表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
模造魔女の七変化(メタモルフォーゼ)  作者: 秋月志音
模造変身
4/49

模造変身②

 まずは魔法特区のこと――

 魔法特区は、魔女の育成に尽力している国家戦略特区だ。指定された地域までの守護の役割を持ち、全国各地に配置されている。それぞれに鳥の名前が当てられており、ここは『アイビス』という名がついている。

 魔力を持つ中高生の少女達が、各地の特区に集められる。そこで能力によって分けられ、それぞれの塔に所属している。

 魔女として成長した後は、バグの駆除や災害救助、テロ対策などを受け持つ『特務機関』へ配属される。色々な役割を担っているが、最も稼働しているのは、バグの駆除である。



 続いて魔女のこと――

 一部の女性のみが保持している、自然を超越した力、『魔法』を使える者が魔女と呼ばれている。

 一般人よりもあらゆる事柄で優遇されているのは、人類の敵であるバグに、唯一対抗できる存在だからだ。

 魔女は英雄として尊敬され、昔の女英雄にちなんで『ジャンヌ』と呼ぶ人もいる。

 バグを全て駆逐することは魔女の使命であり、大げさに言うと存在理由でもある。



 綾音からすらすらと出てきた情報のおかげで、ここまでは容易に理解できた。これは、彼女が人に説明するために染み付いている、常識的なものらしい。

 リーダーである彼女が、魔女として、さまざまな形で世の中に貢献していることが伝わってくる。


 彼女には、他の人以上の知識があるらしい。ひょっとしたら、何か美倉聖に繋がるものもあるかもしれない。聖は、もう少し掘り下げてみることにした。


 魔法特区、魔女と関連して、バグのことを知っておく必要がある。生きていく上での脅威だし、琥珀の発言も気になる。バグとは、魔女にとってどんな存在なのだろうか。



 バグ――

 バグは動物が突然変異し、魔力を有したものだと言われている。しかし、正しくは「意図的に変異させられた動物」である。遺伝子操作により生まれ、ホムンクルスまで生成されていた。

 一部の魔女と同じように――



 ……きな臭い話だと思った。それでも聖は、好奇心のままに思考への探求を続ける。



 ――魔法は元々、男性に武力で劣らぬようにと研究された超能力だ。女性にナノマシンを組み込むことで実現し、その遺伝子は子どもにも引き継がれていく。

 魔女は、もう一つの人類として、その存在を確立させた。


 しかし、実験に使われた動物たちが、手違いで野に放たれてしまった。『魔道動物』と呼ばれたそれらは、いつしか『バグ』と呼ばれるようになり、現在も人と魔女の脅威となっている。

 その過失が魔女にあったことから、バグの駆逐が魔女の使命になったようだ。


 それには、こんな説がある。魔法の危険性により、魔女の存在が危ぶまれた時代。魔女が世の中に必要とされるために、わざと魔道動物を解放したというものだ。

 

 現在でも、魔女を絶やさないように、様々な策が講じられている。人工生命体ホムンクルスの製造もその策の一部であり、バグの生成のみならず、魔女も作られているらしい。


 魔女の多くは、『ノルン』という研究所出身だ。魔女の自然な形での出産は少なく、それでも魔女を増やすために、体外受精によって出産するケースが多々ある。そうして生まれた魔女は、ノルンから児童養護施設へと渡り、そこで育てられる。

 その中に、ゼロから生成された魔女が存在するらしい。にわかには信じられない話だ。


 わざと脅威を造り出したり、人工生命体という神の領域を侵してまで、自らの存在価値を守ることは、果たして正義と言えるのだろうか。

 仮に、バグが今も誰かの手で作られているとしたら、その手を止めさせなければならない。魔女の使命は、バグの駆逐なのだから。


 もし、バグを全滅させることができたら、私たちはどうなるのだろう。それは、もしかしたら、仲間の首を絞めることになるのではないか――



 聖はふと我に返る。危なかったかもしれない。知識を捜索し、深く入ろうとした結果、彼女の感情が表面化していた。


 変身そのものに時間制限はないようだが、深層まで入ってしまうと、自分自身が変身していることを忘れてしまいそうになる。つまり、意識が乗っ取られそうになるのだ。


 さっきのような模造変身の場合、あまり思考を捜索せずに過ごしていても、数分で心がおかしくなっていくのがわかる。

 多分、限界で一〇分ほどだろう。おいそれと使える能力ではないのだ。


 聖は、一度少女の姿に戻った。この姿と少年の姿、あともう一つの姿だけが、先ほどのような乗っ取られる感覚のない、日常的に使用できる姿だ。それがなぜだかはわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ