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第33話 あらやだ、コカトリスがコカってしまったわ


 私が立てた作戦とはこうだ!


 メガネ君が岩の後ろからコカトリスの動向を監視。

 それを窃盗隊、じゃなかった決死隊の私に手旗信号で知らせる。


 その合図により決死隊は岩から岩へと近づいていって、玉子をゲット。

 玉子をゲットする時は、モブ男君たちが音でコカトリスの注意を牽きつける。


 その為には私はうまくコカトリスの後ろに回りこむ形で、岩から岩に進むしかないわけだ。

 まあ、鳥の死角は真後ろぐらいだから、結局後ろに回りこむしかないんだけど。


 本当は私がメガネをかけて行動した方が早いんだけど、あの透視メガネはメガネ君専用アイテムみたいで私には使えなかった。

 でも使えていたら三人のガイコツを見る羽目になって、とても嫌な物を見たと慰謝料を請求する事になっていただろう。


「靴には音を出さないように手ぬぐいを巻いた方がいいね」


 モブ男君に指摘されて頭の盗人スタイルを解除、花柄の手ぬぐいと元々持っていた手ぬぐいを両方の靴に巻きつけた。


 なんだろう、今から窃盗に行くのに頭にほっかむりが無いこの心細さは……甲冑無しで(いくさ)に赴くみたいな気分だ。

 心が、心が寒いんだよ……


「信号に使う手旗はその辺に落ちてる棒でいいわよね。手が岩から出ないように、とりあえず長いのが二本必要と。旗をどうしようか、ハンカチは一枚持ってるけど、もう一枚は何かあるかな」


「僕たち布系は何も持って無いけど」

「ハンカチくらい持ってなさいよ、全く」


 ここが乙女と男の人との違いなのかもね。

 何かあったっけとリュックの中身を探すが、着替えのパンツくらいしか見つからない。これは無いわ。


「リン、僕たちには町の危機を救うという、とても大きな使命があるんだよ」

「もう町が滅んじゃってもいいんじゃないかな?」


 しかし幻覚ちゃん親子の笑顔が脳裏に浮かんで、渋々パンツを供出する羽目になった。

 石にされた幻覚ちゃんは絶対見たくないもんね。モグラを食べて笑っている姿の方がいい。


 メガネ君が手旗を振る――これはコカトリスが後ろを向いている合図だ。

 さあ、いよいよ作戦開始だ!


 私は素早く近くの岩に移った、因みにフィギュアちゃんは私の胸元に入れたままである。リンと一緒がいいと可愛い事を言ってくれたのだ。

 次の手旗信号を待つ。


 サッサッササッ――

 ――コカトリスが後ろを向いた――

 今だ! 更に別の岩に進む。


 私のハンカチとパンツが複雑な動きをする度に私は動く。


 よく考えたらメガネ君たちのパンツでも良かったんじゃないだろうか?

 いやしかし、彼らのパンツの指示に従うのを私の身体が拒否反応を示すかもしれない。


 さあこい、次のパンツ信号!


 サッサッササッ――

 ――リンさんの左の奥歯も虫歯に――


 そんな情報はいらないわよ!

 何であんな距離から虫歯が見えるのよ、ズームか、ズーム機能付きか!


 初等治癒魔法で虫歯を治しつつ、コカトリスが後ろを向いたという新たな情報で更に進んでいく。


 岩の陰に入った所で大きな石に躓いて転んでしまった。

 弾みでポーンと岩の外に飛んでいくフィギュアちゃん。


 うわあああフィギュアちゃん死んだあああああ。


「あれ? あの鳥に見られたけど、私石にならないね?」


 岩の向こうからフィギュアちゃんの呑気な声が聞こえてきた。


 そうか、フィギュアちゃんは厳密には生物ではないから、コカトリスの石化のスキルが発動しないんだ。これはいい事に気がついた。

 と思ったら、コカトリスがフィギュアちゃんの所までやって来ちゃった。


 フィギュアちゃん絶体絶命である。

 ついでに私も絶対絶命だ。コカトリスがちょっと首を伸ばして岩の横に顔でも出そうものなら、私は視界に入るのだ。


 モンスターはどうやらフィギュアちゃんを咥えて巣に戻ったようだ。


「えーそれくれるの? でも不味そうだから食べたくなーい。いらなーい」


 あー、どうやらヒナと間違えられてるなありゃ。

 これは好都合なので作戦変更だ、メガネ君からフィギュアちゃんに玉子を奪取する信号を送ってもらおう。


 私がメガネ君にサインを送ると、早速彼から手旗による返答が来た。


 ――私の靴下に穴が開いている事をリンさんはお見通しだったとは――


 知らねーわよ!

 そんな事言ってないし、どうでもいい情報ぉ!


「リンわかった、玉子を盗めばいいんだね」


 何故かフィギュアちゃんには伝わった! 世の中の不思議発見!


「これ私が割った方が早いんじゃないかな? えい! たー! いったーい固くて壊せないから、持って逃げるよ。わー」


 コロコロコロコロ。


 持って逃げると言ったフィギュアちゃんは、音から察するに恐らく玉子と一緒に転がっているのだろう。なんてマヌケで可愛い音なんだろうか。

 玉子といっても、フィギュアちゃんくらいの大きさはあったんじゃないかな。


『コカアアアアアアアー!』


 飛びやがったよ! コカトリス飛びやがったよ!

 大事な玉子とヒナ(フィギュアちゃん)が巣の外に転がれば、そりゃコカトリスも飛んで追いかけるよね。


 バッサバッサという風圧がこちらにも飛んできた。


 あらやだ、風で髪型が乱れてしまったわね。これは乙女としては見逃すわけにはいかない。

 手鏡とブラシを出して整えなければ、女の子はどんな時でも身だしなみが大切なのだ。エチケットである。


 ああ! 風圧で手鏡が!

 と同時に『ズッドオオオオオオオオオン』という地響きがしたと思ったら、私の真横にコカトリス(石)が落ちていた。


 腰が抜けた。


「すごいよリン! コカトリスを退治するなんて、さすが僕たちのリンだね!」

「ほえー?」


 いえ、私乱れた髪を直すついでに鼻毛チェックもしようと思っていただけですけど。

 腰が抜けて鼻水を垂らした私には、モブ男君が何を言っているのかサッパリである。


「飛んできた鏡に映った自分を敵と認識して、コカトリスの石化スキルが発動。それが鏡で反射して自分が石になったんだね」


 そんなマヌケなモンスターがいてたまるか――!

 鏡を使う方法で退治できるのなら、もうとっくにあちこちで討伐されてるんじゃないかな!


「他の冒険者に出来ない事を実際に可能にしてしまうのが、リンの凄さなんだよ」


 まあどうでもいいや、そんな事より考えるべきは今夜の玉子料理よね。

 私のお腹は玉子になっているのだ、細かい事はもうなんでもいい。


「それよりもフィギュアちゃんを助けないと」

「そうだ、フィギュアちゃん!」


 玉子と一緒に転がったフィギュアちゃんは、岩山の中腹で目玉がぐるぐるで発見された。遭難事故は無事救助解決である。

 さて玉子料理だ――!


「任務完了だね、早速報告に町のギルドに戻ろうか」


 不要になったコカトリスの玉子は貰えないのかな。


 どんな味だろう、ちょっと楽しみ。


 次回 「王子が宿屋にカチコミに来た!」


 リン、また腰が抜ける

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