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第47話 私を食べても美味しくないですよ?


「くそ、貴様ら人間ごときに……」


 あ、悪魔しぶとい。そのままノックアウトされとけばいいのに。

 フラフラと起き上がろうとした悪魔を、一斉に飛び掛った我がパーティーの男衆がボッコボコにする。


「女の子たちを食べようなんて、とんでもないヤツだ」

「女の子の足は食べるものじゃなくて、目で見て愛でるものブヒ!」

「肉体があるから骨格が見れるのですよ。お肉を食べて骨だけになったら、透明になってしまうではありませんか」


 モブ男君以外アウト!


「ねえリンナファナさん、この人たちは何を言っているのですか?」

「世の中には気にしてはいけないものが沢山あるのよ」


「リンー! 大丈夫だった?」

「ありがとう、フィギュアちゃんも無事だったね。その長いトゲは何?」


 フィギュアちゃんが十センチくらいの長さのトゲを握り締めていたのだ。


「さっき飛んで行った先の胸ポケットにいた、先客のフィギュアの子が持ってた武器だよ。貸してもらったんだ」


「魔法少女メイプリーちゃん最終形態ウエポンの伝説の槍、ボンバーガンガーファイアーグングニなんとか剣だブヒ」


 長いわ! 途中で名前うろ覚えになっちゃってるじゃないの。

 それに槍だってのに剣とか言っちゃってるし。オタクの人ってそういうのキッチリカッチリ覚えてるものじゃないの?


「そこがエリートオタクとモブオタの差なんだブヒ」


 そんな悲しい格差は聞きたくありませんでした。


「リンが食べられたら、一緒にお腹の中に入ってこれで嫌がらせをしようと思ったんだよ」


 なるほどそういう魔物の倒し方もありか。今後の参考にしたい所だ。


「それにしてもやっぱり凄いですね、リンナファナさんのパーティーは。悪魔を倒しちゃうんですから!」


 いえ、ぶっ飛ばしたのあなたですから。


「私のパンチなんて、孤児院時代に培った理不尽な暴力に対するカウンターでしかありませんから、そんな威力無いですよ。あの悪魔は何かの理由で弱体化していたんじゃないですか?」


「勇者や剣士をボコってたのに?」

「あれはポンコツですし。その辺の猫でも泣かせられますよ」


 まあ実際に、アレンタ君は猫に泣かされてたけど。


「しかし何でこんな場所に悪魔がいたんだろうか」


 悪魔なんて危険な物体は、そう気軽にぽんぽん出くわしていい代物ではないはずだ。


「悪魔族はどこかに砦を持っていて、そこを拠点にして活動していると聞いた事があるよリン」

「ここまで出張でやって来たとか言ってたブヒ」


 わざわざこの山までやって来たって事?


「そういえば悪魔族は契約で行動すると聞いた事がありますよ」


 契約……ね。ロリっ娘ちゃんの言葉が何かひっかかる。

 悪魔が何かを契約している?


 なんだろう……この背筋がぞわっとする感じは。


「その背筋がぞわっとするのは、あれのせいではないですか」(メガネくいっ)


 メガネ君が私たちの後ろを指さし全員で振り向くと、そこにそいつはいた。


 そうである。凶悪な悪魔はうやむやのうちに倒したけど、私たちの目的は別にいるのだ。

 そしてその目的は今、私たちの目の前で牙を剥いていたのだった。


 ここはドラゴンの山、出て当たり前という話である。

 そう、私たちの目の前にやつが出てしまったのだ――


「出ました! こいつがドラゴンです!」


 ロリっ娘ちゃんの声を聞きながら、私たちはその大きな怪物を見上げる。

 それは真っ黒な身体に金色に光る目を持っていた。これはなんというか――


「私にはくそでっかい猫にしか見えないんだけど」


「キャットドラゴンですよ、リンナファナさん! 普通のドラゴンと同じく、強戦闘力に強防御力を備えたバケモノです! 猫のしなやかさを持っている分、トカゲよりやばいです!」


 良く見たら背中に翼があるわね、あー飛んでる飛んでる。ついでに私も飛んでいる。

 現在私は空中散歩を楽しんでいる最中だ。ドラゴンに咥えられて、山の上を飛行中なのだ。


「リン!」

「リンナファナさん!」


 下から悲痛な仲間たちの叫び声が聞こえる。


 あはは、こんなのもう泣くに泣けないよ、むしろ笑える。

 悪魔(の飼う家畜)に食われそうになったと思ったらドラゴンの口の中なのだ。あはは、あるある、いやねーよ。


 ドラゴンはロリっ娘ちゃんではなく私を咥えた。

 クソ悪魔の味覚では私は十三歳に遅れを取ったのだが、ドラゴンの味覚では私が美味しそうだったのだろう。私は十三歳の若さに勝利したのである。イエーイ。


 いやこれ喜んでる場合じゃないのか、でも喜ぼう。ロリっ娘ちゃんが食われるくらいなら、私が食われた方がよほどマシだから。


「リン、私もお供するよ」


 私の胸元でフィギュアちゃんがトゲを握り締めて私を見つめていた。

 なんちゃらボンバーなんちゃらって武器だっけ、覚えられないからトゲでいいやもう。


 さっきのモンスター退治の新方法を、早くも試す時が来てしまったのか。


「私が食べられている間に、お腹に入ってできるだけ暴れてもらえるかな」

「うんがんばる!」


 もちろん怖いよ。でもこれで子供たちが食べられる事が無くなるのなら、食べられ甲斐もあるってものよね。後はフィギュアちゃんに任せた!


 キャットドラゴンは山の頂上付近に到達し、私を下ろした。


 さあ来い!

 と、一旦消えたドラゴンがすぐに戻って来て、私の前に木の実を転がす。それはキスリンゴの実である。


 これを食べろと? さては太らせてから食べるつもりかな。この知能犯め!

 太っているかの確認の時に木の棒を握らせて、いつまでも痩せている偽装をかましてやろうか。


 でもこいつ、なんだか見覚えがあるのよねえ。

 妙に親しげなこの感じ、私にオヤツをくれるこの感じ、どこかで――


「あ、あんた、もしかして私の村でいつもオヤツを持ってきてくれたあの猫なの?」


『ミャア』


 ドラゴンが鳴いた。


 実際には『ミャゴオオオオオオウゴオン』という恐ろしい地響きだったけど、鳴き声の衝撃で私とフィギュアちゃんが吹っ飛んだけど、乙女と猫ちゃんの会話なので脚色は必要なのだ。


「随分大きく育ったわねえ、確かに背中にそんな翼が生えてたっけ、珍しい黒猫だとは思っていたのよ。たまに火とか吐いてたしね」


 私が不思議な再会に戸惑っていると。


「リンナファナさん!」

「無事かリン!」


 皆がその場に駆けつけてくれた。全速力で駆け上がってきたのだろう、全員肩で息をしている状態だ。


「心配かけてごめん」


『グルルルルルルルルル』


 ドラゴンが立ち上がり仲間たちを威嚇すると、パーティーメンバーも一斉に武器を構える。


 一触即発の状態になった。


 ど、どうすればいいのこれ?


 次回 「ドラゴンVSモブパーティー」


 リン、ふふキレちまったぜ屋上へ

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