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千変万化!  作者: 守山じゅういち
59/142

59 ニチアサ

 出店でひと悶着あったが、漸く戻ってこれた。

「それじゃ、キャロちゃん。お土産を皆に配ってくれるかな?」

「うん! まかせろ!」

 最初に買った飴玉と追加で買った果汁入りの飴玉を持ち、腰に煌めく玩具を差して屋敷に駆け込んでいった。

「キャロルの奴め、ちゃんと配るのか? 一人占めにしたりしないだろうな」

「大丈夫ですよ、キャロちゃんは優しい子ですから……それじゃあ私、この後予定がありますので出掛けますね。シンクに留守番を任せてあるので、何かあればシンクに言って下さい」

「わかった。気を付けてな」

 ハルを見送ったあと、キャロルの様子を見に行くと意外にも、集まった子供達の輪の中で一人一人に飴玉を手渡している。

 それでも隙を見て飴玉を口に放り込んで、顔がリスの頬袋みたいに膨らんでいるけど。

 ハルの言う通り、問題は無さそうだ。

 今のうちに新しい屋敷に配置する警備をどうにかするかな。今の屋敷は見るからにボロ屋敷で泥棒だって狙わないほどだが、新しい屋敷ではそうはいかないかもしれない。

 問題が起きる前に手を打たないとな。

 不審者の侵入を未然に防いだり、侵入してきた奴を撃退するなら、戦闘力を持った召喚獣がいいか。それも子供達が怖がらないような奴な。

 番をするなら厳つくて近寄り難い猛獣なんかが良さそうだが、怖すぎても苦情が出そうだからな。

 それと召喚獣はある程度の時間が過ぎたら、召喚が解除されてしまうから、工夫が必要だ。カルンの家に居着いた迷彩大梟(ミリタリーオウル)みたいなのは稀有な例だからな。

 普通の召喚獣は長期間の運用には向かない。そこを変えるには、城主吸血鬼のスキルを使うか。

 手持ちの魔石で一番大きい物を用意して。


 種族『人間 伊織 奏』 職業『錬金術士』


『思い描くように形を変えろ 自由造形』

 モリモリと地面が盛り上がり、魔石を飲み込んで石板が出来上がった。


 種族『城主吸血鬼 伊織 奏』 職業『召喚術士』


 大地から魔力を吸収する城主吸血鬼の鮮血魔方陣を使って、魔力の流れがこの石板の魔石に行くよう効果を調整し、これから行う召喚術と石板の鮮血魔方陣を繋ぐ。

「上手くいくかな……魔石の魔力を使って『主の呼び声に応えよ 召喚・猫妖精(ケットシー)』」

 石板の召喚陣から二足歩行の猫が飛び出してきた。

「にゃにゃにゃにゃん! お呼びですかにゃ?」

 随分と元気な猫が来たな。

「……敷地内に不審者が入り込まないよう警備をしてもらいたい、出来るかな?」

「ふむ、仲間を呼んで良いならやれますにゃ。魔力供給量を考えると……五人くらい呼びますにゃ」

 石板の召喚陣からさらに五人の猫妖精が飛び出してきた。

「にゃにゃ? 出番かにゃ?」

「うにゃ~ん。まだ眠いにゃ」

「敵はどこにゃ! 血祭りにしてやるにゃ!」

「………………にゃ」

「シャキッとするにゃ。主が見てるにゃ」

 色々な毛並みの大小様々な猫が現れた。

「どうですかにゃ? 精鋭揃いですにゃ。其処らの雑魚など敵ではねぇですにゃ」

 大した自信だな。でもこれなら苦情も出ずに備える事が出来そう。

「お前達に任せる仕事は、不審者の侵入を阻止し、ここの屋敷の住人を守る事だ。普段はただの猫に擬態して、敵を認識した時だけ暴れてくれよ。小さい子もいるからな、間違っても護衛対象に怪我させないように。いいな?」

「にゃ! お任せあれにゃん!」

 一斉に敷地のあちこちにバラけて、思い思いに行動し、敷地や屋根の上に登ったりしている。

 監視の目はこれで良し。次は実戦に使える戦力だ。

 孤児院の警備を猫妖精だけに任せるのは不安だし、もう少し強めの戦力が必要だろ。

「う~ん……ゴーレムを使うか」

 ただのゴーレムでは面白くない。ここは思いっきり改造して、腕の立つ賊が来ても撃退出来るような奴を造ろう。


 種族『人間 伊織 奏』 職業『魔法使い』


 まずゴーレム製法の見直しだな。

『仮初めの命を与える、立ち上がれ 力の従者(パワーサーバント)・土』

 地面の土が盛り上がり、徐々に大雑把な人型を形成していく。

 三メートルほどに抑えたが、もう少し大きく出来そうだな。

「歩け」

 指示に従って、ゴーレムがゆっくりと歩き出す。

 右足を持ち上げ、前に移動させて一歩踏み出すと次に左足を引っ張るように前に出し移動する。十数秒かけて漸く数メートルか。

「鈍過ぎる。分かってた事だが、駄目だなこりゃ」

 一般的にゴーレムは大きいが、遅い。というのが常識だ。与える魔力を増やせば多少速くなるようだが、そこで魔力を消費するなら別の魔法を使った方が効率が良いだろうな。

「まずは核である魔石を複数使ってみるか」

 同じゴブリンの魔石を用意し、再びゴーレム製法の魔法を使う。

「……あれ?」

 しかし、魔法は不発に終わり魔石は反発して飛び散った。複数の魔石で一つの魔法を使うのは、無理か。

 例え同じ種族の魔石でも、それぞれ魔力の波長が違うからな。

 一個の魔石だけで性能を上げようと思えば、よほど強力な魔物の魔石を使わないとゴーレムの性能は上がらないが、そんな魔石は貴重だからな。

 ゴーレムで使うには勿体無さ過ぎる。何とか、今の魔石でゴーレムの性能を上げたい。

「複数は駄目……貴重な魔石も駄目……ふむ」

 さて、どうしたものか。

「きらきら~」

「おぐぅっ!」

 しゃがんで考え込んでいたら後頭部を襲撃された。

「いったぁ……」

 振り向くとアニスとフェイを引き連れたキャロルが、出店で買った煌めく玩具を手にして立っていた。

 揃いも揃って満面の笑みを浮かべている。

「コイツ……」

 煌めく玩具を取り上げようと手を伸ばすが、キャッキャキャッキャと甲高い声を上げて逃げ出した。

「まったく、ごっこ遊びにしても乱暴だろ。あれじゃスティックというより剣だ」

 見様によってはニチアサの戦隊ヒーローが使いそうな派手な……

「あっ、そうだ」

 戦隊ヒーローと言えば、合体ロボじゃないか。

 魔石一個で身体全体を動かそうとするから性能が落ちる。

 だったらパーツを分ければ消費する魔力を減らせるんじゃないか?

『仮初めの命を与える、立ち上がれ 力の従者・右腕』

 即席でロボの右腕をイメージして魔法を発動させる。

 形だけを見れば、土で出来たロボの腕だ。

「……あ」

 造ってみて気付いたが、ロボの腕には関節がある。

 肘、手首、指。

 考えてみれば、普通のゴーレムには関節が無い。

 動く時は魔力を消費して身体を変形させ続けている。

 身体全体を変形させ続けていれば、かなり魔力を消費した事だろう。

「最初から動くように造っていれば、消費魔力を抑えられるな」

 大きさを抑え、可動部を造り、パーツを分ける。

 これなら今以上のゴーレムが出来そうだ。

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