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模造魔女の七変化(メタモルフォーゼ)  作者: 秋月志音
模造変身
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模造変身①

 ここがまだ特区内なのか、それとも一般市民の暮らす町に到達したのかすら、少年にはわからなかった。


 知らずに入ったということは、明確な境目がないということだ。特区は、いったいどのようにして、魔女とそれ以外の人を区別しているのだろうか。


 さきほどの場所から大きく離れ、少年はようやく一息ついた。追っ手はない。ここはマンションの裏門側にあたるからか、人通りの少ない場所らしい。


 魔女は恐ろしい存在だった。まさか、いきなり制裁されそうになるなんて考えもしなかった。

 このまま逃げるべきかもしれない。でも、魔女以外にあてはない。もう少し情報を集めないと、ここに来た意味がなかった。


 辺りに人は見当たらない。今がチャンスだ。少年はそっと目をつむった。

 一瞬の精神集中の後、少年は姿を変え、少年ではなくなった。


 ここに現れたのは、先ほどの魔女たちと同じくらいの年齢の少女だった。

 耳ほどのショートカットで、どこかボーイッシュな雰囲気こそあるが、曲線的な身体と小さく突き出た胸は、紛れもなく女の子の姿だ。


 このくらいの年齢の少女の姿は、特区の保護色と言える。しかも、先ほど綾音の着ていた制服も創造してみせた。これなら、ここがまだ魔法特区であっても、取り囲まれることはないだろう。


 『変身』。これが少年、もとい少女の能力だ。

 少女には記憶がない。あるのはこの能力だけだった。この力ゆえに、自身の本当の性別すらはっきりしない。


 名前は「美倉みくらせい」。

 これは自身の持つ唯一の個人情報だった。しかし、本当に正しい名前かどうかもわからない。


 少女の姿なら、注目を集めずに特区内を動き回ることができるだろう。


 いや、待てよ。その必要もないかもしれない。聖は、先ほど重要なカードを手に入れていた。


 再び人通りがないことを確認する。そして、今度は先ほどよりも強く、じっくりと精神を集中させる。手の感触と外見を思い出しながら、自身の奥にあるものを操作していく。

 すると、ふっと何かに入り込むような感覚が得られた。これが成功の感覚だった。


 赤みのかかった髪、小さな体。その姿は、綾音そのものだった。


 聖は、手の触れた人物に変身することができる。鏡を見て確認していないが、自身が綾音になっているのはわかる。なぜなら、今の聖は、綾音の脳までもコピーできているからだ。


 つまり、今の聖には、綾音の記憶や思考がわかるのだ。これがカードだった。


 先ほど聞いたところ、彼女は同年代のリーダーらしい。それなら、他の人よりも良い情報が期待できる。聖にとって、彼女に手を差し伸べられたのは幸運だった。


 綾音の思考を探る。魔女や魔法特区など必要な情報のみで、個人のプライベートを覗くつもりはない。こんな方法で、人の心にずけずけと入り込むのは気が引ける。あくまでも情報だけだ。


 それに、脳にある情報とは、それほど自由に出力できるものではない。何かがきっかけで、ふと露出することはあるが、思い出せないこともあるし、連想ゲームのように引っ張り出されることもある。

 常に意識の中にあるものなんて限られている。だから、探れる情報にも限界があるのだ。


 聖は、自分の知りたい情報を綾音の脳に求めた。

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