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第6話 パーティーに取り憑いていた何か


「ご、ごめんね。ほら寝ぼけてたからさ私」


 新パーティーメンバーたちと町の通りを歩いている所だ。しくじった、マジでリーダーのモブ男君がわからなかった。


「あははいいよ、僕もたまに実家のお爺ちゃんに、『あんた誰?』って聞かれてたからさ。そういうの慣れてるんだ」


 いやそれ、お爺ちゃんボケ的なアレなんじゃないのかと。十七歳の乙女とお爺ちゃんのアレを同列で語るの、やめて頂けませんか。


 とそこで急に立ち止まったメガネ君の背中にぶつかってしまった。


「な、何?」

「おやこれは珍しい。ハコブエの葉の先が少し割れているのを発見しました。実に興味深い」


 え? 何、雑草? これって私が昨日危うくモリモリ食べそうになった草だよね。


「ほら、葉の先が希少でしょ、これは十本に一本の確率で現れるとても希少な葉なのですよ。早速ノートに記載せねばなりません、因みに食べたらお腹がピーになります」


 うわー、モリモリ食べなくて良かったー。


「うん、あの時はトイレから一日中出られなかったブヒ」

「とても悲しい体験でした」


 この人たち食べちゃってたぁ!


 それに十本に一本なんてそんなに凄い確率でもないし、特に希少でもなんでもないじゃないの。何このゆるーい感じ、そう言えば昨日もモンスターにこんな微妙な事を言ってたっけこの人。


「ねえどうして植物なの? あなたモンスターオタクじゃないの?」

「いえ、私はノートに記載するのが好きな、几帳面なだけのただのモブメガネですが」


 自分でモブって言っちゃったよこの人。


 今のそれ、メガネくいっとしながらもったいぶって宣言する事じゃなかったよね。何でドヤ顔なのか意味がわからない。

 そうか、この人たちはモブだったわ。モンスターオタクなんていうはっきりした特徴なんか、装備してるわけがなかったんだわ。


「き、今日はどうするのかな」


 気を取り直して今日のパーティーの予定を尋ねる事にした。


「うん、今日は実は朝一で冒険者ギルドに行って依頼書を取ってきたんだ。リンナファナさんにも相談したかったけど、朝早く行かないといいのを取られちゃうからね。勝手にしてごめんね」


「別にいいんだけど、取ってきてくれれば私も楽だし。それと私の事はリンでいいわよ、私も略してモブ男君とかモブ太君とか呼んでるし」


「それ全然略じゃないよね」

「モブタ。可愛い女の子から豚呼ばわりなんて、ちょっとご褒美感がするブヒ」


 ひいい、そんなつもり無かったのに、モブ平にしようかな。


「で、どんな依頼を取ってきたの?」

「いいの取れたんだよ! 朝早く並んでギルドに突入した甲斐があったよ。こういう優良依頼は、速攻で無くなるに違いないからね」


 そう言ってやり遂げた感のニコニコ顔で出された紙には。


『うちの猫ちゃんを探してください』


 こんなもん、誰も取らないわよ!

 もしかして何か依頼に裏事情でもあるのかと、紙の裏とかも見てみたんだけどただの迷い猫の捜索である。


「ああ、またこの猫ですか」(メガネくいっ)

「知ってる猫なの?」


「メーデン子爵んちの猫なんだけどさ、しょっちゅう脱走してそこのお嬢様が涙目で探す事が多いんだよ」


「これがすばしこい猫でなかなか捕まえるのが大変なのです。どれ、前回捕まえた時に前脚を舐めた回数をノートに記載していましたので、是非参考にしてください」


 悲しいお知らせですが、その情報は全く参考になりません。


「ふーん、白と黒のブチ猫かー。例えばこの子だったりして? そんなわけないか」


 たまたま目の前の塀で寝てた猫を抱き上げてみる。そんな幸運が転がってるわけがない。


「なるほど、依頼完了ですね」

「凄いよリン! さすがは第一線パーティーで冒険してた冒険者だね!」


 やめて下さい、そんな羨望の眼差しで見つめるのはやめて下さい。

 いくら私でもこれでドヤ顔は悲しすぎてできないから。


 私の新しい仲間との記念すべきわくわく満載の冒険の第一発目は、猫探しだったよ。

 いやいいんだ、ここから少しずつ冒険のレベルを上げていくんだ。


「猫ちゃーん! ああ! 私の猫ちゃん! ダメですよ猫ちゃん、また勝手に家出して」


 突然登場した子爵家ご令嬢に猫を渡すと、彼女はお礼を言って去って行く。いや、名前付けてあげましょうよ。相変わらず王侯貴族はちょっと苦手だ。


「ねえ、普段どんな活動をしてるの?」

「迷子の猫探しに犬探し。薬草とか木の実とか徘徊してるお爺ちゃんの収穫。たまに格安護衛任務かな」


「モンスターは? 討伐とかダンジョン探索とか、ほら冒険者的なアレコレは」

「ごくごくたまーに遭遇したモンスターと戦ったりはするよ」


 なるほど、Eランクパーティーは伊達じゃないって事だ。

 なんだろうか、実に私にぴったりすぎて笑えてくるんだけど。


「それと興味深い事のノートの記載ですね」

「フィギュア収集ブヒ」


 あなたたちの個人活動は聞いてませんから。



 とにかく依頼完了を報告する為に、冒険者ギルドに向かう事にした。じゃないとお金が貰えないのだ。

 途中で占い鑑定師の屋台の横を通り過ぎる。ここ良く当たるって評判なんだよね。


「僕たちもパーティーを見て貰った事があるよ。ことごとく運に見放されたモブパーティーって鑑定されて、凹みまくったんだよね」

「ええ、あれはちょっとしたトラウマになりましたね」

「三日くらい引き篭もったブヒ」


 まあ、私を拾ってる時点で、それは間違いなく事実だと思います。


 そういえば勇者パーティーも占って貰った事あったっけ。

 その時は幸運の女神だかなんだかに、取り憑かれてるパーティーと鑑定されたんだよね。


 取り憑かれてるって何よ。

 何がパーティーに取り憑いてたの?


 次回 「勇者パーティーと鉢合わせた」


 リン、何故かダンジョンに行く事になる

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