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千変万化!  作者: 守山じゅういち
139/142

139 勇者の戦い

 『ブルーリーフ』だけで昼食を取り、コウヘイは来なかった。

「以前はあそこまでコミュ障じゃなかったんだけどなぁ……やっぱ、あの仮面を着けるようになったから変わったのかな?」

「かもねぇ……ある種の呪いのアイテムは強化する効果と同時に弱体化の効果も持ってたりするんだけど、私はあの仮面から呪いのような瘴気は感じなかったけどなぁ」

 食後のお茶を飲みながらルリがコウヘイの仮面について解説した。俺も特に危ない印象は受けなかった。若干依存性はありそうだが、覇気の仮面の効果は装備した者の精神を高揚させて恐怖で身体が硬直しないようにするアイテムだろう。その反面、装備していない時は少しだけ気分が落ち込むとかじゃないかな。

「多分、コウヘイさんと覇気の仮面の相性が良過ぎて普通の人が使うより効果が強く出ているんじゃないかな? 持ち主と装備品の相性ががっちりと噛み合うと想定される以上の効果が発揮されるって聞いた事があるよ」

 シェリアが学生時代に集めた情報によると滅多にある事では無いがそういう事もあるという。

「あのアイテム、コウヘイさんと組み合わせが良かったんだろうね。本人の性格だけで無く、職業的にも有効な装備だと思うよ。コウヘイさんて従魔術士(テイマー)なんだよね? 闇夜のローブの効果で存在感が消えるのは戦闘時に従魔の主が狙われるのを防げるし、覇気の仮面は従魔術の成功率を高めるのに役立つと思うよ」

 何事にも動じない強靭な精神力は従魔術にとって重要な要素となる。そう考えると装備者の精神力を補助する覇気の仮面は従魔術士にとって専用道具と言っていいくらい役に立つアイテムだな。

「道具に依存するのはどうかと思うけど、他所のパーティーのやり方に口を挟むのはマナー違反だし、それほど危険性が高いわけでもないからこれ以上はコウヘイは決める事だな」



 冒険者ギルドの訓練場にいくと大型獣と戯れるコウヘイがいた。

「なんだよ、コウヘイ。お前も特訓か?」

『こんな間近になって特訓なわけないだろ。土壇場になって困らないように日頃の積み重ねが大事なんだよ』

「立派な心掛けですね、流石は勇者殿。うちのとは大違いだわ」

「……さ~て、始めるかぁ」

 ルリからちくちくと嫌味を言われて居心地が悪くなったアオバが早々に特訓を開始した。

 いつものように回避力を高める為にルリとシェリアの魔法を避け続ける。

 これまで何度も食らい続けた攻撃を身を躱しつつ剣と盾を駆使して斬り払い、制限時間まで動き続けた。飲み込みが早いのか、特別な素質でもあるのか、僅か数日ではあるが特訓の成果が現れて来ている。

「じゃあ次はルリとシェリアの物理攻撃だ」

 まだ息が荒いうちに次の特訓へ移る。ルリとシェリアの杖による攻撃を素手で対処する特訓だ。ルリは単純な攻撃だが、シェリアは経験があるのか数日前で杖の攻撃が様になっている。

 アオバを攻める内容だが、ルリやシェリアにも有効な特訓になっている。これも制限時間まで続けると襲われていたアオバよりもルリの方が息が乱れている。

「はぁ……はぁ……キッツい」

「ルリぃ。お前、もう少し体力を付けた方が良いぞ。俺より先にへばるなんて情けねぇな」

「うるっさ……ぃ」

 悪態をつくアオバに言い返す気力も無いルリの体力が戻るまで、しばらく休息となった。

「シェリアは意外と体力あるな。魔法使いってひ弱なイメージだったけど」

「私は学園で基礎を教わったからな。たとえ後衛職でも体力作りをするカリキュラムが組まれていたんだ……当時はあまり熱心に取り組まなかったが今となって体力の重要性に気付かされたよ」

 そりゃそうだよな。何をするにしても体力がなければ始まらない。知識量、技能ばかりが高くても実戦で活かす為には体力が無いとな。

 ルリとシェリアが休んでいる間でも、特訓に火が点いたアオバは自主的に剣の素振りを始めた。そこへ、コウヘイが近付いてきた。

『アオバ、体力が有り余っているのなら俺の従魔と一戦やるか?』

「へぇ面白い。ちょっとやろうぜ」

 コウヘイとアオバが模擬戦を行うという事で俺が審判役を任された。

 協議の結果、アオバ一人に対してコウヘイは二体の従魔を出しさらに本人も参戦するという。

「一対三で、コウヘイ側は有効打を食らった奴から失格、アオバは三回有効打を食らったら失格、これでいいな?」

「おう!」

『うむ』

 両者の了承が取れた所で、模擬戦が開始された。

剛拳大猿(ナックルエイプ)小鬼(ゴブリン)剛腕拳士(ハードパンチャー)召集(コール)

 コウヘイの目の前に二体の魔物が呼び出された。召喚術に似ているが、これは遠くにいる契約した魔物を呼び寄せる職業スキルだな。

 アオバより大柄な剛拳大猿の影に隠れて小鬼剛腕拳士が死角から攻めてくる。

「……へへ」

 数日前のアオバなら苦戦していたかも知れないが今のアオバは特訓を重ね、五感をフルに使って感知能力を高めている。

 それにすでに身体が十分に温まり感覚が鋭敏になっているアオバには鈍重な大猿の攻撃など掠りもしない。

「おらぁよっ!」

 逆に大猿の間合いを殺して有効打を与えると小鬼剛腕拳士の動きを牽制した。

『やるな……剛拳大猿、帰還(リターン)

 大猿が消えて、残るはコウヘイと魔物が一匹。これはアオバが有利か。

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