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夢の中

 登校。紛れもなく7年前だと、カナタは高く見える石の塀を眺め思う。高校生くらいになると、その塀を上から眺められる。だが、今は目線よりも高い位置に上面がある。


(いつ覚めるんだ、この夢は)


 周りの人々の持ち物が明らかに古い。行く人たちはガラケーを持っている。潰れたはずのコンビニがある、通学路に空き地がある。何もかもが懐かしい風景が広がっていた。


「おぉ、カナタ氏! カナタ氏〜!」

「うっ、ううっ……!? この声は!」


 カナタは聞きたくない単語を聞いた。


(――カナタ氏、か)


「コウタ……」

「なははは! カナタ氏は今日もクールでござるな! さてカナタ氏! 昨日の『キュヌルプガールズ』は見たでござるか!?」

「……覚えてないよ。そんな昔の話」

「ぬ? そういうキャラ設定なのですか?」



 ――カナタの前に現れたのは、彼にヲタク学を伝授したコウタだった! 丸坊主メガネのコウタは、とにかく他人に避けられるような言動などをすることが多かった。例えば――。


「そんなことはどうでもいいのですぞカナタ氏! 今日はこの漫画を貸すであります! ドュフフ展開の多いエッチな漫画でありますぞ!」

「うえ、丸出し少女……! 確か、俺の見た初めてのエロ漫画……!」

「この子が拙者の推しであります! ここの太ももを見てくだされ! モッチモチのフコフコですぞ!」


 なんて、コウタは大きな声で言うのである。


「コウタにぃ……気持ち悪いよぉ」

「クオン氏! あぁ、そんな目をしないで欲しいであります! うっひょぉ!」


 俺の隣を歩く妹のクオンの目が冷ややかな視線をコウタに寄せるが、エロ本の持ち主はその視線が大好物である。彼はその冷凍ビームのような視線を受け、全身で悶えて見せる。


(昔からコウタはドMだからな……。頼むから、クオンには悪影響を与えないで欲しいものだ)


「その漫画は……借りないことにするよ」

「何?! カナタ氏が好みそうな近親相姦モノですぞ!?」

「ばっ、うるせぇ! 要らないって!」


 カナタはコウタの桃色の本を押し返す。カナタからすれば既に過去に読んだものであるし、堪能済みだ。


「ツレないでありますなぁ。どうしたでござるかカナタ氏? 今日は喋り方がヲタ語ではありませんな?」

「やめたんだよ、そういうのは! コウタもちゃんとした言葉で話すように! いいか?」

「えっ……カナタ氏?」


 カナタはコウタの寂しそうな表情を見る。


(俺はもう既に脱ヲタしたんだ!)


 カナタは拳を握りしめ、通学路を歩く。

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