手芸センターの猫
猫好きです。
あたしは勉強熱心な学生だ
けっこう まえのほうの5列めで
意外にも わりとまじめに講義をきいている
こんどはどうやら
手芸センターのなかに 猫が迷いこんだらしい
毛糸とか じゃれつきアイテムがそろってるから
まあ しかたないんじゃない?
箱の中にいるっていうから おそらく きっと
段ボールのなかに はいりこんでしまったんだろう
はいはい あいつら好きだもんね
袋のなかにいれてやってもかわいいよ
うえからみおろしてやるあたしと
したからみあげる猫とが じっとみつめあって
猫がみゃあって鳴いたから
あたしも みゃあみゃあ ってへんじをしてやる
その迷い猫とも ご対面してみたいっておもう
どんな猫かな?
メスかな? オスかな?
毛の色や長さなんかもだいじだけど
だっこできるおおきさか のほうがだいじ!
そこんとこを 講義がおわったあと
のっぽで おっほんな教授のところに質問にいったら
なんだか 困った顔をされた
どこの手芸センターだか たずねたら
なんだか 戸惑った顔をされた
いいよ じぶんでしらべるもん
あたしはちかくのショッピングモールから
あたってみることにしたんだ
いそがねば!
どうやら 猫はほっとくと死んでしまうらしい
おなかがすいてるのかな?
缶詰とミルクを買っていこう
重なりあいがどうとかも言ってたよね
きっと 猫がはいっているのにきづかずに
段ボールが積まれてしまって
いちばんしたの段ボールのなかにいる猫は
出られなくなってしまったのだろう
まってて 猫!
あたしが 缶詰とミルクをもっていくよ
ひからびてミイラ猫になっていたときのために
ペットボトルのお水も買っていこう
軟水と硬水でまよったけど
やっぱり軟水だよね 猫 やわらかいもん
アルマジロやカブトムシなら 硬水にするべきかな
でも かちこちの猫はいやだ
セクシーに開脚しながら
けづくろいする姿が たまらなく好きだ
あぁ ねこ! ネコ! 猫ちゃん!
メスでも オスでも
毛の色や長さがどんなでも
だっこできるおおきさか さえもどうだっていい
なんだったら
もうミイラ猫になってたってかまわない
あなたに逢いたい
お陽さまのにおいがする そのおなかに顔をうずめたい
耳のうしろをかりかり なぜてやりたい
肉球をぷにって押して 爪がとびだすのを楽しみたい
ヒゲをつまんで ねもとのほうにおしこんでやると
ほっぺと目をひきつらせる表情が見たい
わきのしたからかかえあげて 高い高いしてやりたいし
もちあげるとき 下半身が によーんってのびて
ネコーディオンみたいになるのを見てにやにやしたい
あたしがにやにやしてたから
猫も にゃあにゃあにゃあ ってへんじをしてくれるはず
はやく ご対面してみたいっておもってたのに
手芸センターに着いたあたしが事情をはなして
段ボールをひとつずつあけてさがしたんだけど
猫はどこにもいなかった
まださがしたりないあたしに
手芸センターの店員さんは
「警察呼びますよ」なんて言ってきた
ご親切に ありがとう
でも 警察のひとの手をかりずに
あたしは あたしの手で 猫を助けだしてみせる
それでも やっぱり警察に電話をかけだした店員さんに
ありがとうを告げると
あたしはちかくのショッピングモールをあとにした
まってて 猫!
まだ きょうだけで何件かは まわれるはず
まってて 猫!
あたしがきっと みつけだしてみせる
しらべてみたら 手芸センターって たくさんあるから
まにあわなかったらごめんだけど
ひからびてミイラ猫になってても
ペットボトルの軟水をかけてあげるよ
あたしが 猫のいる段ボールを
ついにさがしあてたときがきて
ふたのしまったそのなかから
鳴き声のかわりに かさこそ うごく音だけがして
猫が元気なのか とっくにミイラ猫なのかは
あけてみるまでわかんなかったとしても
あたしは 勇気をもってあけてみるよ
それこそが
猫が元気なのか とっくにミイラ猫なのかを知る
たったひとつの方法なんだから
手芸センターの猫
この問題を解決する たったひとつの方法なんだから
手芸センターの店員さんが
いくら警察を呼んでくれたって
おまわりさんが署ではなしをきくからって
あたしをひっぱっていこうとしたって
いいえ けっこうです!
あたしは あたしの手で 猫を助けだしてみせる
まってて 猫!
メスでも オスでも
毛の色や長さがどんなでも
だっこできるおおきさか さえもどうだっていい
なんだったら
もうミイラ猫になってたってかまわない
まってて 猫!
あたしは あたしの手で 猫を助けだしてみせる
そう決めたんだ
犬も好きだよぉ。
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