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第32話

「じゃあ、また月曜日」

「・・・え?」

 帰り際、蓮が発した言葉に、美緒は首を傾げた。

「土日はやる事があるから会えないけど、ちゃんと勉強するんだよ」

「え、あ?」

「さっさと帰れ」

 優牙が冷たく言い放ち、蓮は帰って行った。

「ふん、やっとゆっくり出来るな」

 リビングへと戻る優牙に美緒も続く。

 その後二人はテレビを観ていたのだが、突然美緒が立ち上がり、叫んだ。

「あぁあああーっ!!」

「うるせー!何だよ!」

「今日は金曜日だ!!」

「今頃気付いたのかよ!」

 美緒はクッションを抱き締めて、床をゴロゴロと転がった。

「おおぅ。久しぶりに、のんびり出来るー」

「お前はいつも、のんびりだろうが。まあでも、今週は濃かった。疲れた」

「うんうん!」

 翌土曜日、美緒はテレビを観たり漫画を読んだりして、ダラダラと過ごした。

「ちょっとは勉強しろよ」

「はいはい」

 優牙の忠告などまったく聞く気配はなく、久しぶりの自由を満喫していた。

 そして日曜日、優牙が朝リビングに行くと、服を着た狼がソファーで丸くなり寝ていた。

「おい、姉ちゃん」

 優牙が蹴ると、美緒が唸りながら目を開ける。

「んー?おはよー、優牙」

「『おはよー』じゃねーよ。こんな所で寝るな。変身しちまってるぞ」

 美緒は目をパチパチさせて、自分の手足を見た。

「おお、本当だ。いつの間に?」

 優牙は呆れて、美緒の頬を引っ張った。

「気を付けろよ。変態が居なくて良かったな」

 優牙はキッチンに行き、炊飯器の蓋を開けて、おにぎりを作り始めた。

 出来上がったおにぎりを持って、美緒のもとに行く。

「おら、口開けろ」

「あーん」

 優牙は美緒の口におにぎりを放り込み、溜息を吐く。

「いい加減、変身コントロール出来るようになれよ。不便だろう」

 狼の美緒は食べるのが下手だ。

 一人で食事させると、食べかすが散らばり、掃除が大変なのだ。

「優牙、トイレ行きたい」

「・・・・・」

 優牙が美緒の服を脱がせてやる。

「優牙、喉乾いた」

 飲み物を口に運んでやる。

「優牙、テレビのチャンネル替えて」

「優牙、漫画読みたい」

「優牙、背中が痒い」

「優牙、お昼ご飯まだー?」

「優牙―――――」

 優牙は美緒の耳を、思い切り引っ張った。

「うぎゃあー!痛い痛い!虐待ー!虐待ー!動物虐待ー!一年以下の懲役又は、百万円以下の罰金ー!!」

「うるせー!!」

 この日、夜まで美緒は人間の姿に戻らなかった。


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