表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/130

第30話

 足をふらつかせ、息も絶え絶えに教室に入ってきた美緒に、愛が眉を寄せる。

「なんだか、今日は一段と激しいわね」

「ううう・・・。泥棒がストーカーから変態に超進化」

「何それ?」

 愛は首を傾げながら、制服のポケットから振動している携帯を取り出した。

「優牙からメール。『変態に気を付けろ』・・・って何これ?姉弟揃って意味不明。あんた達ってこういう所、そっくり―――――、おはよう。佐倉」

 愛の言葉に、美緒が振り向く。

「ヒィィ!あっち行けでしゅ!」

「そんな酷い・・・。おはよう。河内さん」

 蓮は警戒する美緒に苦笑して、愛に挨拶を返した。

「はい、どうぞ」

 蓮が美緒の目の前に、ジュースを差し出す。

「走ったから、喉渇いたよね」

 爽やかに笑う蓮。

 美緒は一瞬手を出そうとするが、ハッと気付き、慌ててそれを引っ込めた。

「駄目でしゅ!『変態は接触感染する』って、優牙が言ってたのです!」

 ブンブンと激しく首を振って、美緒は両手を身体の後ろに隠した。

「へえ。『変態』って佐倉の事なの?」

 興味津々といった感じで顔を覗き込む愛に、蓮は首を横に振った。

「違うよ。僕は自分に正直に生きているだけだよ」

「正直・・・ね」

 顎に人差し指を当てじっと見てくる愛に蓮は笑って、美緒に向き直った。

「それより大上さん、このジュース、飲まないなら僕が飲んじゃうよ」

 蓮が、美緒の目の前でジュースを左右に揺らす。

 それに合わせて、美緒の顔も左右に揺れる。

「うう・・・」

「いいのかな?」

「ううう・・・」

 美緒はひったくるように蓮からジュースを取ると、キャップを開けて勢いよく飲み始めた。

「よしよし。いい子だね。弟君は冗談を言っただけだよ。ほら、触ってるけどなんともないだろう?」

 蓮が美緒の頭を撫でながら、優しく言う。

「う・・・、うん」

「君はハニーへと繋がる大切な糸だよ。切れたら困るんだ」

「うん??」

「さあ、席に着こうね」

「うん」

 蓮に連れられ席へと向かう美緒に、愛は呆れてしまう。

「お馬鹿・・・」

 愛は呟いて、美緒と蓮を暫く見ていたが、やがて溜息を吐いて、テスト勉強をする為にノートを開いた。

 そんなふうに、食べ物を与えられたり、怒られたり、誉められたり・・・を繰り返されながら、美緒は放課後蓮の家に行き、帰りは自宅まで送ってもらった。

「だから!何でそいつを連れて来るんだよ!!」

「あうう!痛い!!」

 優牙は持っていたお玉を、美緒の顔面に投げつけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ