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番外編 「姉ちゃんと自転車」 中編

「うぎゃあ!痛い!」

 少し前までピカピカだった自転車は、もう既にボロボロになっている。

 勿体ねー。

 意外にも、乗ることは簡単に出来た。

 ただ、止まれない。

 壁や電柱にぶつかりまくっている。

 ・・・何故だ?

「もっとはやく、ブレーキをかけろ」

「うう・・・、やってるんだけど・・・」

 やってねーだろ!

 ああもう、付き合ってらんねー。

 俺は姉ちゃんの襟首を掴むと、しっかり目を合わせ、言い聞かせた。

「いいか、よく聞け。俺は家ん中に入る。練習するのはいいが、絶対に遠くには行くな」

「ええ!?優牙帰っちゃうの?」

 姉ちゃんの縋るような視線を無視し、念押しした。

「遊んでいいのは、家の前だけだ。分かったな」

「・・・はぁい」

 俺は姉ちゃんから手を離すと、家の中に入った。

 まだ掃除が済んでいないのだ。

 俺は掃除機を掛け、拭き掃除もした。

 そうだ、ついでに窓ガラスも拭くか。

 内側を拭いて、次に外側を掃除する為、外に出る。

「・・・・・?」

 そこで俺は異変に気付いた。

 やけに静かじゃないか?

 まさかと思いつつ、家の前の道に出て、辺りを捜す。

 ・・・居ねえじゃねーか!!

 信じらんねー。あれだけ言ったのに。

 どこ行きやがったんだ?

 俺は窓掃除を諦め、姉ちゃんの捜索をする事にした。

 変身すれば、嗅覚や聴覚が鋭くなり、見つけるのは容易くなるが、そこまでする必要はないだろう。

 それに犬の姿では、自転車と姉ちゃんを、担いで帰る事が出来なくなる。

 先ずは学校方面から捜すか。

 そう思って足を踏み出した時、シャレにならない音が聞こえた。


 ―――――キキキキーッ!!ドカンッ!


「・・・・・」

 姉ちゃんだ。

 確認した訳ではないが、確信した。

 事故りやがった。

 俺は急いで音のした方に向かった。

 そして、家から少し離れた大通りで、姉ちゃんを見付けた。

「だ、大丈夫ですかー!?」

 運悪く姉ちゃんを轢いたと思われる男性が、慌てふためいている。

 当の姉ちゃんは、パックリ割れた頭から多量の血を流し、気絶しているようだ。

 俺は姉ちゃんのもとに行くと、その身体を無造作に左肩に担ぎ上げた。

 男性や見物人が、唖然としたり、悲鳴をあげたりしている。

「ちょ、ちょっと君、何を―――――」

 我にかえった男性が、俺を止めようとした。

 まあ、普通はそうだよな。

「俺はこいつの弟です。これぐらいの怪我、いつものことなんで、大丈夫です」

 それだけ言うと、俺は壊れた自転車を抱えて、素早くその場から立ち去った。

 家に戻ると、自転車は庭に置き、二階への階段をのぼる。

 姉ちゃんの部屋のドアを開けると、ベッドに姉ちゃんを放り投げ、一階からタオルとガムテープを持ってきた。

 傷口を見てみると、

「・・・・・」

 うげっ、中身見えてるぞ。気持ち悪い。

 パックリ割れた頭にタオルをあて、ガムテープでぐるぐる巻きにする。

 実は姉ちゃんは、自己治癒力が異常に高い。

 しかもそれは、命の危険を伴うような、大きな怪我であればある程発揮される。

 その代わりなのか、嗅覚・聴覚・その他諸々は人間並で、変身のコントロールも出来ないが・・・。

 おそらく三日もすれば、起き上がれるようになるだろう。

 それより血で汚れた身体が気持ち悪い。

 俺はシャワーを浴びる為、姉ちゃんの部屋を後にした。


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