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千変万化!  作者: 守山じゅういち
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77 ボロ屋敷活用法

 俺が闇ギルドと和解するのに二つ条件を出した。

 一つは、俺の周囲に監視や警備を付ける時は怪しまれないように動く事。人相の悪い連中がウロウロしていては目障りだからな。変装でも何でもして周囲から怪しまれないようにしてほしいもんだ。

 もう一つは、掴んでいる暗殺ギルドの情報を共有する事だ。詳しい人数や動きを知る事が出来れば、此方としても対処しやすい。

 闇ギルド側からは一つ目はともかく、二つ目の条件には少し渋い顔をされた。

 街中での警備は謝罪という意味もあって無償で行うのだから、それ以外は通常通り金を払えとの事だ。ケチ。

 まぁ、ここで揉めても仕方ない。

 多少オマケして安くなったが、そこそこ高かった。

「街に来た暗殺ギルドの人数は三人。そのうち一人は従魔士(テイマー)だ。ウチに魔物の調達依頼があった。亜竜とオークだ」

 あ~、先日のダンジョンで倒した亜竜かな。だとすると最後に逃げやがった奴が暗殺ギルドか。顔は覚えたぞ。

「その後、動きは?」

「メンバーの内、二人が街の外に出ていった。一人は拠点にしている宿屋に残ったままだ」

「ふ~む。残ったのは従魔士の男かな?」

「違うみたいだぞ。それと連中は色々な薬草を買っていった。使い方次第では危険な毒薬になる品ばかりだ」

 そうか、このタイミングで街を出ていったという事は試験を行うダンジョンに先回りして、また細工をするつもりかな。



 明け方近くに孤児院に帰ってきた。帰宅途中に建設地に寄ると倒した連中は撤収していて、孤児院を見張っていた奴らも何処かに消えていた。言った通り、目立たないようにしているようだ。

 勝手口から中に入り、足音を立てないように自室に戻ると、キャロルが俺のベッドの上で丸まっていた。

「やれやれ」

 キャロルを隣のベッドに移して自分のベッドで横になり、瞼を閉じるとすぐに眠気がやってきた。

 思ったより疲れが残っていたかな。



 突如、腹に打撃を食らって目が覚めた。

「おきろ~あそべ~」

 先に起きたキャロルが俺の腹の上に座ってやがる。

「……朝飯は」

「たべた!」

 すでに日が登り、皆起きているようだ。

「はぁ、起きるか」

 年のせいか、食欲がない。水だけ貰って庭に出た。

 遊具で遊ぶ子ども達をぼんやり眺めていると。

「あ、おっじさ~ん! 良いところに」

 肩に猫を乗せたルウが声を掛けてきた。

「何か用か?」

「実はさぁ。小銭が貯まってきたからそろそろ屋台でも始めようと思うんだけど、何か儲かりそうなアイデア無い?」

「屋台? 随分儲けてるんだな。予算はどのくらいよ」

「だいたい銀貨十枚分かな」

 それは相当貯めたな。とはいえ元手が銀貨十枚分となるとあまり高い物は無理だな。

「う~ん……料理の屋台は沢山あるし、小物の屋台も大して珍しい物は扱えない……ん?」

 ふと、ルウの肩に乗る猫と目が合った。

「猫カフェ、いや猫科カフェなんてどうだ?」

「ねこかかふぇ? 何それ」

「つまりだな、小さい子猫から成猫、さらにデカい虎や獅子と戯れながらお茶を飲むのさ」

「いやいやいや、死ぬって! 猫ならともかく、虎とか死ぬって!」

「いやいやいや、野生の虎なわけ無いだろ。召喚術で用意するんだよ、その猫みたいに」

 肩の猫が「ナ~」と欠伸する。

「え? あ、あ~……なる、ほど。でも、普通の店を開くほどの予算ないよ? それに召喚術士の当ては?」

「企画を商業ギルドに持っていって資金を借りたらどうだ? カフェと言ってもメニューは少なめで、猫と戯れる事をメインにすればいい。召喚獣は俺が揃えてやろう。虎と一緒に寝そべりながら、手の中で子猫を愛でる……ウケるかもよ?」

 とは言ったものの、娯楽としてどこまで受けるかはわからないから無理強いは出来ないな。

「ま、大金も絡むからゆっくり考えな」

「うん、そうする。もしもの時はお願いね」

 頭の中で算盤を弾いてアレコレ考えながら孤児院に戻っていった。

「さて、魔法書でも読むか」

 ダンジョン攻略後に手に入れた宝箱に入っていた空間魔法の魔法書。全ての空間魔法を網羅しているわけではないが、それでもかなり強力な魔法がある。

 いつだったか召喚術で不完全な転移門を呼び出した事があったな。あの時は数メートル転移するのが精一杯だったが、今なら長距離も移動可能な転移門を召喚出来そうだ。

 空間魔法での転移は術者だけが移動し、召喚術で転移門なら術者以外も移動出来る。

「ふ~む。何か儲け話に繋がりそうな気が……」

 長距離移動が一瞬なら車や飛行機よりも重宝されるか?

 でも空間転移のアイテムはすでにあるし、そこまで儲ける話しでもないか。

「……あ、そうだ。部屋から部屋、家から外の短距離用なら需要がありそうかな?」

 新しい屋敷に設置してみるか。いざという時の脱出用とか……ハッ!?

「転移門を幾つか用意して屋敷からの脱出ゲームってのも悪くない、かも?」

 新しい屋敷が完成すれば、このボロ屋敷も空き家になる。ちょっと改装してお化け屋敷兼迷路なんてのも……

「娯楽として受けるかもな」

 ついでに庭に遊園地の定番アトラクションを一つ二つ用意すればさらに大儲け出来そうな気がする。

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