第74話
三好に招き入れられ、蓮と優牙が玄関から入ってきた。
リビングから少しだけ顔を出してその様子を見ていた美緒に、蓮が気付いて駆け寄る。
「美緒!」
美緒の尻尾がビクリと上がった。
「美緒、心配したんだよ」
蓮が美緒の前に跪き、視線を合わせる。
「うん……」
途端に耳が倒れて尻尾も下がった。助けを求めるように視線を彷徨わせると、同じく狼姿の優牙と目が合う。
「う!」
美緒は思わず後ずさった。優牙の目が怒りに満ち溢れている。
「姉ちゃん!この馬鹿――」
飛びかかろうとする優牙。美緒が悲鳴を上げる。しかしその時、リビングの中から明るい声がした。
「いらっしゃい。あなたたちもご飯を食べていきなさい」
優牙と蓮が顔を上げ、そして目を見開く。
リビングから出てきたモノ、それは――。
「鳥だ」
「……鳥」
三好がコホンと咳払いをする。
「俺の嫁さんのカラス天狗だ」
優牙が振り向いて三好を見た。
「カラス天狗? これが?」
初めて見た……と呟き視線を戻した優牙とじっと動かない蓮に、三好の妻は微笑む。
「いつまで廊下に居るの? ほら、こっちに来て」
促されてリビングの中へと視線を向け、優牙と蓮はまたしても驚いた。
「翼……? 鳥と人間のハーフ……鳥人間、いや『人間鳥』か?」
「…………」
三好が大きな咳払いをする。
「息子だ。失礼すぎるぞ、お前達。いいから部屋に入れ」
一方、吉樹はまったく気にしていない様子で、クスクスと笑って皆を手招きした。
「どうぞ、座って。美緒ちゃんもおいで」
勧められるまま中に入って座ると、三好の妻がキッチンからまた大量の唐揚げを持ってくる。
「どうぞ、たくさん食べてね」
鳥が唐揚げを持つという光景に、蓮と優牙が唸った。
「……唐揚げですか」
「う。なんかエグイな」
そんな二人に、三好の妻が唐揚げを取り分けて渡す。
「美味しいわよ。ね、美緒ちゃん」
「うん。美味しいよ」
既に唐揚げを頬張っている美緒の姿に、優牙は溜息を吐いた。
「姉ちゃん、ちゃんと反省してるのか?」
「う、うん。そりゃ勿論……だよ?」
「何で疑問系なんだよ!」
怒る優牙を三好の妻が宥める。
「まあまあ。それより焼き鳥とタンドリーチキンもあるから食べていきなさい」
「……鳥料理ばかりかよ」
こうして蓮と優牙も加わり、妙に賑やかな雰囲気で食事が始まった。