表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/139

第7話 勇者パーティーと鉢合わせた


「依頼完了の報告に来ました」


 たまたま静まったギルド内にリーダーの言葉が響いてしまった。

 こっちを見てる他の冒険者の視線を、上から目線で返してあげるわ。


 昨日いらない子扱いした私が、早くも立派に依頼をこなして帰ってきたのよ。さー残念がるといいわ。


「はい、猫ちゃんの捜索ですね。依頼主からも先ほど依頼完了の報告がありました、お疲れ様です」


 ちょっとちょっと受付のお姉さん! 声がっ声が大きいって!


「はいこれが報酬です。猫ちゃんの捜索の!」


 わざとやってるでしょこの人!


「プ」


 おい誰だ今笑ったの。

 笑ったパーティーには漏れなく私が加入してあげましょうか?


 ササッと皆が視線を外して完全に知らないふりをしだしたようだ。

 何人かが帽子を深く被って頭の資源を防衛しているのは、私が髪の毛を毟る無慈悲な魔女だというデマが浸透している気がしてならない。遺憾である。


「あっはっはっは! 猫の捜索だってよ! ザコ女にぴったりの仕事じゃないか」


 ギルド内に響き渡るその声は、後ろから入ってきた勇者パーティーの剣士だ。

 その後ろからも勇者ご一行様が続いている。


「やっぱり役立たずのクズはクズなりの仕事がお似合いだな」

「全くだ、なあアレンタ」

「フフ、そうだね」


 あーイラっとする……でも何も言い返せない、役に立ってなかったの本当だもんなあ。とりあえず隙を見て背中の服の中にカマキリでも。

 カマキリだかクワガタだかが落ちていないか、きょろきょろ見回していると。


「おい、猫ちゃんの捜索依頼を取ってきたのは僕だよ、彼女は関係無い」

「ああ? なんだてめーは?」


 ちょっとちょっとリーダー、だめだって、それ勇者パーティーだから。

 私との間に庇うように割って入ってくれたうちのリーダーモブ男君、ちょっと嬉しいんだけど相手が悪すぎると思う。


 ここは私がカブトムシを見つけるまで我慢の一手だよ。

 あ、クワガタ発見! ああっ逃げられた!


「うちのパーティーメンバーを侮辱するような事は言わないで貰えるかな」

「う、なんだあこいつ、うぜーんだけど」


 堂々と睨みつけてるリーダーに、向こうの剣士さまがちょっと後ろに引いた。

 おおっちょっとカッコいい、これがパーティーの責任者の姿か。おいそこの優柔不断な勇者君、よく見とけ、君に足りないのはこういう所だぞ。


「そうだブヒ、うちのモブパーの姫は可愛いんだブヒ。足もすらっとしてて可愛いんだブヒ」


 台無しである。

 モブパーの姫って何ですか、新しいオタク用語かなんかですか、私いつから姫になりましたか。


「はいはい皆さん、ギルド内での刃傷沙汰は奉仕活動一ヶ月ですよ」


 パンパンと手を叩きながら皆の気を散らした、受付のお姉さんの声でようやくその場は収拾した。よく考えたらお姉さんのせいでもあるんだけどね。


「大丈夫? あの連中相手に無茶しすぎだよ。でもありがとう、ちょっと嬉しかった」


 話しかけると『リンはむしろ被害者だよ』と言ってモブ男君は笑った。

 なんというか、ここでその笑顔はずるい。


「いくら美味しい依頼を僕に取られたからって、嫉妬してリンに八つ当たりとか許せないと思った」


 いえ、それはびっくりするくらい全く関係無いと思います。美味しい依頼だなんて誰も思ってませんよ。


「姫の足を愛でる権利はもうこっちの物になったんだブヒ」


 ちょっとあなたは黙っててもらえますかね。


「あ、あの」

「はい?」


 声をかけられて振り向くと、銀髪のキラキラしたロリっ娘美少女がそこにいる。

 なんだ告白か、よしOKだ。


「リンナファナさんですよね、わたしずっとファンだったんですよ。あ、私コムギと言います。今度新しく勇者パーティーに入れて頂きました」


「おい、コムギ。そんなクズと話をするとお前にもクズがうつるぞ、さっさとこっちに来い」

「え? は、はい。それではまた」


 呼ばれて勇者パーティーの元に走る少女は、どうやら私の後任らしい。ってか私は病原菌かい。


「あーどっかのザコパーティーと違って、俺たちはこれから〝早世寺院(そうせいじいん)〟に潜って、ちょっと稼いでくるとしますか。どこかの誰かさんは猫のお金で飴玉でもしゃぶってればいいよな」

「あはは、疫病神がいなくなったのでこれから稼ぎまくるぞー」


 勇者パーティーが高笑いをしながら外に出て行くと、近くにいた冒険者のオッサンが私の肩を慰めるように叩いた。


 乙女の身体に気安く触らないでもらえますかね、あなたがさっきその手で鼻を穿ってるのを目撃してるんですけど。ええ、この目で見ましたとも。


「まあ気にするな、猫の尻拭きだって立派な仕事だ」


 そんな仕事は請けてませんよ!

 まるでカッコいい事を言ったような感じで親指を立てているけど、あなた昨日私の賭けで稼いだお金でソーセージくらい奢りなさいよ、私にだって貰う権利くらいあるわよね。


「リン、今からどうしようか。時間余ったし別の仕事を探そうか」

「私だってソーセージくらい……」


 私の呟きを聞いたモブ男君は、私の顔をじっと見て。


「そうだね、僕たちも行ってみようか〝早世寺院(そうせいじいん)〟に。言われっぱなしなのも癪だしさ、僕たちだって猫の尻拭き以外の冒険も出来るんだって証明してやりたい」

「まあ、いいでしょう」

「賛成ブヒ」


「ちょ、ちょっと待ってよ、猫の尻拭きじゃないでしょ。いやそんなのどうでもいい、〝早世寺院〟って高ランクダンジョンだよ? 何でそんな話になったの?」


「よし、リンの希望どうり、僕たちも〝早世寺院〟へ出撃するぞ!」

「「おおー!」」

「え? 何? 何で? 私? んん?」


 で、やってきました〝早世寺院〟入り口。

 ここは王都の近くにある地下迷宮で、ベテラン以外受け付けない高ランクダンジョンである。


 ダンジョンのモンスターは常に狩って数を減らす必要がある為に、正式にギルドから討伐依頼が常に出ている常時求人案件でもある。

 しかしその名の通り、未熟な若者が挑むと早死にしまっせ、という恐ろしい場所なのだ。


 そのおっそろしい場所の入り口で私はポカーンと立っている。


 何で私、今からここに潜る事になったの?

 くっそやばいモンスターとか出てきたらどうするの?


 次回 「あらやだ、魔物が何故か自滅したわ」


 リン、くっそやばいモンスターに出くわす


 モブパーティーいよいよ始動です



 面白かったらブクマ、評価、感想その他お待ちしています!

 明日は二話投稿します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ