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第67話

 夜十時――。


 人気の無い真っ暗な小学校の校舎。その昇降口前に立つ四人――美緒、蓮、愛、優牙。

「なんだか怖いでしゅねぇ」

 蓮の腕にしがみつき、美緒が呟く。

 美緒と蓮、それに愛は大学二年生、優牙は大学一年生になっていた。

「こんなところに呼び出して、いったい何の用なのかな?」

 昼間、大学の事務職員から、四人は十時にこの場所に集まるようにと言われた。ただし、呼び出しの理由については一切聞かされていないのだ。

「学校の七不思議体験ツアーにご招待とか?」

 その時、校舎の中にボウ……と光が浮かんだ。

「ぎゃあ! ヒトダマ!」

 叫ぶ美緒に苦笑して、蓮が光を指差す。

「へ?」

 よく見るとそれは『ヒトダマ』ではなく『人』のようで、昇降口の戸を開けて四人に笑いかけた。


「ようこそ、夜の学園へ」





 美緒はポカンと口を開けて、昇降口に立つ人物を見上げた。

「ヨシヨシ先生だ。一年ぶり。どしたの? こんなところで」

 久し振りに見た三好は以前と変わらぬ様子で美緒の頭を撫でる。

「みんな、元気そうだな」

「元気だよ。そして卒業式での涙の別れからたった一年で再会とは、正直がっかりだよ」

「さて、行くか」

「おおぅ、無視? 先生は変わってしまった。たった一年の間に何があったというのか」

 三好が苦笑しながら四人を校舎内に入れ、懐中電灯で足元を照らしながら歩き出した。

「一年間に何があったか聞きたいか? 簡単に言うと信じられないほど忙しかった。疲労が限界にきている教員や、実際ダウンした者もいて、俺も小中高掛け持ちでヘトヘトだ」

 美緒が眉を寄せる。

「小中高?」

「このままでは理事長が最終手段を使いかねない」

「最終手段?」

「ということで――」

 三好は階段下の何の変哲も無い壁の前で立ち止まり、四人の顔を見回した。


「今から教育実習を行う」


「教育実習!?」

 美緒が驚きの声を上げ、残りの三人が渋い顔をする。

「おおー。教師への道を確実に進んで――うぎゃ!」

 うるさい美緒を押し退け、優牙が三好の前に立って腰に手を当てた。

「呼び出しを聞いた時にまさかと思ったけど、本当に教育実習だったのか。おいこら、今何月か知っているか?」

 三好が片眉を上げる。

「四月だ」

 その答えに優牙のこめかみがピクピクと動いた。

「俺は大学に入学したてだが?」

「では行くぞ」

「無視かよ!」

 三好が壁に手を当てると、どういう仕組みになっているのかは分からないが、壁の一部がギギギと音を立てながら開き、下への階段と長い通路が現れる。

「欲しいのは即戦力だ。期待している」

 口角を上げる三好に優牙が鼻を鳴らして通路に入り、その後に美緒達が続いた。

 美緒はキョロキョロと周りを見回し、そんな美緒がこけないように腕を引っ張りながら蓮が呟く。

「校舎内に隠し出入り口ですか」

 愛も肩を竦めた。

「ここにこんなものがあったなんて、全然気付いてなかったわ」

「実は十組の教室への出入り口は学園内のいたるところにある。ここはそのうちの一つにすぎない」

「たくさんあるのですか? 危険では? 何かの偶然で一般生徒に見つかりでもしたら……」

 人外の存在がばれてしまい、大変な事態になる。

 だが三好は首を横に振った。

「いや、いざという時にすぐに十組の教室に教職員が駆けつけられる体制が整っていた方がいい」

「そうなのですか?」

 首を傾げる蓮に三好は笑う。

「ああ。何しろ十組はいろんな生徒がいるからな」

 目の前に現れた階段を上り、ドアを三好は押した。そこには……。


「ん? フツーだね」


 美緒の言った通り、何の変哲も無い廊下と教室。ただ違うのは、窓が極端に少なく小さいという点だけだ。

「二年生の教室に行くぞ」

 三好に案内されて、四人は二年十組の教室へと向かった。


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