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千変万化!  作者: 守山じゅういち
74/142

74 邪魔者扱い

 アケルの街に戻るとすぐさま治療院へ直行した。診断の結果、レスティとセーナはともに安静していれば問題ないとの事だった。

 その後、冒険者ギルドへ報告しに来た。

「まずは『青炎』の皆さん、お疲れ様でした。報告書と映像記録を提出して頂きましたので、これで試験官の役目は終了となります。報酬の大銀貨五枚をお受け取り下さい」

「Dランクの報酬としては少ないな。危険手当てみたいなものは無いのか?」

 ちょっと疑問に思って、言ってみた。今回のクエストは事前に想定していた以上の危険があったのに、その事は考慮されないのか。

「今回、想定外の妨害工作があったようですが、冒険者ギルドとしてはその事で報酬の上乗せなどは致しません。どのクエストでも同じですが、街を一歩出た以上どのような危険があろうともそれは冒険者自身が対処しなくてはなりません。『剣姫』の方達も『青炎』の方達もその事は承知の上でクエストを受注した筈です」

 ギルド職員は冷酷に言い放った。

 そりゃ自身の身の安全は自己責任だと言う事は承知しているが。 

「仕方ないさ、冒険者をやってれば今回みたいな儲けの無いクエストもある。命があっただけマシってもんだ」

「そうそう。セーナだって静養すれば復帰出来るんだから、十分幸運だと思うよ?」

 イサンやリンはすでに気持ちを切り替えているようだ。元々、試験官役の報酬が低い事も分かっていた事だし、受け取る金額は少ない代わりにギルドに協力的な冒険者という評価はそれなりに得るものがあるらしい。

 俺としてはダンジョンで手に入れた素材はそれなりにあるから文句はないが、次の学生達の試験官役での報酬は期待出来そうにないな。

「では、イオリさんは次の試験の打ち合わせがありますので会議室へどうぞ」

 イサン達と別れ、ギルドの会議室へと向かった。



 会議室へ入ると、すでにギルドマスターと数人の職員が席に着いていた。

 テーブルの上には幾つかの資料と地図が置かれていた。

「おう、戻ったか。疲れている所に悪いが、次の学生どもの試験について決定事項を伝えておきたい」

 空いている席に座ると、資料が渡された。

「試験開始は五日後、場所はアルロワ遺跡ダンジョンの一つ、十階層からなる地下ダンジョン。参加する学生は、三名。学園からの情報によると実戦経験は積んでいるようですが学園側が管理した授業の一環で行われたもので、実際の戦闘経験は不明です」

「授業って、どんな感じなんだ?」

「学園の敷地にある広場に用意された魔物を倒すというものだとか。それ以外ですと管理された森の中でゴブリンを相手に戦闘を行ったりするそうです」

 生徒を危険に晒さないようにしっかりと管理されてはいるようだ。怪我ならまだしも、死人を出すわけにはいかないって事なんだろうけど。

「そこで今回の試験内容は、学生の判断力を試すものにしたいと思います。表向き『五階層まで降りる』とし、五層に到達したあと問題なく入り口まで戻ってこれるかどうかを見てみましょう」

 つまり五層に降りる事に集中し過ぎて、帰りの余力を残していないようでは駄目だってことね。

「場合によっては外部からの干渉があるかもしれませんが、可能な限り学生の邪魔にならないように排除して下さい」

 俺が攻略したダンジョンでも妨害はあったからな。貴族側の妨害もあるだろうが、学園側も学生を合格させたいと考えて何らかの干渉をしてきてもおかしくない。

 学園側もそれなりに自信があって生徒を送り込んでいるんだろうが、貴族側の妨害も考えると試験中に何が起こるか分からないな。

「ちょっといいか? 学生達が途中でリタイアした時は試験はどうなる? リタイアした時点で試験は終了かな、それとも予定通り入り口へ戻るまでか?」

「当然、入り口に戻るまでです。リタイアした事は減点事項ですが、それだけで合否判定はされません。それと生徒達が自らリタイアを宣言するまでは、直接手を出さないで下さい」

 その後、細々とした確認をしてギルドを後にした。



 ギルドを出て大通りを歩いていると、後ろから声をかけられた。

「ちょっといいか?」

 いつぞやの闇ギルドの奴だな。今日は一人か。

 人目のつかない裏路地に入ると。

「依頼人から追加で依頼があった。アンタに脅しをかけて試験官役を辞退させろとな」

「ふ~ん、脅すか?」

「冗談はやめてくれ、無駄死になんてゴメンだ。それと依頼人は別だが内容は同じで、冒険者ギルドの試験官をどんな手を使っても辞退させろって話しが来てる」

 両方から嫌われてるね。ダンジョンで仕掛けてきた男がどっちの協力者だったのか知らないが、俺が試験官をやるのは余程都合が悪いらしい。

「なんでそこまでアンタを邪魔者扱いしているのか知らないが、命令が監視から襲撃に変わっちまった。ウチの幹部から力尽くでアンタを試験官役から降ろせって命令が出たんだ」

「ほぉ……やる気かよ」

「言っておくが俺だって反対はしたんだ! だが、上は聞いちゃくれねぇ……どうやら相当な額を貰ってるみたいでな。今夜、仕掛けるって話しだ」

 今夜か。孤児院で待ってたら迷惑がかかりそうだな。

「じゃあ今夜、俺は建設中の新しい屋敷を見に行く事にするから襲撃するならその時にしてくれないか?」

「……本気で言ってんのか? 命の保証は出来ねぇぞ」

「そりゃ此方の台詞だよ。一応、街中だから多少は手加減するが命の保証はしないからな?」

 脅す訳ではないが、襲って来る奴の末路など気にしてられないからな。ニッコリ笑って返答すると、男は顔色を悪くして帰っていった。


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