第39話
「あ・・・・・」
美緒の手足が伸びていき、体毛が薄くなる。
口が縮み、耳の位置が変わる・・・。
「え・・・!?」
人間の姿に戻っていく美緒を、蓮は呆然と見つめていた。
やがて完全に人間になると、蓮は美緒の顔を撫でながら、涙した。
「何故・・・?人間の姿なんかに・・・!」
「さっきは『どっちでもいい』って言った癖に!」
「犬と狼はどっちでもいいけど、人間と狼はどっちでもよくない!戻ってくれ!」
「無理でしゅ!変身はコントロール出来ないものなのです!次はいつ変身するか分かりません!」
「ええ・・・!?」
蓮は、目と口を大きく開けて、ベッドに倒れ込んだ。
「そんな・・・。何とかならないのかい・・・?」
「何ともなりません!」
「・・・・・」
蓮は美緒を恨みがましい目で見て、溜息を吐いた。
「・・・仕方ない。じゃあ、取り敢えず人間の姿の君に言うよ。僕と付き合って下さい」
「嫌でしゅ!」
「何故!?」
蓮はガバッと身体を起こし、美緒の肩を掴んだ。
「ペロペロは嫌!」
「しない!ちゃんと清い交際をする!」
美緒が首を振る。
「変身した姿しか興味が無い人は嫌!」
「それは我慢してくれ」
「ええ!?」
美緒は唖然として蓮の手を振り払った。
「何で私が我慢しなくちゃいけないんですか!?」
「お菓子もケーキも、好きなだけ買ってあげるから!」
「う・・・!・・・でも、今回は駄目でしゅ!」
美緒は散らばっている制服と下着を掻き集める。
「あ・・・!」
しかし、それらを蓮が素早く奪い取った。
「何するんですか!」
「付き合ってくれなきゃ返さない。全裸で帰れるものなら帰ってみろ!」
「うぅ・・・!卑怯者!」
いくら美緒でも、全裸で外を走る勇気は無い。
唇を噛み締めた時、更に蓮が部屋の隅に置いてある勉強机の引き出しから、ライターを取り出した。
「十秒以内に返事をしないと、燃やす」
「ヒィイ・・・!何でそんな所にライターが!」
「十、九、八」
取り返そうと飛び掛かってくる美緒を軽く躱して、蓮は続ける。
「七、六、五」
「返してー!!」
「四、三、二・・・」
蓮がライターに火をつける。
「一・・・」
「あぁあーーーーっ!!」
美緒のパンツが燃えた。
「僕は本気だ!次は制服を燃やすぞ!!」
「うぅう・・・!」
「さあ!どうする!?」
「あぁああーっ!!!」
美緒は制服にしがみつき、懇願した。
「それだけは、それだけはやめて!!」
「じゃあ僕と付き合うか!?」
「・・・・・!」
ギュッと目を閉じ、震えながら美緒は頷いた。
「よし。今日から君は僕の彼女だ」
蓮はライターを放り投げ、泣き崩れる美緒の頭を撫でる。
「ほら、立って。スカート穿くよ」
「うぅ・・・。ノーパンにミニスカート・・・!」
「パンツなら、僕のを貸してあげるから」
こうして二人は、恋人同士となったのだった。