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プロローグ:どうでもいい子の葬式

初投稿です。

よろしくお願いします。

 ◆


 カナタは残酷なほど冷静でそこに居た。


 中学生の時に同じクラスになったことがある女の子が死んだのである。場所は葬儀場。煙たい線香の香りが鼻を摩り、カナタの肺は少しだけ熱くなる。


 カナタは彼女の遺影を前にして、揺らぐ蝋燭(ろうそく)を眺める。彼女の死を悲しむ涙がこの場の空気を柔らかく湿らしている。カナタはこの悲しげな雰囲気のど真ん中にいるのだが、全く涙は出なかった。


 カナタは、彼女を取り巻く人間のことが(すこぶ)る嫌いだった。彼は、彼女の周りにいる人間から虐められていた。彼女はカナタを虐めることはしなかったが、虐めを止めてくれる素振りを見せなかった。よって、この子に対して思う感情は、全くもって皆無だった。


 カナタ――本名は、福丸奏多(ふくまるかなた)。皆からは、カナタと呼ばれている。現在高校三年生、大学受験に向けて勉強をしているごく普通の高校生である。ステータスなどは全てが平均値以下で、唯一自慢できるのは学力くらいだ。コミュニケーションが少し苦手で、女子と話すのが苦手。だから、特に誰かと付き合う事もなくここまで生きてきた。


「瀬良氏が死ぬとは思わなかったなぁ、カナタ氏?」


 隣にいる男がカナタに話しかける。カナタの大親友の赤松康太(あかまつこうた)だ。コウタも、カナタと同じく虐められっ子だ。友達と呼べる人物は、人生において(コウタ)しかいない。


「コウタは泣かないのか? 中学の時に好きだった子だろう?」

「昔のことであろう。加え、拙者たちみたいなヲタクに振り向いてくれるわけなかろうぞ?」

「ヲタク……まぁそうだな」


 カナタとコウタは、小学生低学年の頃からかなりヲタッキーで、俗に言うイタい奴だった。だからこそみんなからは偏見を持たれてきたのだが――。先日、カナタは脱ヲタを決め込んだ。現在は二次元の女の子を見ても鼻の穴をヒクヒクさせないようにしている。


「しかし可哀想よな、瀬良氏。自殺らしいの」


 コウタは腕を組みながらそう言った。まるで人事(ひとごと)だ。同級生が死んだというのに、どうしてここまで無頓着でいられるのだろう――とカナタは静かに侮蔑(ぶべつ)する。


「らしいな」


 カナタもコウタと同じく、死に対して微塵も興味はなかった。どうして同級生の女子が自殺したかなんて知る必要はない。他人の人生が断たれた事実に対して目を向けるよりも、今の自分の人生設計をすることの方が有意義な時間を過ごせる。だからこそ、カナタからすれば『他人が死んだ』ことは本当にどうでも良かった。


「のぉカナタ氏。久しぶりに再開したのだから、カナタ氏の家でゲームをしたいのだが、よいか?」

「ちょっと無理かな。帰ったら勉強しないと」

「ぬぉ! なるほどですなぁ。東大を目指すお方に誘惑を与えてしまいかねぬ。すまぬカナタ氏」

「いいんだ。とりあえず、葬式が終わったらカフェに行こうぜ。俺もお前と話したいし」

「よいのか?」

「うん。1時間くらいだけどな」

「おお! では、メイドカフェはどうだカナタ氏! 猫耳コスイベが来ておるのだ!」

「普通のカフェに行こう」

「ぬん。つれないではないかカナタ氏」


 カナタは暇そうに欠伸(あくび)をしながら、遺影として飾られている瀬良の美しい表情を眺めた。瀬良は美しい少女だ。しかし、カナタは絶対にこの人とは関わらないようにしてきた。


 ――瀬良は死んでも差し支えない人、それくらいにしかカナタは思ってない。

読んでいただきありがとうございます。

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