第37話 勇者パーティーに見つかった
やっばー! めっかっちった! 勇者パーティーに見つかってしまったよ!
「リン! 見つけたぞ!」
「リン? 何の事かしら。もしかしたら私の二つ年上の生き別れの姉の事かしら。私はロン、一四歳だけど?」
「てめー、何若返ろうとしてんだよ」
「本来の年齢とも計算が合わん」
「さば読んだね」
「うるさいな! 一歳くらい多めに見てよ!」
さて今日もいい天気で冒険日和よね。
あー清々しい朝だ事。
「待て!」
見つかった事を気のせい、無かったことにして逃げようとした私の腕を剣士が掴む。
「やだあああ! いやあああ! いやだあああ!」
このまま取っ捕まったら埋められて沈められて平定されるのだ、私も必死である。
「そんな全力で嫌がるなよ、ちょっとガラスのハートが傷つくじゃねーかよ。ゴミとか言って悪かったよ、ほら飴ちゃんやるから機嫌直せって」
私は子供か! 飴でほいほいついて行って処刑されてたまりますか!
「リン! どうかここはひとつ!」
魔術師が私の前にひれ伏した。
何でこの状況でスカートの中を覗こうとしてんのよ!
「ただで見せるか!」
「金か? そうだよな、俺たちお前を殆ど無一文で放り出したんだもんな。何も持たせてやらなかったもんな」
うわー皮肉かまされた、暗に高級酒と壷持って行きやがってこの野郎って怒ってるよこの人!
買って返すから見逃してよ! 出世払いでいいかな? 十年以内には返すからさ。
「それよりもあの子はどうしたの? 私の代わりに入った子を昨日から見てないんだけど。ま、まさかあんたたち……あの子も埋めたんじゃないでしょうね」
「あの子? ああ、コムギか」
そうそうコムギちゃん、そんな名前だったね。
「あのクソガキがどうしたって?」
「埋めるとか何の話だ?」
「コムギがリンの穴埋めにパーティー入りした事を怒ってるのかな」
ひいいい! やっぱり埋めてやがった!
ロリっ娘の横に私も埋められるううう。せめてロリっ娘を私の上にしてくれないかな、抱き枕にするから。
「私の事をこんな村まで追いかけてきて、ストーカー行為は犯罪なのよ。まだ間に合う、だからこれ以上の悪事はもうやめて自首して」
「とんだ言いがかりだよ。僕たちはたまたまこの村に小麦を売る商人の護衛に来ただけで、リンのストーカーをしていたわけじゃないよ。そもそもリンが後から来たんじゃないか」
コムギちゃん、埋められた上に売られてしまったのね。
「リン! 僕たちはリンにパーティーに戻って来て欲しいんだ」
「パーティーの予算で、お前が食べたい物を食べさせてやるから」
処刑執行の前に好きな物を食べさせてくれるってやつか、冗談じゃない。
「嫌よ! あなたたちの悪の予定は把握済みなのよ!」
昨日の夜の相談は私のトラウマになりかねない。この運命を全力で回避するのだ。
「悪の予定って何?」
「アレンタ君が私を悪魔(王子)に売って、切り刻んだ後で海に沈めて地面に埋めて、出てこれないように重しを置く計画だよ!」
あ、アレンタ君たちが面白い顔になった。
私の村のハニワ君人形だ。
「なんだなんだ、女の子が酷い目に遭わされようとしてるぞ」
「こいつら勇者パーティーじゃないのか、とんでもねー計画を立ててるな」
「人として死ねばいいのに」
「ぺっ」
あ、アレンタハニワ君が泣いた。
「リン! 今のうちに、こっち!」
私はモブ男君たち三人に、小脇にかかえられその場から脱出。
もちろん鼻ちょうちんを膨らませて呑気に寝ていた、フィギュアちゃんと唐草模様の手ぬぐいも回収済みである。
村を出て勇者パーティーから逃れる為に必死に歩いた。通常の三倍の速度は出ていたと思う。
二時間くらい進んだだろうか。
「そろそろ疲れてきましたね」(メガネくいっ)
「ひいふう、もう疲れたブヒ。何もここまで姫を抱えていなくても良かったんじゃないかブヒ」
あらとうとうその秘密に気付いてしまったのね。とてもラクチンでございました。
「あはは、リンは軽いからね、ついここまで運んでしまったよ」
「リンさんの頭蓋骨を間近で観察できて、とても心温まる有意義な時間でした」(メガネくいっ)
「姫の可愛い足を二時間も抱えて堪能できたのは、神からの贈り物だったブヒ」
ごめんなさい今すぐ降ろして下さい! 自分で歩きますから!
「この先に村があるからあそこで休もう、まだ朝ご飯も食べてないしね」
「えっさ、ほいさ」
だーかーらー! おろしてええー。
村に着いた、そこは小さな村だ。あ、第一村人発見。
運び込まれる私を見て、第一村人が慌てた様子で賭け寄って来る。
「急患ですか? 診療所はあちらですよ!」
「ごめんなさい、ただの愉快なお御輿なので気にしないで下さい」
ほらあ! 第一村人にぽかーんとされちゃったじゃん!
「面白い移動方法ですね、冒険者って変わってますね」
冒険者は頭がおかしい、ええ、否定しません。
「すみません、この村に朝ご飯を食べられる所はありませんか?」
リーダーのモブ男君の問いに、遭遇した第一村人は中央に見える一軒のお店らしい建物を指差してくれた。
「あの建物の中の右が朝に朝ご飯を食べられる朝ご飯屋ですね、真ん中が昼に昼ご飯を食べられる昼ご飯屋で、左が晩に晩ご飯を食べられる晩ご飯屋です」
要するに食堂でしょ、統合しなさいよめんどくさいな!
この村もちょっと変じゃないかな!
まあ細かい事はこの際どうでもいいのだ、とにかく現時点での最重要事項は朝ご飯なのだ、なので自然の摂理に従って私たちは食堂まで直行する。
「えっさ、ほいさ」
だからーおろしてええ!
食堂の前でようやく降ろしてもらった私は、さあメシだ! とそのドアを開けた。
「ごめんくださーい、朝ご飯やってますか?」
「はあん? うちが朝ご飯屋に見えるのかお嬢ちゃん」
知らねーわよ!
「全員同じ割烹着を身に付けてるんだもん、わかるわけ無いでしょ。朝・昼・晩と分けてよ」
「俺は客だ」
お客さんまで割烹着ぃ!
紛らわしいわよ! 朝・昼・晩・客と分けてよ!
「まあまあリン、こっちで朝ご飯を食べよう」
ぷんすか怒っている私を、モブ男君が小脇に抱えて建物内の右端に移動させてくれる。
「へいらっしゃーい!」
元気に出てきたおじさんも、当然のように割烹着姿だ。
「あなたは朝ご飯屋さんでいいのよね?」
「はあん? 俺が朝ご飯屋以外に見えるってのかお嬢ちゃん」
だから知らねーわよ!
「……もう降参するから、朝ご飯用意してよう」
朝から立て続けにつっこまされて、もうお腹が空いて力が出ない。
私はまるで空気の抜けた風船のようだ、これではフィギュアちゃんも運べない。
勇者パーティーから逃げ切って、私は割烹着に敗北したのだ。
「ほいよ! 目玉焼き乗せトーストにソーセージとコーヒーおまちぃ!」
あー美味しい~生き返るー。
やっぱり朝はちゃんと食事を取らないと力が出ないわね。
「おうオヤジィ、朝飯一発キメてくれや」
「あいよ!」
「あら、普通に普段着のお客さんも来るんじゃないの」
「はあん? 俺は昼飯屋だが?」
「割烹着着てろよ!」
補充した朝食パワーをいきなり消費させられたわね!
おかわりを要求します!
次回 「国がポンコツ化しつつあるらしい」
リン、村長からやばい危機を相談される




