからだ。

 だったらルウを聖なる盾の専属商人として仕事を任せたらどうかと思うんだ。

「クエストで希少な素材を手に入れたらルウを通じて商業ギルドに売る、そして必要な物資はルウが商業ギルドで買いつける。そうすればルウの商業ギルドでのランクも上がるだろ。どうかな?」

「そう言えば、ルウちゃんが新しい商売がどうとか言ってましたねぇ。あの子の力になれるなら私は構わないと思いますが」

「シンク兄さんがルウのサポートもするんでしょ? だったら大丈夫じゃない!」

「そうだな。問題があるとすれば、今まで冒険者ギルドに売却していた素材が減るから多少評価に影響するかもしれないね」

 シンクの言う通り、その辺りが少し心配と言えば心配か。

「いいんじゃない? 元々商業ギルドに売ろうが冒険者ギルドに売ろうが自由だもん。別に拘りが無かったから冒険者ギルドに売ってただけだし」

「その辺の配分は任せる。当面はルウの都合に合わせてもらって、あとはシンクの好きにしてくれ」

 くいっとお茶を飲み干し、夜のお茶会は終了した。

 明日は冒険者ギルドに出向いて、色々手続きをしないとな。

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