表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千変万化!  作者: 守山じゅういち
4/142

04 何それ?

 種族『人間 カウカ』 職業『格闘家』


「グゥラアアァァ!」

 大鬼騎士の剣を避け、懐に飛び込もうとするがすぐさま強烈な膝蹴りがくる。その蹴りを両手で受けるが体重差が有りすぎて、後ろに飛ばされる。

 様子見の攻撃を何度も仕掛けているが、未だ有効打はない。

 技術面は大体互角、力は圧倒的に向こう、速さはこちらが有利、装備はこちらが不利か。

 職業を格闘家以外にしても、状況は良くならないな。

 剣士では、装備が悪すぎて不利。魔法使いは、動きが悪すぎて、すぐ死ぬ。現状、格闘家でギリギリだ。

 剣を避けて、左手側に回り込んでも盾に阻まれるか、盾打撃(シールドバッシュ)で攻撃されている。

 こちらを甘く見ているのか、戦いを楽しんでいるのか、積極的に攻撃してはこない。

 お供の小鬼僧侶にいたっては観戦モードだ。

「ふぅ、強拳打(パワーフィスト)!」

 格闘家スキルの攻撃も大鬼の腕力に支えられた盾を揺るがす事は出来なかった。

 大鬼騎士がニヤリと嗤う。小鬼僧侶も足をバタつかせて騒いでいる。どうせ「そんなもんか、人間!」とか「弱えぇ!」とか言ってるんだろう。

「くそぉ……」

 悔しそうに顔を歪め、数歩下がる。怖じ気ついた様子の俺に、大鬼騎士は両手を広げて挑発してくる。

 だが、俺は攻めに行かない。

 打つ手無しの俺を見て、大鬼騎士は勝利を確信している事だろう。

 さて、そろそろいい頃合いか。

 俺は再度、左手側に突進する。大鬼騎士はこちらを舐め切っていて盾の攻撃に鋭さがないが、追撃の剣がこちらに向けられている。

 盾にぶつかる直前、大きく跳び上がった。そしてその途中で大鬼に変身する。


 種族『大鬼』 職業『格闘家』


 目の前にいきなり大鬼が現れて、大鬼騎士の動きが一瞬、止まった。

 その隙に空振りし伸びた左腕を掴み、着地と同時に捻り折って破壊する。

「ギィガアアァ!」

 大鬼騎士が悲鳴をあげて盾を落とした。

 すぐさま小鬼僧侶に治療させようと、背を向けた。

 甘い、戦いの最中だぞ。基本能力は高いが、経験が足りないようだ。迷宮主だからあまり戦わないのかな。

 足下の小石を拾い、治療を阻止する為に小鬼僧侶の頭部目掛けて投げた。

「カッピャ!」

 大鬼の腕力はただの小石を必殺の武器へと変えた。小石が命中した小鬼の頭が半分吹き飛び、絶命した。


 種族『大鬼』 職業『僧侶』


 僧侶スキルの身体強化の補助魔法を使う。

『我に更なる力を与えよ、身体強化(フィジカルブースト)

 治療の当てが外れて硬直している大鬼騎士にトドメの一撃を繰り出す。


 種族『大鬼』 職業『格闘家』


「ガアアァ!」

 大鬼騎士が苦し紛れに剣を振り回してくるが、それを掻い潜り。

強拳打(パワーフィスト)!」

 大鬼の腕力+格闘家スキル+身体強化魔法

 3つの力を集結させた結果、俺の右手は大鬼騎士の身体を貫き、身体の中から石ころを抉り出した。


 盛大に血を吐き、大鬼騎士が倒れた。

「……フゥ」

 完全に死んでいるな。でも、この石は何だろ?

 血で汚れているが、宝石のように綺麗だ。

 そういえば、これまでに倒した魔物の中にもこういう宝石みたいな石があったのかな。いちいち解体してる暇が無かったから、武器以外は拾ってないんだよな。ちょっと勿体なかったか。


『進化エネルギーが限界に達しました。進化しますか?』


 え? 進化?

 急に何だ? ……この世界じゃ戦闘を繰り返すと魔物は進化するのか?

 確かに、かなり魔物を殺したし、迷宮主も倒したからな、十分に進化エネルギーとやらは貯まったわけか。

 さて、進化するか、どうかだが。


 キャンセルする。


 成り上がりにも無双にも興味ない。シェイプシフターで十分だっての。


『進化エネルギーは還元されました』


 んん? 今度は、還元? 何か変わったか?

 とりあえず、姿を……そうだ。試そうと思ってた事があるんだよな。

 シェイプシフターの変身スキルは、見たことのあるものにしか変身できない。それに前世で見たことのあるものも駄目だった。だが、一つだけ前世から持ってきているものはどうだろうか? 

 俺自身は? 前世の姿は、スキルの対象だろうか。


 種族『人間 伊織 奏』 職業『格闘家』


 いけた。変身が成功した事で、俺は前世の姿を手に入れた。ひょっとしたら上手くいくかも程度の期待だったがよかったよかった。いつまでも借り物の姿じゃ落ち着かなかったんだよな。

 で、大鬼騎士の石だが、もしかして値打ち物かもしれない。人間の住む街に行ったら換金出来るかもしれないから持っていこう。

 あと大鬼騎士の剣も持っていくか。ようやくまともな武器が手に入ったな。でも、鞘が無いからとりあえずアイテムボックスに収納しておこう。


 色々とわからない事も増えたが、今はあれこれ考えてもしょうがない。そのうち、何とかなるさ。

 それより、せっかく苦労して迷宮主を倒したんだから特別な財宝みたいな物は無いのかな。

 戦った場所はそれなりに広い空間だったから、あちこちを歩き回ってみるが、宝箱は見つからない。

 唯一、殺風景な洞窟の壁に嵌め込まれた宝石が金目の物か。大鬼騎士の石より大きく、高値で売れそうだ。

 ゴブリンの剣を使って掘り出し、アイテムボックスに放り込む。気のせいか宝石を掴んだ瞬間、誰かに呼ばれたような……。

 いやいや、気のせい気のせい。

 これ以上、ここに用はないな。さぁ、外に出よう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ