ことば
細胞は
隅から隅まで透き通り
その膜の絶対なよわみを
さびしそうにゆってる
真空管の底で
世界がさんざめいているの
そういうたぐいの希望を
信奉している
ことば
とはあたらしいもの
二度と口をついてでない
つねにあたらしく在りつづけることばが
将来に変質する
真空管の中
さびしそうな羽だけが実態
世界がすべてでないのは
ひとに内部があるから
外部はくすんだ色でたたずむだけ
わたしは朝凪に震える
延長線上にあった
いのち
という概念の空に
よわい繋がりの世界が在る
宇宙があたらしくなる
そしていのちも将来へうごく
ことばはまるっきりあたらしく
さんさんといのちを照らす
わたしが在るのは
わたしということばが在るから
すべて見透かすような光りは
かならずしも
真空管の中ではない