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第54話

 いつもより早く、しかも一人で帰って来た美緒に、キッチンで料理中だった優牙は眉を寄せた。

「どうした、姉ちゃん」

「・・・・・」

 ドサリとソファーに倒れこみ返事をしない美緒。

 優牙は包丁を置いて、美緒の傍に行った。

「で?どうした。喧嘩したか?」

 背中をポンポンと叩かれ、美緒が少し顔を上げる。

「・・・どうして彼女がいるのにエッチなDVDを観るの?」

「・・・・・は?」

 予想外の言葉が返ってきて一瞬驚いた優牙だったが、すぐに呆れた表情で美緒の尻を叩いた。

「なんだ、変態野郎がエロDVDを持ってたのか」

 美緒が頷いたのを見て、優牙は少し笑う。

「しょーがねえ奴だな。でもまあ許してやれよ。何と言うか・・・あれとこれとは別物なんだよ」

「そんなの分かんない」

「だいたい姉ちゃんだって、いかがわしい小説読んだりしてるじゃねーか」

「今は私の話じゃなくて蓮君の話をしてるの!」

 優牙は舌打ちして「これだから女は・・・」と小さく呟いた。

「しかし、あいつ人間の女にもちゃんと興味があったんだな。俺はてっきり・・・」

「犬のDVD!」

「・・・あー、犬のエロDVD?すげーマニアック。やっぱ変態だ」

 優牙は頭をバリバリ掻いて溜息を吐いた。

「許してやれよ」

 美緒が顔を伏せて首を振る。

「厳しいな」

 美緒がもう一度首を振る。

「違う。そうだけどそうじゃなくて・・・」

「何だ?」

「分かんない。上手く言えない」

「・・・・・」

 優牙がクシャクシャと美緒の頭を撫でた時、玄関の方から物音が聞こえた。

 美緒がビクリと肩を震わせ、優牙が顔を上げる。

「よお、よくも俺の大事な姉ちゃん泣かしてくれたな」

 ばつの悪い表情を見せ、蓮は二人の傍まで行った。

「美緒・・・」

 優牙は溜息を吐いて、蓮の肩を叩いた。

「俺は醤油を買いに行く」

「ああ」

 優牙が部屋から出て行くと、蓮は美緒の傍らに座り、その髪を手で梳いた。

「美緒、ごめん。僕が悪かったよ。DVDは処分する」

「・・・・・」

 動かない美緒の髪を蓮は一房掴む。

「僕は・・・、うん、今はまだすべてに応えられないけど、でも――――――」

 蓮の指が美緒の頬に触れ、涙を拭った。


「美緒が好きだよ」


「・・・・・」

 体当たりするように、美緒が蓮の胸に飛び込む。

 蓮は美緒を抱きしめて、二人はギュッと抱き合った。

「美緒・・・」

「DVDは浮気です。他の犬を見るのも浮気です」

「他の犬も人間も見ない。両方美緒だけだから」

「・・・うん」

 美緒の身体から力が抜けていく。

「あ・・・」


 来る。


 しかしそれは今までと違い、はっきりと変化が感じられる。

 口が尖り・・・次は毛が生え・・・そう、最後に耳と尻尾。

 美緒の思った通りに変わっていく身体。

 やがて変身が完了すると、美緒は肉球で目を見開く蓮の頬に触れた。

「変身・・・コントロール出来そうです」

 服を着た狼が笑う。

「美緒」

 蓮はもう一度強く美緒を抱きしめ、美緒が舌を伸ばして蓮の頬を舐めた。

「愛してるよ、美緒」

 二人は見つめ合い、ゆっくりと唇を触れ合わせた。


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