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千変万化!  作者: 守山じゅういち
50/142

50 封印、解かれる

 石塔にかけられた目隠しの魔法を解かれ、目の前に拓けた場所とそこにひっそりと建つ巨大な城が現れた。

 ここが禁域の吸血城か。

 魔物を封じた場所とは思えない程、長閑な雰囲気と言った感じだ。

「では、護衛の者はここで待機。城には封印術を持つ僧侶と記録係の文官、隊長である私と助手としてアオバとルリが行く。だが、その前に……」

 サテルの言いなりとなって悪事に加担した文官を、ボルターが文字通り、首を締め上げていく。

「な、なに……を」

「私が、貴様の魂胆を見破れないとでも思ったか。王国にとって大事な務めであるこの調査を、私利私欲で粗しよって……この頭、引っこ抜いてやろうかっ!」

「ひいぃ! お、お許しをぉ……」

 気弱な性格なのか、あっさりと折れた。



 気落ちして項垂れる文官を木にくくりつけ、俺とハルが見張り役となった。護衛の騎士と魔法使いが城の周辺に散らばって、調査が終わるまで警戒する。

「では、あとは頼む」

 一行を引き連れて、ボルターは城の門をくぐった。

 吸血城に出入り出来る場所は正門だけのようだ。あとは三階くらいの高さにある窓か。

 さすがに空でも飛ばない限り、あそこから出入りは無理だな。従魔術士の操る鳥も警戒している。

「ハル、怪しい動きをしている奴はいるか?」

「いえ、皆さん城の外、森の方を見ています。誰も城に近付こうとはしていません」

 う~む。やはり、城に入ったメンバーの中に犯人がいるのかな?

 少し探るか。


 種族『人間 伊織 奏』 職業『召喚術士』


『主の呼び声に応えよ 小蜥蜴(リトルリザード)

 手のひらサイズの小蜥蜴を呼び出し、誰にも見つからないよう城の方へ投げる。

 視覚を共有し、城の中へと誘導する。行ってこ~い。

「ハル。ちょっと城の探索に集中するから、周辺の警戒を頼んで良いか?」

「分かりました。何かあった時、声を掛ければ良いですか?」

 それだとちょっと弱いな。

「声だけだと気付かないかもしれない。叩けばすぐにわかる」

「なるほど。では、もしもの時は殴って知らせます」

 や、優しく頼むよ?



 目を瞑り、召喚獣の小蜥蜴に意識を集中する。

 異様に吸血城がデカく見える。小蜥蜴の視界だと色々な物がデカく見えるな。 

 入り口奥に階段がある。登りと下りか。

『この城、地下があるのか』

 調査隊はどっちだ。小蜥蜴が階段に触れると、微かに上から震動を感じる。

 どうやら登っているようだ。急ごう。

 小さい身体に苦労しながら、階段を登って行くと調査隊に追いついた。

 目的の部屋は二階にあるようだ。

 あっ。ボルターはフル装備で様子がわからないが、アオバの奴、緊張し過ぎて挙動不審なほど辺りをキョロキョロしている。もう少し肩の力を抜けよ。

 ルリがアオバに膝蹴りを入れた。手荒いが、多少は緊張が抜けたかな。

 僧侶の一人が扉に掛けられた魔法式の錠を解いた。

 ボルターが警戒しながら扉を開け、一行が部屋に入る。

 部屋の中には魔方陣が敷かれ、中央に棺桶がある。

 記録係の文官は、あからさまに棺桶を恐れ魔方陣にさえ近付こうとしない。文官は候補から外しても良さそうだ。

 僧侶も封印の魔方陣をチェックするだけで、怪しい動きは無い。

 ……どうなってんだ? 文官でも、僧侶でも無いとしたら、一体誰が封印を解こうとしているんだ。

 軽く混乱していると頬を叩く衝撃で、意識が戻った。

「ん、ハルか……どうした?」

「あの人、気になりませんか」

 ハルがこっそり指差したのは、魔法使いの一人。確か従魔術士だったか。

 何か慌てた様子で辺りをキョロキョロしている。

「あぁ、様子がおかしいな。おい、アンタ! どうかしたのか?」

「いや、ちょっと……従魔の姿が見えないんだ。犬の奴なんだが、見てないか?」

 道中の索敵をしていた魔犬か。姿が見えないって事はヤられたのか。

「自分の従魔だろ。呼び戻せないのか」

「それが、どうにも反応が鈍いんだ……何か術が解けかけているような感じで」

 なんじゃそら、頼りないな。

「自分の相棒だろ。どうにかしろよ」

「う~ん……上手くいかないなぁ。くそ、不良品を借りちまったかな」

 うん? 借りちまった?

「あ、あの、連れていたワンちゃんは貴方が飼育している従魔ではないのですか?」

 ハルの問いに、男は頭を掻きながら。

「今回、索敵がメインだから訓練された専用の魔犬が用意されたんだよ。俺は王都出発前に術を掛けて連れてきただけさ」

 何だろう、嫌な予感がしてきた。ハルも同じ気持ちなのか、強張った表情でこちらを見ている。


(自爆覚悟で魔法具を使えば、ただの文官でも)


 昨日の夜、話していた事が頭をよぎる。

 そうだ魔法具を使えば、遠隔操作の従魔でも封印を破壊する事は出来る。

 しまった。

 すぐに小蜥蜴に意識を繋ぐ、ボルターに異常を知らせなければ!

 小蜥蜴の視界を通して部屋を確認する。ボルター達は文官と僧侶にだけ注意を向けている。

 魔犬は? どこにいる? 

 小蜥蜴をボルターに近寄らせようとした瞬間、意識が途絶えた。

「……小蜥蜴が殺された。すでに中にいる」

 間に合わない。

「全員、急いで城の封印の間に行け! 封印が……」

 解かれるぞ、と言う前に城から爆発音が響いた。

 

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